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正念場の欧州銀行上半期決算点検(2)格差拡大、スイスの2大銀。
CS不振、買収観測
スイスの二大金融グループ、UBSとクレディ・スイス・グループの収益格差が一段と鮮明になってきた。第二・四半期(四―六月期)決算はUBSが小幅の減益にとどめたのに対し、クレディ・スイス(CS)は昨年の十―十二月期以来、再び赤字に転落した。業績悪化で株価が低迷するクレディ・スイスには買収観測までささやかれ始めている。
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「保険事業は歴史的にみれば収益性があるのは明らか。現在の環境が異常なだけだ」――。八月半ば、決算発表に臨んだクレディ・スイスのルーカス・ミューレマン会長兼最高経営責任者(CEO)は明らかにいら立っていた。会場から「利益の出ない保険事業になぜこだわるのか」「いっそ切り離して売却すべきではないか」といった質問が相次いだからだ。
四―六月期に五億七千九百万スイスフランの最終赤字に陥った最大の理由は、保険部門であるウインタートウル保険が保有する株式に九億三千二百万スイスフランにのぼる評価損が発生したこと。世界的な株安が収益を直撃した格好だ。
もっとも、保険以外の部門も好調なわけではない。預金や貸し付けなどの小口金融部門、プライベート・バンキング部門ともに、一―三月期に比べて二割を超える営業減益になった。
証券部門のCSファースト・ボストンも厳しいかじ取りを迫られている。一―三月期の最終赤字からは脱却したものの、利益水準は前年同期の半分以下にとどまる。これまで進めてきた合理化のスピードも鈍った。人件費は前年同期比では減少したものの、前の期と比べると横ばい。収入の減少を吸収できなかった。
当初、グループの上半期(一―六月)合計では損益トントンに持ち込む計画だったが、ふたをあけると二億スイスフランを超える赤字となり、市場には失望感が広がった。「下期も株式市場の行方は楽観視していない」(証券部門のジョン・マック最高責任者)と、収益回復の原動力になる部門が見当たらない状況だ。
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一方のUBSは厳しい環境の中で善戦した。「マーケットの環境悪化で収益が減った分、コスト削減に厳しく進めた」と会見に臨んだペーター・ウフリCEOはまんざらでもない様子だった。
最終損益は十三億三千百万スイスフランと前年同期比で四%減、前期との対比では二%減にとどめた。金利や手数料など収入は軒並み減少したが、人件費を一〇%圧縮したのが大きかった。
事業部門別では、証券部門のUBSウォーバーグは一―三月期に比べ一五%の営業減益、グローバル・アセット・マネジメント部門が二一%の減益だったものの、UBSペインウェバーの営業赤字は着実に減っている。スイス国内を中心とする銀行業務部門の「UBSスイス」も三%の営業減益にとどめた。
業績格差を反映し、株式市場での二大銀行の評価は一気に開いた。クレディ・スイス株は今年初めの六〇スイスフラン台から一時三〇スイスフランを割り込むまで売られた。二〇〇〇年末までほぼ同水準だったUBSの半分以下だ。
株価の下落でクレディ・スイスに対する合併・買収(M&A)観測まで浮上している。市場では相手としてドイツ銀行やUBSといった具体的な名前までが上がり、そのたびに株価が乱高下している。M&Aが取りざたされる陰には、もうひとつのうわさがある。
「巨額の含み損を抱えているのではないか」――。市場関係者の間でクレディ・スイスのデリバティブ取引失敗説が流れている。「処理せねばならない損失はすべて計上済みだ」と最高財務責任者(CFO)のフィリップ・ライアン氏は一笑に付す。
うわさが根強く取りざたされる背景には、このところクレディ・スイスが相次いでスキャンダルに見舞われたことがある。昨年秋に破たんしたスイスエアーや、幹部による不正が発覚したアルゼンチンの銀行の社外取締役にミューレマン会長が就いていた問題を巡り、同行は批判を浴びた。
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エンロン事件でも、破たんする前に同社株を推奨していたと批判されている。保険部門の多額損失の表面化で、「失敗」の憶測が勢いを増したことは言うまでもない。
ミューレマン氏は来年の株主総会で会長を辞任、CEOに専念するとしている。もっとも下期以降、業績悪化に歯止めがかかられないと、CEO残留も危ぶまれる。これ以上の業績悪化や株価下落は、欧州金融界の再編の引き金になることだけは間違いない。