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兜町は、時には建て前のウラに本音が見え隠れする特有の動きをすることがある。8月5日に稼働を開始した住民基本台帳ネットワークがまさにそれだ。本来、この日は電子政府・自治体構築も含め関連を囃し、ICカード株が動意づいてしかるべきだった。今春に共同印刷<7914>をトップバッターに第1ラウンド相場が演じられ、それから約半年、「頃やよし」だったのである。ところが関連株の株価は不発どころが、逆に下げてしまった。全般相場が底割れリスクを強め、住基ネット自体に批判が相次ぎ、参加を見合わせる自治体が複数出たことも響いたと市場では説明されている。
しかし、これはあくまで建て前であり市況解説。建て前のウラ側には「積極的には買いづらいホンネ」が潜んでいそうなのだ。「国民総背番号制」や「名寄せ」への恐怖である。住基ネットの目的外利用がドンドン拡大して、市場参加者の資金の出所が洗い出され税務調査が身辺に及ぶ懸念である。来年実施の新証券税制ともども、スネに傷を持つ投資家にとっては痛しかゆしの株式テーマであり、及び腰にならざるを得ないとも憶測されるわけだ。
●目的外利用で「名寄せ」への怯え
証券取引口座の開設は、厳正に本人確認が行なわれ、ゆめゆめ仮名口座、匿名口座などは存在しないとされてきた。しかしそこは「蛇の道は蛇」の例え通り、便宜をはかるウラ道が用意されているのもまた兜町流ではある。こうしたダーティな資金は臆病そのもので、いまもっとも神経質になっているのが、住基ネットと新証券税制である。
住基ネットは、国民一人ひとりに11ケタの番号を割り振り、氏名、住所、性別、生年月日の4情報を各自治体のコンピューターで一元的に管理するシステムだが、これは行く行くは、目的外利用の税務情報に統合、拡大される可能性が皆無かといえばそうとも言えないのである。一元管理だから複数口座が、いっぺんに名寄せされ資金の全体、挙動が捕捉される恐れが出てくる。鬼より恐い税務当局が目を光らせるとなれば、資金は後ずさり慎重にならざるを得ないわけだ。
また、来年1月実施の新証券税制でも、源泉分離課税が廃止され、申告分離課税に一本化され、さらに確定申告により年間の総所得額と合算されることになる。譲渡益の課税額が増減すること以前に、投資資金の出所が追求されることになれば、株式市場から実施前に一定程度の資金流出が起こり、市況に影響を与えることが避けられないことにもなる。
●波及効果5兆5000億円の評価は先の先
もちろん、株式市場は透明で公平、脱税・違法行為が許されないのは言うまでもない。しかし、これまで何回も源泉分離課税の廃止や国民総背番号制の導入が、計画されるたびに市場に影響を与え、実施直前になって延期、中止が行なわれてきたことも確かなのである。だから住基ネット稼働を第一歩に電子政府、自治体構築へシステム需要2兆5000億円、運用需要1兆円(年間)、経済波及効果5兆5000億円と評価する関連株相場も、こうした市場の本音、不安定要因をクリアするのが前提条件となりそうなのである。
(相馬 太郎)