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世界的な株式市場の混迷が続いている。日本でも日経平均は1万円台をなかなか回復できない。そんな中、信用取引規制が強化されるようだ。ルール改正に備えた投資戦略を考えてみる!
米国経済弱体化が明らかになるにつれ、世界的に株式市場は混迷の度合いを増している。また、米国からの資本逃避により円高傾向も継続している。日本の株式市場においても、日経平均でなかなか1万円台を回復できずにいる。このような市場環境の中、先日日経新聞等の報道によると、いよいよ信用売りにおいてもアップティック・ルールが適用されることとなりそうである。今回のコラムは、この信用取引規制強化を見込んでの、運用戦略をコメントしたい。
読者の皆様方においても記憶に新しいことと思うが、本年2月に各種の市場規制が強化された。その内の一つが、空売りにおけるアップティック・ルールの導入であった。これは、投資家が貸し株市場から調達して空売りを行う場合、直近の取引価格を上回っているか、或いは上回ったあとの価格と同一価格でないとならないとするルールであり、規制強化以前のダウンティック・ルール(直近の取引価格より下でなければよい)から比べると、格段に空売りのしにくいルール変更といえる。但し、本年2月の改正は、空売りのみであり、個人投資家にも馴染みの深い信用売りについては、規制強化は行われなかった。この規制強化は、その後の株式市場の上昇と言う意味では一定の成果を上げたのだが、機関投資家または証券会社が、空売りではなく信用売りを行えば、規制の強化を逃れうるという意味においては、売り崩しの排除という意味においては、不完全なものであった。今回の改正においては、信用売りにおいても空売りと同様の規制を導入しようというものである。
かようなルール改正が行われた場合の影響を考えてみよう。
1)流動性の減少
2)株式市場の短期的上昇
3)市場の長期低迷
あたりが可能性として挙げられよう。
1)流動性の減少
まずは、たとえ株価下落を予想していても、売りから入るという空売りの手法は成功率が低くなることが予想される。したがって、空売り目的の売り及びその反対売買による買いが減るため、市場の流動性は低くなる。かような政府による規制強化を恐れて、ヘッジファンドや証券会社の自己売買部門等の市場参加者そのものが減ることになる。
2)株式市場の短期的上昇
前回の規制強化時にも起こったことであるが、かような不確実性の増大により、とりあえず、現状の売り残のポジション調整が行われる可能性がある。そのため、一時的には市場は上昇する可能性がある。
3)市場の長期低迷
市場参加者は減るのだが、日本固有の問題、すなわち持ち合い解消や政府保有株の放出により、供給の増大は止まらない。従って、ここで外国人投資家が避けるような市場にしてしまうことにより、相場の長期低迷の可能性が出できてしまう。
2月から5月までの相場の上昇の再来が来るかどうかはともかく、不確実性が増大したことは間違いなさそうだ。このような場合、
1.とりあえず、売りのポジションをクローズする方向で考える、特に日経平均やTOPIXの構成比率の高い銘柄の売りのポジションは完全にクローズ
2.この日経やTOPIXへの連動性の高い銘柄を多少買っておく
3.持合売りの可能性が高い銘柄、特に今後流動性が減少していく場合、持ち合い売りの出そうな中小型銘柄は思い切って減らしておく
というような投資戦略をまずは考えている。
1.及び2.は簡単に理解できると思う。3.については、空売り規制が強化されたといっても、結局は空売りでない売り(ロング・セル)においては、そのような規制は適用されない。空売りの買戻しによる流動性も期待できなくなるのであれば、そのような銘柄については、一度売りの注文が出始めると、大きく価格水準を落とさないと売れないこととなろう。
尤も、長期的かつ大きな相場の回復・上昇を期待するには、少々難しいと思われる。世界同時不況、日本景気の長期低迷、政治家・政府当局のあまりにもお寒い対応を見ていると、どうしても悲観的にならざるをえない。よって、今回の規制強化による相場の上昇が見られたら、迷わずプットオプションの購入(株価下落時に利益が出る)を考えたいところだ。
外資系ヘッジファンド 運用担当 永坂泰三
提供:株式会社FP総研