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【ワシントン竹川正記】今年後半の米景気の本格回復が危うくなってきた。今年4―6月の国内総生産(GDP)の実質成長率は前期比年率換算で1.1%と急減速。6月の製造業受注も前月比減少に転じ、7月の失業率が5.9%で高止まるなど、最近の経済指標は景気の先行き懸念を強める内容が目白押しだ。最近の株価急落などで、堅調な景気を下支えしてきた個人消費の腰折れを心配する見方が広がっている。日本を含む世界経済の前途にも暗雲が立ち始めている。
「複数の地区連銀から株安が実態経済に与える影響への懸念が表明された」。米連邦準備制度理事会(FRB)は7月31日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、米経済の先行きに楽観的な見通しを示しつつも、最近の株安による逆資産効果にの悪影響に警戒感を隠さなかった。実際、7月の製造業総合景況指数は50.5と、景気の縮小・拡大を判断する分岐点の50すれすれまで低下。7月の消費者信頼感指数も2月以来の低水準となり、株安が個人消費や企業の景況感を急速に冷え込ませていることを示した。
個人消費が堅調なうちに企業の業績が回復し、設備投資に火が付いて本格的な景気回復が実現し、年末には3.5%程度の成長率を確保する――という米政府が描いてきた成長シナリオにはかげりが出てきた。市場では「今秋にも個人消費が腰折れ、米景気が再び後退する」(欧州系証券アナリスト)との“二番底”懸念が浮上。「ダウ工業株30種平均株価が今後、再び8000ドルを大きく割り込む展開もある」(日系証券)との悲観論も台頭している。
先行き悲観論に対し、米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン議長は、先月16日の上院銀行委員会での証言で、「住宅の資産効果が個人消費を支えている」と反論。住宅市場の好調持続による資産効果で株安の逆資産効果が相殺できるとの見方を強調した。住宅価格の上昇を裏づけにして、個人は借り入れ余力を膨らませ、新たな借金を消費に回すという構図だ。
だが、米国野村総研によると、家計の保有する株式の価値はピークの00年1―3月期から今年4―6月期までに可処分所得比で78.3%も下落。一方、同期間の住宅を含む不動産価値の上昇は同比10.4%にとどまり、株安をカバーしきれていない。同総研の試算では、これまでの株安の悪影響が今後、個人消費を2%、GDP全体では1.4%も押し下げる可能性があるという。
昨秋以来の減税効果も減退し、雇用環境の改善が進まないことも、個人消費の圧迫要因。米経済は成長のエンジンを失うリスクに直面している。