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先の小泉純一郎首相による突然のペイオフ全面解禁見直しは、金融システム不安の導火線となりかねない「危ない金融機関」がいまだに数多くあることを意味する。霞が関や永田町関係者による「ペイオフの全面解禁で15の金融機関が破綻(はたん)する」との“恐怖のシミュレーション”が如実に物語る。問題の金融機関は、地方銀行4行、11の信用金庫・信用組合。政府や金融界を恐怖に陥れる危ない金融機関の実態は−。
うだるような暑さとなった日曜日の7月28日午前、「危ない金融機関」の存在を強く印象づけるシーンがブラウン管を通して全国のお茶の間に流れた。
与党・保守党の野田毅党首がテレビ朝日系「サンデープロジェクト」に中継で生出演した。
司会の田原総一朗氏からペイオフ全面解禁に絡み、「(つぶれるような)危ない銀行はないのか?」と突っ込まれ、思わず「いえ、…」とその存在を認めるような言動をしてしまったのだ。
「いえ」と答えてからその言葉の重みに気づいたのか、その後は言葉に詰まってしまった。
野田党首は「ペイオフ延期論者」で知られる。それにしても、与党の党首が「危ない金融機関」の存在を示唆してしまった意味は大きい。
このシーンを見ていた野党関係者がいう。
「国会議員や金融当局を含め、危ない金融機関の存在を認めるような言動が公に出たのは初めてではないか。それが与党党首の口から出たきたことの意味は大きい」
では、危ない金融機関はどこなのか。シミュレーションにかかわった関係者が具体的な金融機関名を絶対出さないことや特定されるような表現を避けることを条件に、核心部分を解説する。
「ペイオフ全面解禁で、破綻の可能性がある金融機関は15ある。4つが地方銀行、残りの11が信用金庫や信用組合。金融当局も全く放置していたわけではない。一部については他の金融機関との統合を模索したこともあったが、結局、財務内容が悪すぎて物別れに終わってしまった」
関係者によると、「危ない」4地銀はいずれも西日本を除いた地域に本店があり、うち3行は関東から東北にかけて営業基盤を持っている。
危ないと認識される理由は、下記の通り(表記のA、B、C、Dは簡易的につけたもので、実際の行名とは無関係)。
A銀行…「財務内容の悪さが周知の事実のようになっており、経済の先行指標の1つが目立って悪い」
B銀行…「財務内容がかなり悪い。水面下で統合を模索した時期もあったが、財務内容の悪さから実現せず」
C銀行…「過去に増資をしたものの、財務内容が改善されず」
D銀行…「財務内容の悪さのほか、開発絡みの大口問題債権が近く発覚する可能性がある。ある自治体の指定金融機関になっているが、その自治体が非常に強い警戒感を持ち、指定金融機関から外すなど、何らかの対応をとる可能性あり」
第2地銀を含めた地銀を取り巻く環境は厳しさを増すばかり。
不良債権処理の加速や株安の影響をモロに受け、平成14年3月期決算(連結)では、地銀上位10行のうち、最終損益で黒字を維持したのは横浜、静岡、福岡、札幌北洋の4銀行のみ。
残り六行は軒並み最終赤字となった。下位行となると、さらに状況は厳しくなる。
ペイオフの一部解禁を控えた13年度中には、地銀(第2地銀)2行が破綻。3月に破綻した静岡の中部銀行も、1日で10億円前後の預金が流出してトドメを刺した。
「危ない」とされる11の信金・信組は、地銀以上に厳しい状況にあり、再編・淘汰(とうた)の嵐が吹き荒れる。全国に400機関近くあった信金は今年7月には約340機関、全国に300機関近くあった信組は約220機関にまで減っている。
「不良債権の処理加速や株安に加え、今春のペイオフ一部解禁が逆風となり、破綻に追い込まれる地域金融機関が相次いだ。ただ信金、信組の再編・淘汰はまだ道半ば。なかでも11の信金、信組は先行きへの不安がかなり強い」(関係者)
13年度中には13の信金と、413の信組が破綻の憂き目をみた。
ペイオフの全面解禁をめぐっては、小泉首相が「予定通り来年4月に全面解禁」と主張する一方で、自公保の与党側は「延期」を唱えていた。
ところが、小泉首相が先月30日、柳沢金融担当相に対し、「不安のないよう対応策を考えてほしい」と見直しを指示。決済性預金の全額保護の可能性などを検討することになった。
ペイオフが見直しのうえ、予定通り全面解禁されるにしろ、延期されるにしろ、破綻の危険性が高い「危ない金融機関」は放置できない。
これら金融機関の破綻が金融システム不安を引き起こし、ひいては景気が底入れした日本経済を再び、奈落の底に突き落としかねないからだ。
永田町からは「そもそも金融庁の安全宣言後も、こうした金融機関が存在することが問題。ペイオフ論議とは別に、これらの金融機関をどうするか、厳格な対応が求められている」(金融担当筋)との声も出ている。