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速水優日銀総裁(77)の任期もあと半年。永田町では早くも、後継選びで経済評論家の田中直毅氏(56)、前日銀副総裁の福井俊彦・富士通総研理事長(66)、東京三菱銀行の三木繁光頭取(67)の名が浮上する。道路公団民営化問題で作家の猪瀬直樹氏を登用した途端の支持率アップ、日本郵政公社初代総裁にも商船三井の生田正治会長の起用を決めた小泉純一郎首相が民間人起用に味を占め、「田中氏が一歩リード」とも。デフレ脱却の処方せんが描けないなか、民間人、日銀OB、メガバンクのトップという三つ巴(どもえ)の行方は…。
速水氏は、日銀幹部の接待汚職事件で引責辞任した松下康雄前総裁の後任として、橋本龍太郎政権下の平成10年3月に就任した。日銀法では「総裁の任期は5年」と規定されており、速水氏の任期は来年3月19日までとなっている。
同じ人物が2度、日銀総裁に就任した例が過去2回あるが、いずれもいったん身を引いた後のカムバック。続けて総裁をやるのは「大蔵(現財務)OBと日銀OBが『たすきがけ方式』で日銀総裁に就くという慣例があり、事実上不可能」(日銀関係者)という。
そもそも速水氏は12年8月に政府・与党などの反対を押し切ってゼロ金利解除を強行し、景気を低迷させた「A級戦犯」とみられている。
「77歳と高齢だし、任期をまっとうしようとはせず早くやめてほしい、というのが政府・与党の共通認識のようだ」(永田町政調担当者)
その任期も気がつけばあと半年余り。永田町ではまたぞろ、ポスト速水がささやかれ始めた。
名前が取りざたされる3人のうち、「本命」と目されているのは経済評論家の田中氏である。
東大法学部を卒業後、経済シンクタンクの主任研究員を経て、経済評論家に転身。経団連(現日本経団連)が平成9年に設立した政策研究提言機関「二十一世紀政策研究所」の理事長も務めている。
政治とのかかわりも深い。同年以降、政府税制調査会や行革委員会の委員のほか、小泉内閣の私的諮問機関「郵政の在り方について考える懇談会」の座長でもある。
「小泉純一郎首相にとって郵政民営化は最重要テーマのひとつ。田中氏に対する信頼がいかに大きいかを、如実に示している」(与党議員)
実は、田中氏の名前が日銀総裁候補として取りざたされるのは、今回が初めてではない。
「昨年4月、森政権から小泉政権にかわった節目に、政府・与党と対立関係にあった速水氏の進退問題が浮上し、一部新聞が『速水総裁が辞意』と大々的に報じた。その際にも、ポスト速水として田中氏の名前が挙がった」(同)という。
ゼロ金利解除で政財界のひんしゅくを買った速水氏。対照的に政財界に通じる田中氏は、総裁候補の最右翼とみられるが、ここにきて「追い風」が吹いているという。
「小泉政権の支持率は田中真紀子前外相の更迭ショックもあって下がる一方だったが、猪瀬氏を道路関係4公団民営化推進委員会の委員に抜擢した途端、上昇に転じた。民間人登用に味をしめ、首相サイドは猪瀬、田中両氏の『ダブル・ナオキ』による支持率アップ効果も期待している」(都市銀の財務省担当者)
経済音痴の首相サイドが考えそうな話だが、閉塞(へいそく)感が漂うニッポン経済だけに、「最後の十年 日本経済の構想」「構造改革とは何か」といった著書もある田中氏の手腕に期待する向きも多い。
一方、日銀OBの福井氏も「総裁候補」の常連組だ。昭和33年に東大法学部を卒業後、日銀に入行。営業局長などをへて、平成元年に理事、6年から副総裁を務めたが、10年に接待汚職事件で引責辞任した。
退任後は、「日銀のシステムを請け負う富士通関連の富士通総研に理事長として迎えられ、富士通の社外取締役も務めている」(日銀関係者)といい、けっこうな天下り生活を送っているという。
ただ、日銀総裁は大蔵OBと日銀OBによる『たすきがけ』が慣例。接待汚職事件で引責辞任した松下元総裁が大蔵OB、続く速水総裁が日銀OBとなっており、次は大蔵OBの番になる。
「霞が関の論理からいえば、日銀OBの福井氏には、大蔵(財務)省を中心に相当な抵抗が予想される」(永田町政調担当者)と、こちらはかなりの「逆風」が吹き荒れそうな気配である。
メガバンクの雄・東京三菱銀行の三木頭取については、「確かに永田町で名前が取りざたされてはいるが、超万馬券的な存在」(与党議員)。
福井氏と同じ昭和33年に東大法卒後、三菱銀行(現東京三菱銀行)に入行。法人第二部長などを経て、平成12年から頭取。13年からは持ち株会社の三菱東京フィナンシャルグループの社長も兼務している。
三菱銀と日銀総裁とは縁がないわけではない。民間人で戦後初の日銀総裁となった宇佐美洵(まこと)氏は、元三菱銀頭取。ただ、昭和39年から44年までと30年以上も前のこと。
超万馬券的とはいえ、「三菱グループとしっくりいかないみずほグループが戦々恐々としているのでは」(金融庁関係者)との観測も流れる。
田中、福井、三木の3氏以外にも、永田町では超万馬券的な候補として、小泉政権の経済ブレーン的な前経団連会長の今井敬氏や、元大蔵省財務官で旧東京銀行の会長も務めた行天豊雄氏の名前も浮上している。
日銀総裁は、両議院の同意を得たうえで内閣が任命する。与党内の敵に対し、独走気味の小泉政権だけに、ポスト速水は田中氏を有力候補としつつも、まだ紆余(うよ)曲折が予想される。