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ITインドの信用失墜――戦争危機でマネー流出
インドに対する市場の評価が厳しくなってきた。二〇〇〇年ごろまでは成長力のあるソフトウエア関連企業のぼっ興で「情報技術(IT)先進国」として脚光を浴びたが、ITバブル崩壊に隣国パキスタンとの関係悪化が加わり投資家の失望を招いている。
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アジアの債券市場でいま、インド政府系で主に中小企業向けに融資をするインダストリアル・ファイナンス・コーポレーション・インディア(IFCI)が注目を集めている。焦点は、日本の投資家も保有しているとみられるこの金融機関発行のユーロドル債一億ドルが八月に無事償還されるかどうかだ。
IFCIは経営基盤の弱い中小向け与信で不良債権が膨らんでいるとみられ、現地からの報道によると今年三月には三十二億ルピー(約七十七億円)の国内債を半分しか償還できなかった。市場ではアジア開発銀行(ADB)が支援に乗り出すとの観測が出ているが、ADBは「非公式に支援要請は来ているが、何も決まっていない」(広報担当官)としている。
IFCI以外でも最近のインドは市場からの厳しい見方が目立つ。投資家の注目を集める最大の武器だったITが買い材料にならなくなっており、ムンバイ市場のセンセックス指数はピークの二〇〇〇年二月(五九三三・五六)から半分近くに下落。決定打となったのが五月十四日に起こったイスラム過激派によるインド北部ジャム・カシミール州のインド軍事施設攻撃だ。
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プライスが消えた――。印パ緊張が本格的な武力衝突に発展するかもしれないとの観測が強まった五月中旬、インド関連の債券に関する買い注文が一斉になくなった。インド政府系のインダストリアル・デベロップメント・バンク・オブ・インディア(IDBI)のドル建て債は償還日まで四カ月ほどしかなかったが、それでも投資家はインドのリスクに敏感に反応した。
ともに核兵器を保有する印パ両国の戦争の危機はとりあえず回避したものの、カシミール地方の帰属問題という「構造問題」解決に向けた糸口は見えない。市場には「海外に住むインド系富裕層が資産を国外に持ち出している」(欧州系投資銀行関係者)との観測もある。
英語を話す豊富なIT技術者を抱えるインドの潜在力は依然として高い。賃金が安く外資系企業のバックオフィスの有力な投資先でもあるが、印パ問題の実体経済への影響は避けられそうにない。
二国間の緊張がピークに達した六月上旬には大半の外国人が国外に一時退去。一カ月近くにわたって外資関連のビジネスはほぼストップした。いまも不要不急の出張入国を手控えている企業が多い。
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日本総合研究所の今井宏副主任研究員はインド経済について、株価や通貨の下落に加えて、中期的に(1)海外企業からの発注減による輸出のスローダウン(2)海外直接投資の減少(3)軍事費の増加による財政の悪化――の三つのルートを通じて成長率が下押しされると指摘する。
アジア危機が発生して以降、アジアのカントリーリスクを巡る話題は東南アジアが独占してきた。スハルト政権が崩壊し国内が争乱状態に陥ったインドネシア、エストラーダ前大統領が退陣に追い込まれアロヨ政権が誕生するまでのフィリピン――。こうした国の政情が一応の落ち着きを取り戻したいま、インドのリスクが際立つ形になっている。