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e株リポート
新紙幣発行の本当の狙いは……
2004年4月、2000円札以外の紙幣が新札に切り替えられる。切り口鋭い経済分析で知られる森永卓郎氏は、その本当の狙いは偽造対策などではなく、預金封鎖などとセットになった究極のデフレ対策の可能性があるという(『週刊エコノミスト』8月27日号=8月19日発売)。
(2002.8.9)
「新円切り替え」「預金封鎖」「財産税」の3点セット?
森永 卓郎 もりなが たくろう
経済アナリスト
8月2日、政府は2000円札を除く紙幣を、2004年4月以降、新札に切り替えると発表した。切り替えの目的は偽造対策だと言う。しかし、本当にそうなのだろうか。
第一の疑問は、新札への切り替えが偽造対策として有効なのかということである。専門家の意見では、政府発表のような偽造対策を施しても、偽造券の製造を防ぐことはできないという。現に、偽造対策を施した欧米の紙幣でも、数カ月という短い期間で偽造券がつくられている。
第二の疑問は、なぜデノミではなく、新札切り替えなのかということだ。新札に切り替えても、新規需要は銀行のATMや自販機の改修に限られる。経済効果は数千億円規模にとどまるかもしれない。ところが、デノミであれば、コンピュータプログラムの改訂が必要になるため、1ケタ大きい経済効果が期待できる。中曽根康弘元首相や故・小渕恵三元首相が熱望し、竹中平蔵経済財政担当大臣も昨年「経済効果はある」と発言したデノミをどうして諦めたのか。
第三の疑問は、新札切り替えが銀行に大きな負担をかけるということだ。不良債権処理もままならぬほど弱体化した銀行になぜ財務省が新たな負担を課すのだろうか。
新円切り替えの布石
もしかすると、この新札切り替えは、「新円切り替え」の布石なのではないだろうか。
日本経済を再建するためには、デフレからの脱却が不可欠ということは、コンセンサスになっている。ところがデフレ脱却のために財政出動をする余力はすでになく、インフレターゲティングによる思い切った金融緩和も、日銀の抵抗でできない。しかし、このままズルズルとデフレを続けたら、税収減によって財政は破綻してしまう。
そこで究極のデフレ脱却策となるのが、「新円切り替え」「預金封鎖」「財産税」の3点セットなのである。
例えば、政府が来年の今頃、2004年春の時点で現金および政府保証のあるすべての金融資産に、3%の課税をすると発表する。銀行預金、郵便貯金、簡易保険、生命保険、国債は課税、不動産と株式、社債、外資預金、外債は非課税とする。
預金封鎖は1日だけでよい。実施日の金融資産を補足すれば足りるからだ。実施日以降、旧札は使用禁止とし、国民が旧札を新札に取り替えにいくと、旧1万円札は9700円の新札で返ってくるのだ。銀行預金や郵便貯金は、自動的に残高を3%カットする。
もし、この施策を発表したら何が起こるだろうか。まず現預金の価値が下がるから、モノに換えようという動きがでて、消費が増え、物価も上がってデフレから脱却できる。第二に、不動産価格が上昇するので、銀行の不良債権が大幅に解消する。第三に、個人金融資産のうち、少なくとも1000兆円が課税対象となるから、30兆円程度の財政収入が政府に転がり込む。まさに、一石三鳥の施策となるのだ。
もしかしたら、住民基本台帳ネットワークシステムの導入を強行したのも、金融資産把握のための総背番号としてIDを利用したかったからかもしれない。
もちろん、このデフレ脱却策を、今の時点で政府が実行すると決断していることはないだろう。現金の洗い出しや財産税というのは、富裕層やアンダーグラウンドマネーを抱える層にとっては許し難い暴挙だから、政権が転覆してしまう可能性もあるからである。ただ一つ確かなことは、新札と住基ネットIDで、こうした「暴挙」を可能にする道具立てが揃ったということである。