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◇「個人買い」は底入れの兆しか――「スクランブル」
「ポートフォリオの傷みがどんどん大きくなっていく」。信託銀行の
年金運用担当者は下げ止まらない電機株を見ながらため息をつく。
12日の東京市場では富士通が年初来安値を更新、1993年3月以来の500
円台が視野に入った。6日の安値(4950円)から出直り基調にあったソ
ニーは早くも息切れし、力なく下げ幅を拡大。機関投資家がハイテク株
の組み入れ比率を引き下げる動きが続いている。
それでも投資家は弱気一辺倒でない。「日経平均は2番底である8月安
値(9501円)を大きく割り込むことはないだろう」。大手運用会社のベ
テラン担当者はこう強調する。
個人投資家の現金取引が6、7月と2カ月連続で買い越しになったのが
その根拠。90年1月から2002年7月まで151カ月のうち、月間の投資主体
別売買動向で個人現金が買い越したのはわずか24回。ほとんどが安値を
付ける直前1、2カ月で起きている。
例えば、日経平均がバブル崩壊後の安値(当時、1万2879円)を付け
た98年10月。個人現金は直前の8、9月に2カ月連続の買い越しに転じた
。米同時テロをきっかけに世界的な金融市場の混乱に見舞われた昨年9
月にも、1576億円の買い越しだった。今年6月の買い越し額(2543億円
)は90年以降で最大。今回も「下げの最終局面では個人が現金取引で買
い出動する」という過去の経験則の正しさが実証される可能性はある。
それでも市場には慎重論が根強い。第一勧業アセットマネジメントの
荒野浩常務は「2月と8月の安値でバブル崩壊後の底値を確認した確証は
まだ持てない」と思案顔だ。市場が物色のけん引役となる銘柄群を探し
あぐねているからだという。
カギを握るのは電機株。一般に機関投資家の組み入れ比率が高く、知
名度が高いだけに個人の物色人気の中心になりやすい。
実際、電機株指数と東証株価指数の相対株価の推移(68年1月末=100
)を見ると、株価がいったん上昇に転じれば他の業種を大きく上回るよ
うにみえる。だが、過去の値動きから判断する限り、必ずしもそうとは
言い切れない。
相対株価の大天井は68年10月、84年2月、99年12月の3回。それぞれ「
テレビ」「VTR」「パソコン」という大型ヒット商品の普及が追い風
になった。換言すれば電機株の大相場は15年に1回だけ。しかも、指数
を上回る運用成績をあげる期間は、全体の半分以下にとどまっているの
が実情だ。
見逃せないのは、電機株は大相場を演じた後は例外なく、10年近くに
及ぶ長期低迷局面に陥っていることだ。
68年10月と84年2月に天井を付けた後には、過剰流動性が供給され、
為替は円高・ドル安に触れた。その過程で内需関連株に資金が集中、電
機株は蚊帳の外に置かれた。割安になったからといって「機械的に電機
株の保有比率を市場平均以上に引き上げるのは決して得策でない」(荒
野常務)。
ニッセイアセットマネジメント投資信託運用部の武藤弘明部長は「電
機株が上昇相場のきっかけになることはあっても、主役の座に戻るには
かなりの時間が必要」という。内需関連株への本格的な資金シフトが期
待できない現状で、情報技術(IT)革命をテコにした電機株の大相場
の後遺症が予想以上に尾を引くとしたら、市場のけん引役は見当たらな
くなってしまう。
この日の東証第一部の売買代金は4400億円と半日立ち会いを除けば今
年最低を記録した。夏休み期間中の月曜日という特種事情を割り引いて
も、「投資家心理は急速に冷え込んでいる」(東京三菱証券の白木豊ス
トラテジスト)。個人の現金買いが相場の底入れを示唆する一方で、電
機株には長期低迷の兆候がみえている東京市場。市場を覆う閉そく感は
容易に払しょくできそうもない。(小野学)