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ドロ沼状態の不良債権処理にあえぎ、自己資本が低下する大手銀行が貸出金利の引き上げを本格化させている。融資先から強引にリスクに見合う金利を取り、収益アップを目指すのが表向きの理由だが、早い話、中小企業を食いモノにサバイバルに躍起なのだ。断れば貸し剥(はが)しに。「姑息(こそく)な弱い者いじめ」と悪評プンプン。「大手銀も悪徳金融と同じだ」(地銀幹部)と批判が出ている。
「おたくは5段階の格付けで、この位置にランクされている。すでに実行された貸し付けについて、若干金利を上乗せさせていただきたい」
今年に入り、中小企業が多い東京都大田区の製造業者を大手銀行の融資担当者が訪ね、金利の引き上げを求めてきた。
融資担当者は「金利の上乗せに応じてもらえないと、融資金の一定額を一括返済してもらう」とたたみかけたという。
デフレ不況下、製造業者はそこそこの仕事を確保していたが、貸し渋りで資金が回りにくい状況に直面していた。
一括返済が無理なのは融資担当者は百も承知。「何が何でも引き上げをのんでもらう」という強い意思の表れだった。
「応じないと貸し剥しとなる。下手すると倒産の危機にさらされる」
結論は目に見えている。業者は弱みに付け込まれ、要求をのんだ。
銀行が迫る引き上げ幅について、関係者は「0.1−0.5%が相場。2%以上を迫られている事業者もいる」とやるせない心境を吐露する。
中小企業の経営環境は悪化の一途。金融庁が先月末発表した平成11年3月以降に公的資金を投入した銀行の経営健全化計画フォローアップ(事後点検)でも、貸し渋りの事態がクッキリ。
大手7行の14年3月期の中小企業融資は、13年3月期に比べ5兆1410億円減少した。
UFJ銀とUFJ信託の2行で2兆5247円、あさひ銀が1兆4354億円と大幅減少。次いで三井住友銀が7615億円の減少となっている。
貸し渋りに加え、最初に金利引き上げをブチ上げたのは三井住友銀。
西川善文頭取が昨年11月、中間決算発表で「貸し出しの大リストラをやる。リスクに見合った金利をとれるようにする」と発言。ほかの大手銀も足並みをそろえた。
金融担当アナリストは「貸出金利の引き上げは、銀行経営が行き着くところまで来た証拠。銀行の世紀末現象だ」と表現して、こう続ける。
「不良債権処理で自己資本の取り崩しを迫られ、米びつが空っぽ状態。生き残るには本業のもうけの業務純益を少しでもカサ上げするしかなく、金利引き上げを強行せざるを得なくなった」
米銀の勤務経験がある小田切直登・BNPパリバ証券審査部長は「収益力低下が問題で、融資先のリスクに基づいた金利設定は間違ってはいない」と理解しつつも、「今回の引き上げは問題点も多い」と警告する。
この時期に突然引き上げるのは、「タイミングが悪過ぎる」という。
その対象は、金利支払いが滞るなど台所が苦しい中小・零細企業が中心となり、金利引き上げを強行すると、倒産ラッシュの引き金になる。
「大口債権者には債権放棄という優遇措置をとる一方、中小・零細企業には利上げでは理解が得にくい」と批判する。
1兆6000億円もの有利子負債を抱えたダイエーが今年初め、UFJ銀行など主力3行から借金棒引き(債権放棄)など5200億円の金融支援を受けて救済された。
これを機に、飛島建設や大京、長谷工コーポレーションなど支援のオンパレードとなった。
その裏で、なりふり構わず中小・零細企業に金利引き上げを迫るのでは、「弱い者いじめ」と非難されても仕方ない。
全国の信用保証協会の実績表(5月末現在)が現状を如実に示す。
公的資金の注入とは別に、国は貸し渋り対策として、10年10月から昨年3月まで特別保証制度を実施してきた。
金融機関から中小企業への融資を各都道府県に設立された信用保証協会(特殊法人)が保証し、焦げ付いた場合は協会が弁済する制度である。
銀行が痛まない仕組みをつくる一方で、貸し渋りに苦しむ中小企業を救済するというものだ。
実績表は5月末現在で、約2年半の間、中小企業向けに実施された特別保証制度がどうなっているかを示している。
制度(枠は30兆円)の利用実績は累計で、28兆9000億円、172万件。このうち、焦げ付き分(代位弁済)が4.3%にあたる1兆2500億円にのぼる。
返済期間延長などの条件変更案件が8.5%にあたる14万6000件にも達している。両者を合わせて実に、全体の約13%が不良化している。
経済産業省の関係者は問題点を指摘する。
「経産省は弁済案件の発生率を10%以下と見込んだが、不良債権は既に13%。中小企業の現状を象徴している」
「そもそも、大手行などが取りっぱぐれがないようにして、融資しやすくした制度だ。その大手行がこの時期、中小企業に引導を渡す可能性のある金利引き上げに動くのはいかがなものか」
異論、反論噴出の金利の引き上げ。銀行の経営にどれだけプラスになるのか。民間信用調査機関の幹部は指摘する。
「かつて旧東京相和銀行が破綻(はたん)前に金利アップ作戦を展開したことがあったが、結果はご覧の通り。このタイミングでの引き上げは、むしろ金融不振を増幅させる」
大手銀行の末路が、旧東京相和銀と同じでなければいいのだが…。