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8.14以降米国市場は変化した。イラク戦開戦すればNY6000ドルしかし年内は・・等 投稿者 Ddog 日時 2002 年 8 月 27 日 08:56:01:

<東短リサーチ>橘田リポート8月14日以降の米株式市場は…
内外政治経済・短期金融市場の動向 橘田週間リポート 8月26日号

●8月14日以降の米株式市場は、悪い景気指標より明るい景気指標に好反応を示すよう
になった。会計不信問題をクリアーして、米株式とドル相場は流れが変わってきた●

 米証券取引委員会(SEC)は20日、大企業942 社に求めていた決算の正確性を保証
する宣誓書について、「今月14日が提出期限だった695 社の集計作業を完了した」と発
表した。この結果、宣誓できなかったのは破綻したエンロン、ワールドコムなどの6社
と、SECから不十分な宣誓と指摘された10社の合計16社にとどまった。SECは、会
計不信問題が世界的に株式市場の低下要因となったのを受けて、市場に上場している大
企業942 社の最高経営責任者と最高財務責任者に対して、直近の年次決算と四半期決算
の正確性を保証する宣誓を求めていた。942 社のうち、その7割近い695 社が6月末に
四半期決算期を迎えていたため、8月14日が宣誓期限となっていた。残る247 社は今後
提出期限を順次迎えることになるが、企業によっては11月が提出期限になるところもあ
る。これによってSECへの宣誓書の集計は一応完了となったわけである。破綻してい
た6社は別として、SECから不十分と指摘された企業は10社のみにとどまり、当初市
場で予測されていた件数をはるかに下回るものとなった。まだ247 社の宣誓書の提出が
残ってはいるが大方の企業は正確性を宣誓したことになり、長い間米株式市場の下落の
大きな要因となっていた重しは取り除かれたようだ。これにより、8月中旬以降株式市
場は徐々に上昇している。会計不信問題は一応クリアーしたとの見方が広がってきてお
り、機関投資家から個人へと徐々に株式への安心感が回復して、株式投資に前向きの姿
勢が強まり始めている。7月の安値からすでに20%近く上昇してきた。8月21日、22日
と大幅に上昇している。

 ところで、このところ原油価格が上昇を続けている。先週のNY・マーカンタイル取
引所の原油先物相場は10日間続騰し、WTI期近9月物終値ベースでは昨年2月以来1
年半ぶりに30ドル台に乗せた。原油価格は年初からすでに10ドル強上昇している。バブ
ル崩壊による連鎖的な株安で世界経済はすでに相当痛んでいる上に、原油価格上昇は石
油消費国にとって新たな懸念要因になることは間違いないであろう。原油価格が上昇し
ている背景には、米国の原油在庫が減少していることや、イラクの石油輸出の停止予想
とか、9月中旬大阪で開催されるOPEC閣僚会議で原油生産枠の維持を決めるなどの
見方が広がっていることが要因としてあるようだ。原油価格上昇は、米国ではコスト高
に苦しむ企業の業績を一段と圧迫するほか、株安によって逆資産効果が懸念される家計
の消費をさらに弱めることが予想される。特に、原油高は家計に大きな負担を強めるこ
とになる。すでに、家計は株安で401 K年金が逆資産効果に見舞われている上に、原油
高によってガソリン値上がりなどの影響を受ける。家計の消費に占めるエネルギー関連
消費は、米国では平均5%程度になると言われている。米国の家庭では、日本と違って
乗用車を中心に車の所有台数は平均3〜4台程度となっているので、ガソリンの値上が
りは家計に大きな影響を与えるし、またこれから冬を迎えるので、原油が年初から10ド
ル強上昇している影響は冬場の家計費に大きな負担となってくる。本来、原油の値上が
りはインフレにつながると言われていたが、現在のデフレ的要素の強い経済ではむしろ
景気下振れにつながる可能性が強いとみられる。原油高がこのまま続けば、企業業績や
個人消費に大きな圧迫要因になることは避けられないであろう。

 原油価格が30ドル台に突入した20日のNY株式市場では、ダウ平均株価は原油高には
あまり反応しなかった。また、20日には7月の財政収支が291 億ドル強の赤字となり、2
002会計年度の7月までの累計財政収支は1,471 億9,000 万ドルの赤字(昨年同期までは
1,717 億ドルの黒字)になったと発表されたが、2002会計年度はすでに1,650 億ドルの
財政赤字になる見通しを公表しているので、ほぼ予想の範囲内として株式市場では特に
反応をみせなかった。米国経済について、オニール財務長官に次いで常に強気派として
知られるハバード米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長は、20日記者会見で次のよ
うに語った。まず、米経済の現状について、「米経済の現状は、過去の景気後退(リセ
ッション)と異なり設備投資が落ち込んでいる。それは、新技術に伴う利益率や生産性
向上に過度な期待をかけ過ぎたものである。従って、情報通信などのハイテク分野では
設備は過剰になっているが、その他の分野での設備過剰はほぼ解消されている」と強調
して、年末にかけての投資回復に自信をみせた。FRBがバイアスを「景気配慮型」に
変更したことについては、「FRBも政府も設備投資の先行きがリスキーであるとみる
点には大きな食い違いはない」と述べた。また、バブル化が指摘されている住宅関連市
場については、「一部にはその徴候なしとはいえないが、全国的にみれば住宅価格は実
態からかけ離れているとはいえない」と語った。さらに、米国がイラクに攻撃を加えた
場合の経済への波及については、「米国はいかなる場合でも石油価格には自信がある。
しかし、湾岸戦争の教訓では、石油価格上昇は世界経済にとって増税のようなものであ
り、その影響は一時的に終わるであろう」。また、米経済について一部には二番底をつ
くる可能性があるとの見方があるが、「二番底を形成する可能性はない」と否定して、
今回も米国経済に強気のコメントを発している。

ところで、このところ米国のイラク攻撃が近いであろうとの見方が強まっている。イ
ラク攻撃については、米政府の内部でも肯定派と否定派が存在して100 %合意となって
いないようだ。アフガニスタン攻撃では賛成した自由主義国家とかイスラムの親米国家
にも今回は反対が多く、米国はアフガン戦のように世界を賛成派につけてイラク攻撃が
出来る状況ではない。イラク攻撃肯定派の急先鋒といわれるラムズフェルド米国務長官
は、イラクが核兵器や生物・化学兵器を製造し、その上にアルカイダの拠点になってい
ると指摘している。しかし、イラク攻撃には中東産油国のサウジアラビアを始めとする
パレスチナ国家がすべて反対しており、最近は米国の兄弟国であるカナダも「イラクが
核兵器とか、生物兵器を製造していることを立証する確固たる証拠が示されない限り、
米軍のイラク攻撃に参加しない」と表明している。ドイツ、フランスも同様の発言をし
ており、年内米国がイラクを攻撃する可能性は低くなっている。来年1〜2月のイラク
攻撃の可能性はまだ残されている。もしイラク戦が実施されたら、石油価格は一時的に3
5ドル程度には上昇しようし、ドルは対日本円で110 円程度まで売られよう。また、米国
の株価はNYダウ平均で6,000 ドル台後半、ナスダックで1,100 ポイント割れ、日経平
均株価は8,000 円台半ばまで低下しよう。

 さて、21日のNYダウ平均株価は、3人の米連銀総裁が米国の公定歩合とFF金利の
先行き引き下げを否定したものの、米国の景気は緩やかではあるが着実に回復に向かっ
ていると発言したことから、これを市場が好感して85.16 ドル上昇の8,957 ドル23セン
トになり、ナスダック総合指数も32.66 ポイント上昇して1,409.25ポイントと、1,400
ポイント台を回復した。当レポートの8月19日号では、米国の株式市場は最悪の局面は
脱し、7月23日につけた直近安値である7,702 ドル34セントが大底になるのではないか
と指摘したが、どうやらその様な方向になってきたようである。米国株式のSアンドP5
00 種株価指数でみると、7月23日につけた直近安値から21日までの上昇率は約20%近く
まで達しており、この上昇は誰もが予想していなかった動きである。心配された貿易収
支についても市場の予測を下回るものとなるなど、徐々に米国景気は回復の動きがでて
きている。それに、9月頃までに発表される景気指標は7月の株安をまともに受けた経
済下のものであるだけに、この間に発表される指標があまり悪いものでなければ10月以
降の景気回復はしっかりしたものになりそうである。22日には、NYダウ平均株価は9,0
00 ドル台を回復した。米国株式は決算宣誓書の提出期限だった8月14日を無事に通過し
たことから買い安心感が広がり、流れは一気に変わってきたようである。14日以前にも
、株式市場では悪い景気指標がでてきても「それは過去の結果であり、これからは前向
きに経済をとらえていかなければならない」とのムードが高まって、市場は悪い材料に
あまり反応しなくなっていた。これからは良い指標を前向きに取り入れていくという投
資家の動きが、21日と22日の株式上昇につながったといえよう。株式が上昇してくれば
、ドル相場は上昇して9月の円相場は120 円から125 円内レンジに入っていこう。ブッ
シュ大統領は、本格的に米株式を回復させるため証券税制改革などのデフレ対応策を9月
にも打ち出す予定である。ドルを売った思惑的投機家のドル買い戻しで、9月には意外
なドル高局面が到来しよう。

●世界経済は東西の冷戦終結時すでにデフレ主義と消費縮小主義時代に突入していた。
それが今回のバブル崩壊による株安によって表面化した。日本のデフレは長期化する。
短期間で対応した米株式の戻りは速い●

 皆様方は「100、99、88、59、50」この5つの数字が何を表わしているかお分かりでし
ょうか。日本は第二次大戦で米国との戦争に破れて今年で57年目を迎えたが、昔の記憶
は次第に薄れてきている。敗戦当時の日本の生活はとても口では言い尽くせない大変惨
めなものであり、私は子供心にも「もうこの世は終わりかな」と感じたものである。ア
フガニスタンの子供の姿をテレビで見るにつけ、あの当時のことが思い出される。こう
した惨めな状態から日本経済を救ったのは「仄かな希望」を求めて働いた日本人の勤勉
さであったことは申すまでもないが、その勤勉さを引き出してくれたのが米国の政府と
民間団体の経済的支援であったといえよう。終戦後の世界は、民族解放と社会主義思想
がソ連を中心とする共産主義の台頭につながっていった。そこで米国は日本、独、イタ
リアなどの旧敵国を共産主義から守るために「これらの国が輸出国となって、米国自ら
が輸入大国となる」インフレ主義の経済政策を採用した。加えて、これらの国々に米政
府と民間団体が無償援助を実施してくれたことなどもあって、短期間で経済は回復した
。特に、日本は世界の生産工場(現在の中国と同じ)として輸出国家の地位を確立し、
世界第二位の経済大国へと発展した。経済大国への道を歩んだ日本は80年代後半、土地
神話を背景としたバブル経済を醸成し、土地の値上がりを中心にすべての物価が大幅に
上昇した。しかし、90年代初めにはそのバブルも崩壊し、2000年代に入ってもその後遺
症に悩まされている。この間に世界経済は東西冷戦が終結し、共産主義国家のソ連邦は
崩壊、米国は共産主義と対決した経済政策を止めた。この結果、社会主義国の資本主義
経済への参入が加速したために世界の経済構造が大きく変化した。米国は、共産主義と
の対決を終結させた時点で消費大国主義とインフレ主義を放棄した。その時点で、米国
経済の根底にはデフレ経済と貯蓄大国主義という双子の同居が始まったといえよう。そ
の同居の姿が、経済の崩壊と同時に今回表面化してきたといえる。12億人の超低賃金労
働力を有する中国経済の参入は、世界経済に大きな構造改革をもたらした。約10年前、
IT改革からバブル経済を醸成した米国経済も、2年前にバブルが崩壊した。米国経済
に「おんぶに抱っこ」の世界経済は、みるみるうちにデフレ経済へと陥った。現状、世
界経済は中国からの安い商品が流入することで物価が下落を続け、景気が後退するとい
うデフレスパイラル化の様相を呈している。


インフレとデフレの違いを簡単に定義づけると、物価が上がり続けることがインフレ
であり、物価が下がるのがデフレである。日本経済は、すでに消費者物価が3年間近く
下落を続けるデフレという異常な経済状態にある。物価が2年以上にわたって下落する
のは戦後初めてである。70年代の石油ショック時のインフレを除けば、日本ではほぼ一
貫して緩やかな物価上昇が続いてきた。日本経済のデフレ経験は、戦前の昭和恐慌時代
までさかのぼる。最近、家庭内の会話では「牛丼やハンバーガーも値下げになり、冷凍
食品や衣類も安くなり、電話料金も安くなってきて家計は助かるよ」という言葉を耳に
する。しかし、こうした会話の裏に、物価下落によるデフレ現象が経済を蝕んでいる事
実があることを考えると喜んでばかりいられない。景気が後退する中で物価が下落する
ことは、企業の売り上げを抑えることになる。従って、企業は賃金をカットし、人員整
理をして収益のカバーを進めることから、経済全体からみると経済規模が縮小していく
という悪循環を招いてしまうからである。現在の日本経済はまさにこうした中にあると
言える。

 デフレを日本経済にもたらした原因は複数考えられる。その中で3点ばかりにその原
因を絞ることができる。第一点は資産価値の目減りであるが、現在の米国のバブル崩壊
でも逆資産効果が表れているように、これはどんなデフレの形にとっても基本的な要因
として挙げることができる。そして、これから挙げる第二点と第三点が日本にデフレを
もたらした大きな原因であると言えるのではないか。その第二点とは、低価格商品の輸
入増加である。社会主義国家ではあるが資本主義経済に参入、最近はWTOにも加入し
て関税率も資本主義国家並み水準で輸出入でき、しかもコストの安い労働力を豊富に持
つ世界の生産工場が日本にとって替わって出現した。それが中国である。ここで生産さ
れる商品は、人件費が日本の約20分の1で済む。日本では生産コストの安い輸入品の急
増で、衣料品は最近2年間で5%強も低下した。また、中国での付加価値の高いハイテ
ク製品生産は世界の生産量の5割を超える動きとなってきていることから、これら商品
価格も急落している。中国のハイテク製品価格にはどこの国々も太刀打ちできない。バ
ブル崩壊後の米国経済の回復が弱く、ハイテク関連設備が過剰となってハイテク株式が
低迷しているのも、中国の安い製品流入によるデフレ現象の表れである。中国の輸出拡
大と景気拡大は、世界にデフレを輸出している証拠であると言っても過言ではない。ま
さに世界経済はデフレ時代に突入したといえよう。この結果、日本を始めとする世界各
国は、生産コストの高い自国での生産を止めて工場を中国に移転する、いわゆる国内産
業の空洞化現象が進んでいる。第三点のデフレをもたらしている原因として、需要の弱
さを挙げることができる。中国から安いコストの商品が流入すると、消費者は国内で生
産されるコストの高い商品を買わなくなる。これに対し、国内企業は商品の価格を引き
下げてこれに対応している。一時100 円ショップの出現で驚かされたが、最近は耳慣れ
して安さにはあまり反応しなくなった。その後は99円均一ショップ、88円均一、さらに
は最近50円均一などの安値市場が出現している。しかも驚くのは、そこで売られる商品
の品質が、百貨店で売られている商品と遜色がないということである。外食チェーン最
大手の日本マクドナルドは、一端値上げしたハンバーガーの価格を、売れ行き不振とな
ったために59円に再値下げした。これをみて、牛丼チェーンなども対抗して第二波の値
下げに踏み切る可能性が強まっている。日本の外食産業は、2008年の中国でのオリンピ
ック開催を控えて、将来中国が米国にとって替わって「食での消費大国」になるとみて
進出する動きを強めている。本日のレポートの中で、100 から50の謎めいた数字を挙げ
たが、これはまさに日本がデフレスパイラルに陥っていく様子を物語っているといえよ
う。今年の春頃には、米国の景気急回復からデフレ的な動きは止まって物価は若干上昇
していくかにみえた。しかし、米国景気が株安によって再び落ち込み始めると、日本で
は先行きの景気回復に悲観論が強まってきている。日本経済は、マクドナルドのハンバ
ーガー価格が示すように、経済体力はバブル崩壊から10年経った今日でもいまだ癒えて
おらず、すぐに食傷気味になってしまう状態にある。

 今回の世界経済のデフレ様相は、東西冷戦が終結して米国がインフレ主義と消費大国
主義を放棄した時点で根底に芽生え始めていた。7月の米株安は、米国は勿論のこと、
世界経済の根底にあったデフレ経済が本格的に表面化してきたものといえよう。米国の
バブル崩壊は、米政府とFRBのスピーディなバブル対応策によってデフレの峠は超え
、年末までには景気に回復感がでてきそうだ。それに引き替え、日本ではデフレの峠は
見えてこない。このことをはっきり示しているのが、最近における米国株式の戻りの速
さである。7月23日の最近の安値から米ダウ平均株価は20%強上昇となっている一方で
、日経平均株価は10%弱の戻りしかない。日本のデフレ時代はまだまだ続きそうである
。そして、日本のデフレはまだ進展するだろうとの動きを示しているのが、冒頭に挙げ
た数字の謎解きである。米国経済は年末に向けて回復しそうであるが、その回復の強さ
は、インフレ時代とか、大量消費大国時代のようにはならない。あくまでもデフレ時代
の中での景気回復だからである。インフレ時代のような気持ちで米国景気回復に投資す
ることは危険である。(終)

(東短リサーチ 特別顧問 橘田昭次 記 )

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