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(回答先: Re: ミクロ(企業)はマクロ(国民経済)及び世界経済を乗り越えられない>あっしらさんへ 投稿者 hou 日時 2002 年 9 月 13 日 20:59:05)
houさん、こんばんわ。
>あっしらさんのご投稿の中で、繰り返しでてくる主張は
>わたしが思うところ、所得水準をあげる(現段階での供給サイドの押し上げ)という
>主張のように聞こえます。間違ってたらすいません。
そうです。
財の供給量を伴わない供給の増加と貿易収支の黒字維持が主張のベースです。
>しかし、いまの経済状況は、需要が不足しているというのが
>マクロの大きな要因ではないでしょうか?
資本主義経済では、厖大な金融資産を抱えている人もいますから、基本的に需要が不足します。(なんと言っても、利潤を得ることが経済活動の目的と言われるくらいですから...)
近代以前から厖大な金融資産を抱えていたのなら問題になりませんが、近代のなかで金融資産を蓄積してきたのなら、それは、供給活動を通じて得たものです。
供給活動を通じて得た通貨を使わなければ、その分が供給に対する需要の減少につながります。
供給活動で100兆円を支払ったのに需要が90兆円しかなければ、企業が赤字になるのは当然です。
供給活動を得て金融資産を増加させる人たちがいても、ある時期まで需要が不足しなかった要因は二つだけです。
● 政府部門が国債を発行して赤字財政支出を行って需要不足を補った
● 貿易収支が黒字という条件で、財の輸出により国内に供給する財の量を減らし、需給バランスを改善した
財を輸出すれば、供給−通貨退蔵=需要であっても、需要不足を補うことができます。
財を輸出して供給=需要であれば、国内で全ての供給費用が賄われるので、輸出した財の代金はまるまる利潤になります。
ご存じのように、米国を除けば、財政赤字を拡大してまで需要不足を補える財政状況にある先進国はありません。
(米国とて、6兆ドルを超える公的債務がありますから、財政赤字を拡大し続けることはできないと思われます)
現状の先進国で供給>需要というデフレギャップを解消するためには、貿易収支を黒字を維持し、黒字分を供給の増加に充当することしかないと考えています。
>わたしの考えではというよりケインズですけど、マネーサプライも上げ、利子率の低
>下もおこなっているにもかかわらず
>需要が発生しないのは、需要の外生的なところに問題があると思うのです。
>それが、公的金融機関による民圧
>法律による産業保護(規制)
>民間金融機関のリスクテイク能力の低下
>直接金融に対する締め付け
● 「公的金融機関による民圧」
貸し出し業務を政策的なかたちで行っている公的金融機関もありますが、それは、民間金融機関が行えない融資にほぼ限定されています。
住宅金融公庫の貸し出しは、今でこそ“民圧”と言われていますが、長期に渡って、民間金融機関の住宅ローンの呼び水の役割を果たした民間金融活動の友軍だったと言えるものです。
(住宅金融公庫で貸し出しを受けられるから、現在の頭金で、民間金融機関からの貸し出しを受けられるという話です)
住宅金融公庫の貸し出し業務を止めてもよいとは思いますが、そういう性格であったことはきちんと踏まえるべきだと思っています。
預金については、銀行も預金を持て余しているくらいですから、郵便局が民圧ということはないでしょう。
● 法律による産業保護(規制)
これが参入規制を意味しているのかどうかわかりませんが、参入規制をなくせば、供給=需要が増加したり、貸し出しが増加することは認めています。
しかし、供給不足ではない業種への新規参入は、新旧の企業に価格競争を強いるものですから利益や給与の低下を招き、優れた企業が勝ち残ることになります。
そのような推移を見ている人がその業種に再び挑むことはまれだと思われます。
これについては、80年代米国で行われた航空規制緩和の経緯を顧みればわかります。
タクシーくらいなら新規参入の増加が大きな混乱を招くとは思っていませんが、航空会社という固定資本規模が大きい業種の新規参入とその淘汰は、不良債権の増大という大きな混乱につながります。
その分、新規航空会社を立ち上げさせて、わけもわからない人たちに高値で保有株式を売却する投資銀行などは利益を上げることはできます。
参入規制を緩和しても、長期的な供給=需要の増加は達成できません。
もちろん、新規事業は別の話になります。
● 民間金融機関のリスクテイク能力の低下
経済成長期でも担保主義が原則できたわけですから、デフレ状況下で、リスクを採れというのは無理だと思われます。
● 直接金融に対する締め付け
個人的には、直接金融100%主義者です。
民間銀行がバブル崩壊で厖大な不良債権を抱えるようになった背景には、優良企業が直接金融ができるようになったことで、不動産関連及び株式購入への融資を増加させたことがあります。
しかし、時価増資にしろ転換社債などにしろ、株価が上昇過程にあることは条件になります。
政策的に直接金融を推奨しても、株式市場が上昇基調に転じなければ、直接金融は限定的なものになると考えています。
>このような、デフレのなかでも収益を上げ、売り上げを伸ばしている企業はあります。
>自己資本の強い企業は、需要を創出しています。
>いま政府がやることは、高い収益を誇る企業にどんどん債権を売り、不良債権を叩き
>値で売ることではないでしょうか。
個別企業の努力や才覚は必要ですが、名目GDPが減少している「デフレ不況」では、多数の企業が売上を減少させ、利益を縮小もしくは赤字化させることになります。
高い収益を誇る企業がどんどん債権を買ってくれて、投資を拡大させるのであれば問題ありません。
不良債権を本気で叩き売れば、大半が不動産ですから、地価の下落に拍車をかけ、不良債権をより増加させることになります。(貸し出し残高−担保時価の拡大)
その結果、貸し渋りや貸し剥がしがいっそう増加し、そのために破綻する企業が続出することになります。
企業の破綻は、供給と需要を同時に減少させます。