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ロシアの民間銀、“イメチェン”作戦――「国民に信頼されたい」とPRに熱。
【日経金融新聞】
健全化へリテール強化
ロシアの大手民間銀行が法人顧客への一辺倒からリテール(小口取引)重視に営業戦略を転換し始めた。個人の顧客から安定した資金を獲得して経営を健全化する狙い。だが「銀行は信用できない」との社会通念が根強いロシアで、預金獲得は至難の業。各行とも「まずはイメージアップが大切」と、あの手この手のPR作戦を展開している。
欧米スター公演企画
エルトン・ジョン、ブライアン・アダムス、エリック・クラプトン――欧米の著名なロックスターが昨年末までに相次ぎ、モスクワなど大都市で大規模なコンサートを開いた。仕掛けたのは民間最大手、アルファ銀行。街中に銀行名の入ったコンサート開催を知らせる巨大ポスターを張り、大々的に宣伝した。
この企画を担当したA・ガフィン副社長は「雑誌や新聞へも広告を出しているが、コンサートや文化活動を後援することで、市民が抱くアルファ銀行への印象は一段と良くなるはず」と期待する。
同行では顧客に親しみを持ってもらえるよう店舗デザインを一新し、三千万ドル以上の機械投資を実施して大量の顧客情報を一元管理する体制も整えた。こうした一連のリテール強化策の結果、昨年末の個人預金の残高は三年前の十七倍に当たる四億九千四百万ドルに急増した。
サービス意識なし
ソ連崩壊後の混乱の中で生まれたロシアの銀行は、欧米諸国の基準とはかけ離れたゆがんだ金融機関となっていた。不正な海外送金に励み、証券投資に血眼になる銀行、企業が自社の金融取引を専門にやらせるため設立した通称「ポケット銀行」……。労働実績にかかわらず一定の所得水準が保障されたソ連時代の悪弊で、行員には顧客サービスの意識がなかった。
しかも、民間銀行が経営悪化で預金の払い戻し不能に陥る事件もたびたび起きていた。国民はこうした民間銀行を信用せず、「預金はタンスか国営貯蓄銀行(ズベルバンク)へ」が合言葉となった。その結果、総額五千億ルーブル(二兆千五百億円)以上とされる個人預金の約八割が、国の預金保護を唯一受けられる国営貯蓄銀行に集中した。
金融危機受け改心
民間銀行を“改心”させたのは、一九九八年夏の金融危機発生だ。証券や為替の投機的な取引で大きな痛手を被った反省から「預貸を柱とする本来の銀行業務にようやく目を向け始めた」(モスクワに拠点を置く外国銀行幹部)。そこで、国民が持つ銀行のイメージを変え、信用の回復に努めることが喫緊の課題となったのだ。
モスクワを中心に約百店舗を持つ大手イムペクス銀行は今年一月、PR担当副社長として、エリツィン前大統領の側近で、大統領選などでのイメージ作りに大きく貢献したL・ピホヤさんを招いた。具体策はこれからだが、同行のY・イサエフ社長は二月五日の会見で、「中間所得層から預金を獲得するため、ピホヤ副社長を中心に宣伝を大幅に強化する」と表明した。
信用回復では、欧米の有名な金融機関から資本を導入することも手っ取り早い武器になる。
昨年秋に世銀グループの国際金融公社(IFC)の出資を受けたプロビジネス銀行は、近く始める新たな広告に「なぜプロビジネス銀行を選ぶのか? 外資を導入した銀行だからだ」との文言を目立つよう入れる。顧客は「欧米の銀行ならだまされないと考える」(ロシアの大手投資顧問の金融アナリスト)からだ。
民間銀行のリテールが広く定着すれば、経済の動脈と言われる金融がロシアで機能を始める基盤になる。それだけに政府も個人預金の獲得を後押しする方針で、国営貯蓄銀行だけでなく民間銀行の預金も保護する「ロシア版預金保険機構」の創設に向けて法整備を急いでいる。