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「未だ底打ち確認できない米国株式」と「調整を終えた金市場」☆☆☆(住友金属鉱山ゴールドニュース) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 8 月 08 日 19:39:21:

http://www.sumitomo-gold.com/

2002/08/08 海外市場動向

「未だ底打ち確認できない米国株式」と「調整を終えた金市場」☆☆☆

前回号(7月26日付)で不安定な値動きを示している米国株式市場の先行きを占う上での注目点とした、米国4−6月期GDP(国内総生産)の伸び率が発表された(速報値)。
すでに報道されているように、結果は年率1.1%とプラス成長ではあるものの市場予想の2.3%を大きく下回ることとなった。(今回の発表時に数値が下方修正された)前1−3月期年率5%成長と比べても急減速である。
ポイントはいくつかある。まず、ここまで牽引役を果たしてきた個人消費の伸び率が1.9%増と鈍化した。個人消費は、米国経済全体の7割を占めるいわば“コア(核)”となる部分で、ここまで好調を維持し経済全般を支えてきた。それも、前期(3.1%増)あたりからやや陰りが出ていたのである。それに関連するもので当欄注目の「個人の住宅投資(民間住宅投資)」のほうは5%増となっている。あいかわらず好調を維持しているものの前期の14.2%と比べるとこちらも減速気味である。
個人消費については、GDP発表の前日(7月30日)に「消費者信頼感指数」といって消費者が景気についてどのような見方をしているかを示す(したがって消費の動向を占う判断材料となる)データが発表されているが、7月は前月の106.3から97.1(1985年を100とする)へと9.2ポイントも低下した。個人消費の先行きに陰りが出る兆候とも捉えられることから、この日はダウ平均で一時200j以上も売られる展開となった。そして翌日発表されたGDPの内容が、上記のように個人消費の先行きにやや不安を示すものであったことから、株式市場は引き続き値動きの粗い展開を続けることとなっている。
つまり、今回のGDP速報値はマーケットに安心感を与え、安定させる材料とはならなかった。
むしろ「消費者信頼感指数の低下」から導かれるのは、株価の急落が消費者心理に影響を与え始めているということだろう。ここまでは株価の下落によるいわゆる「逆資産効果」は思ったほど見られず、それは(以前取り上げたように)住宅価格の上昇が株安による目減り分を補っていたためである(グリーンスパンFRB議長も7月の議会証言で言及)。しかし、さすがにこれほど乱高下を繰り返し、株式投信の基準価格が目立って下げ始めたとなると、(楽観的なことで知られる)さすがの米国投資家も安穏としていられなくなっている。このところメディアに流れる当地の個人投資家へのインタビューなどで、「リタイアの時期を延ばし、働かなければ…」という内容のものが目だって増えている。それもそうだろう。自らの年金額が株式市場に左右される例の「401K(確定拠出型年金)」の普及が進んでいるのだから…。
いずれにしても、これまで以上に個人消費関連のデータに株式市場は敏感に反応することになる。そして、“絶” 好調が伝えられてきた住宅関連のデータにはますます目が離せなくなってきた。住宅需要の伸び鈍化が示すものは何か。価格が下落をはじめる兆候が現れると、雪崩現象すら起きかねないのではないだろうか。そうなると、このところ住宅価格の時価とローンの差額を対象とした「ホーム・エクイティ・ローン」の普及もあり“借金漬け”となっている家計(個人)への影響は大きく、それは米国経済全体に、そして結局は世界経済に影響する事態となる可能性がある。その際の「信用リスク」の上昇は、企業の資金調達を難しくさせ、(マイナスではあるものの)改善傾向の見られる「設備投資」に水をかけることになる(すでに会計疑惑もあり調達条件は悪化している)。
内外メディアの論調の大半は、「米国景気が腰折れする公算は小さい(日本経済新聞8月2日社説)」としているが、かなり危ういのではないかと思われるし、それを前提にしたシナリオも書いておいたほうが良さそうだ。論を戻すと、いまの環境では米国株は未だ底打ちせずということである。いうまでもなく(日経平均のような指数でいえば)日本株においておや、である。
「もうは、まだなり」(7月12日配信号)として調整継続を指摘した金市場のほうは、トンネルを抜けつつある。
以前から動向を追っているファンドの買い越し量は、米国の政府機関発表のNY市場の最新データによると、7月30日時点でついに差し引き385コントラクト(1.2d:1コントラクト=100オンス、約3.1`)とピーク時の約47000コントラクト(約145d)から激減している。まさに“売りが一巡してしまった”。具体的には「ロング(買い)」が27460コントラクト、「ショート(売り)」が27075コントラクトとなっており、差し引き(27460−27075)385のネット・ロング(買い越し)というわけだ。これからは、ロングに比べ減少度合いの小さい「ショート」の動向に関心が移ることになる。これまでの“ウィーク・ロング”の振るい落とし(7月1日配信号参照)から、“ウィーク・ショート”の振るい落とし、つまりは「空売り」の「買戻し」がどの程度進むかに関心が集まるだろう。
足元の世界経済はアルゼンチンに端を発する中南米の危機が、ウルグアイ、そしてブラジルへと波及するなかで、さしもの米国政府も大慌て状態となっており、日本国内ではさほど危機意識は高まっていないが、深淵に臨んでいる状態と表現しても過言ではないと思う。これから矢継ぎ早に打たれる対策が功を奏すればいいが、それほど事態は簡単ではないのではないか。これも筆者が以前から指摘してきた「金融清算の時代」の1ページということだが、まだまだ一山二山越える必要があると思われる。そんな状況のなかで、ゴールドをショート(空売り)する投資家が増えるとは思えないのである。(8月8日記)
金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎

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