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政府が1000円札、5000円札、1万円札の3つの紙幣を新札に切り替える。ここ数年、市中に出回っているデジタルコピーによる偽造紙幣の氾濫を防ぐを主目的に、あわよくば経済活性効果を狙う「二兎追う」という戦略だ。確かにハードウエア、ソフトウエアの更新が必要になるATM(現金自動支払い機)、各種自動販売機メーカーにとっては時ならぬ神風だが、ユーザー業界にとっては業績低迷下での投資負担増加要因以外の何物でもない。大きな経済効果は期待薄で「どうせならデノミを」という悲痛な声が聞こえてくる。
●「何も良い事ナシ」〜コンビニ業界
「これで利益が吹っ飛んでしまう」と渋面で話すのはある大手コンビニエンスストアチェーンの幹部。ようやく利用者数が増加し、商品の買い回り効果が生まれてきたコンビニATMにとって、今回の新札発行は「なにもいいことがない」という。
金融機関でないコンビニエンスストアにとって、ATMからの収入は手数料に限られる。機器の入れ替え費用は所有者の負担になるが、1台30万円ともいわれる機器の改良費用が発生。コンビニ自体はATMの内部に触れることが禁じられているため、専門の警備員、技術者の費用が加わる可能性もある。「ただでさえ薄利なのに・・・」との嘆きが出るわけだ。
●印刷や紙・パルプ業界も「無縁」
紙幣というと、ついつい印刷や紙・パルプ業界という連想が浮かびそうだが、紙幣印刷は国家管理で印刷業界は全く関係がない。用いられる紙も極めて特殊なもので、両業界にとって「経済効果はゼロ。なんの関係もない」(業界関係者)。新たに紙幣の肖像に採用される樋口一葉、野口英世関連の著作物が売れるかもしれないが、これとて経済効果とは程遠い。
一部では紙幣にICタグを鋤き込むという観測もある。もし現実になれば半導体関連業種などに大きな需要を与えることになる。しかしあくまで観測に過ぎず、現状のマイクロICのコスト、紙幣への実層技術の開発など一朝一夕に解決できない問題が多い。どのようなコンセプトを打ち出してくるか、政府の動向が注目されるところだ。
●大手ハードメーカーで薄日
もちろん、ATM大手の沖電気<6703>などハードメーカーは更新需要が確実に期待できる。また大幅なものではないにせよ、勘定系システムの更新なども必要なため、システムインテグレーターも相当量の仕事が発生することになる。すでに一部で関連業界の株価が上昇しているように、材料不足の市場にとっては格好のネタとなっている。
実は今回の新紙幣発行について、ある金融関係者は「そろそろじゃないか、という噂はあった」と話す。その理由は「紙幣の製作は手作業。技術継承の観点からいっても、そろそろ必要になる」というものだ。原版づくりも含めて紙幣製作は職人の領域。「最低でも20年に1度くらいは更新しないと、技術が失われる」というわけだ。
●地方金融機関などでは重荷に
いずれにせよ、新紙幣の発行による経済効果は“実需”という意味では期待薄といえる。逆にコンビニや地方金融機関などにとっては重荷になる可能性が高い。青息吐息の業界からは「新紙幣の発行と一緒にデノミをやってくれ」との声が聞こえてきそうだ。
(海野香 市川徹)