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個別の株式と同じ感覚で株価指数を取引しませんか―。こんなうたい文句で昨年7月から東証や大証に上場された上場投資信託(ETF)が、嫌われに嫌われている。個人投資家向け新商品としての性格のほかに、銀行と事業会社の持ち合い解消売りの受け皿という機能がアダとなっているためだ。「ETFは相場のガンだ」(米系証券トレーダー)との恨み節の根源は何なのか。
●ご当局推奨のスキーム
例年、年度や中間決算の期末を控えた時期は、銀行と事業会社の間で互いに保有しあっていた株式を売却する「持ち合い解消売り」が活発化する。銀行の経営体力増強を促すため、銀行自体の保有制限も加わるため、今年は解消売りが活発化してもおかしくないのだが、なぜかこうした取引は影を潜めている。「解消売りはETFを組成してショックを和らげるように、とのご指導をご当局からいただいている」(大手銀企画関係者)ためだ。
ここで簡単にスキームを説明しよう。大手銀行は取引企業の株式を大量に保有している。ただ、企業系列の関係上、「ポートフォリオには偏りがある」(同)。例えば旧財閥系銀行ならば同じグループ内企業の株を多くもっているが、他の系列企業の株はほとんど持っていない、といった具合だ。このため、ご当局推奨のスキームを実行するためには、次のような手順を踏む必要がある。
まずETFを組成する証券会社を指名する。解消売りする銘柄を証券会社が用意したETFに拠出。しかし、このままだと銘柄に偏りがあるためファンドは組成できない。そこで、TOPIX型のETFを組成する場合、拠出株数と同規模の今まで持っていなかった株式をまんべんなく買い、ファンドとしての体裁を整えることになる。
●巨大なヘッジ売り
ここまでは何ら問題はない。問題はETF組成を受託した証券会社から先にある。証券側はETF組成の段階で巨額の買いポジションを抱えることになるため、先物市場でヘッジ売りを出すことになる。「しかし」である。銀行や保険会社の解消売りポジションは「ロットが大きい」(準大手証券)。当然のことながら、ヘッジしなければならないポジションも規模が膨れ上がることになる。
折りしも空売り規制強化の反動で、投機的な売りが先物市場に出やすい環境にある。こうした中、「突然超大口の売りが降ってくるケースが続出している」(同)のだ。7月中旬から月末にかけて、相場全体の振れが大きくなった要因のひとつにETF絡みのヘッジ売りがあるのは間違いない。
●インサイダーの温床にも?
問題はまだある。個人向けの有望商品であるETFだが、1日平均の売買代金は新規上場直後こそ100億円を記録する時期があったが、「あとは50億円がせいぜい」(大手証券)と言うように個人の投資意欲が盛り上がっていないのだ。代わりに、指数先物やオプションを駆使して値ざやを稼ぐ裁定取引の専門の業者が「活発に買っている」(米系運用会社)といい、これら業者が仕掛け的な売買を増やし、相場全体の振幅を更に大きくしている側面がある。
ETF組成に絡み、ファンド向けに新規で買い付けられるであろう個別株について「事前に大量購入し、欧米で厳しく禁じられている“フロントランニング”を公然と行う向きも現れ始めた」(同)といい、インサイダー取引の温床になりかけている面さえある。
官民上げて導入を後押ししたETFだけに、市場関係者の間から表立っての批判は出ていない。しかし本音は「余計な商品のおかげで需給関係がさっぱり読めなくなった」(銀行系証券)と散々なのだ。ここでご当局の皆さんに提案。市場関係者の声に耳を傾け、ETFの実態調査を行ってはいかがだろうか―。思わぬ“株価対策”になるのではないだろうか。
(相場 英雄)
・大手銀行、持ち合い解消計画に狂い〜株価下落に追いつけず
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200207/31/20020731112513_45.shtml