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逆流イスラムマネー(中)金融商品、教義を尊重――手付かずの市場に注目。
「聖職者が足りない」――。中東に拠点を持つ金融機関が思いもかけない悩みに直面している。
不足する法学者
利子収入を得ることを禁じた聖典コーランの教えに従い、信心深い教徒の注目を集めるイスラム金融商品。市場規模が二千億ドルを超えたとの試算もあり、金融機関が商品開発や投資先の選定などで顧問として迎えるイスラム法学者の不足が目立ち始めたのだ。
顧問になるのはエジプトのスンニ派教義の最高権威とされるアズハル大学出身者などに限られる。イスラム金融商品に新規参入する金融機関は関連する会社から紹介を受けるケースが多く、顧問役を掛け持ちする聖職者が多い。最新の金融事情についての知識を持つ聖職者となると、ほんの一握りだ。
専門の部署新設
イスラム金融商品では、資金を預けた顧客は固定利子を受け取る代わりに、「投資配分」という形で利子に相当する金額を受け取る。運用面でも、ご法度のアルコール飲料や豚肉の生産、カジノなどを手がける企業への投資を避ける。
米同時テロ後、欧米でイスラム教徒への差別や嫌がらせが広がったが、信仰意識はかえって強まったとの見方がある。欧米型の通常の金融商品と受け取る「運用益」が同じなら、敬謙な教徒がイスラム式の金融商品に資金を移すのも不思議ではない。
当初は単なる銀行預金が中心だったが、商品開発が進み、市場のすそ野が広がり始めた。たとえばHSBCグループなどは、中東でも急速に普及するデビットカードにイスラム金融の仕組みを取り入れた。利用者が商品購入時に代金を引き落とす預金口座は利子が支払われない建前だ。
シティバンクはこのほど、バーレーンにイスラム金融部門を新設した。資産・負債管理も他部門から完全に切り離された独立部門だ。プロジェクトファイナンスや企業向けの大型融資でもイスラム金融の仕組みを取り入れる動きが広がっている。
イスラム法に反するとの見解もあった保険商品についても、各企業が金融技術を駆使することで教えに反しない商品の開発に動いている。サウジアラビアでは政府も自動車保険や医療保険の必要性を認めつつあり、ルールづくりに着手したもようだ。イスラム教徒の人口は世界で十億人を超しており、保険市場はほぼ手付かずの市場として注目されている。
政府も後押し
政府の後押しも活発だ。バーレーン、マレーシア、ブルネイ、インドネシアなどは将来の発展をにらんだ「国際イスラム金融市場(IIFM)」設立で合意。本部をバーレーンの首都マナマに置くことも決まっている。
バーレーンは今年、リスク管理などイスラム金融を対象としたルールづくりに着手した。複雑な仕組みを持つイスラム金融の取引を、現行の欧米法を使って管理するのは無理があると判断したためだ。中東でも、あくまで管理は現行の欧米の銀行関連法規を適用するべきだとの主張もあり、議論は決着していないが、二年後の正式導入を目指している。
米市場から中東へのイスラムマネー回帰には、受け皿として身近なイスラム金融商品の急速な充実、普及も背景にある。
(バーレーン=岐部秀光)
日経金融新聞
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