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田中真紀子前外相の弁明があったものの疑惑は残ったまま。小泉首相もはっきりしないまま政策を与党よりに軌道修正。こんなことじゃマーケットが小泉政権を壊すかも。
先月24日、田中真紀子前外相は、衆議院政治倫理審査会で公設秘書給与流用疑惑について弁明した。田中氏は、審査会の冒頭で公設秘書給与を私設秘書に流用したとする疑惑を完全に否定したものの、具体的な質問については同席の弁護士や公認会計士に回答を任せ、本人からの説明は表面的なものにとどめた。また給与流用を示す給与明細の存在については、「文書の真偽が分からないので答えられない」と回答そのものを拒否してしまった。今の田中氏には疑惑を明確に晴らそうとする意欲が薄い様子。結局、形式的には議論をしたものの、田中氏の疑惑は未だに疑惑のまま。ただ混乱だけが残っている。
田中氏の騒ぎがようやく落ち着きをみせた29日に、自民党のデフレ対策特命委員会（相沢英之委員長）は、第3 次デフレ対策案を最終決定した。その中身は、
○普通預金のペイオフ延期
○日銀による物価安定目標（インフレターゲット）政策の導入
○金融庁に対して中小企業に配慮した金融検査マニュアルの見直し
○研究開発費やＩＴ投資額の税額控除
○贈与額3,000万円までを3年間を限度に非課税
など。こうした内容は秋の臨時国会で成立を目指す方針だ。
中身をみれば分かるように、施策の多くは小泉内閣の構造改革路線を否定したもの。普通に考えれば、小泉首相が自民党案を了承することはありえない。しかし30日に小泉首相は、企業向けの資金決済用当座預金の保護と、個人向けにゼロ金利の決済預金の新設ならびに同預金の保護の検討を柳沢金融担当大臣に指示した。個人の普通預金金利はすでにほぼゼロであるので、今回の措置は事実上のペイオフ全面解禁の延期といえる。小泉内閣の方向性は、徐々にではあるが自民党よりに動いている。
通常国会終了後、政局のテーマは内閣改造・自民党役員人事、景気動向に移るだろう。小泉首相としては、山崎自民党幹事長、塩川財務大臣、竹中経済財政担当大臣、柳沢金融担当大臣など主要経済閣僚を留任させたい様子。しかし自民党を始めとした与党内には内閣改造の要望が強く、ペイオフ同様、内閣支持率や景気動向次第では主要閣僚の交代も十分ありうる。
景気については鉱工業生産が6月に前月比−0.7％と5ヶ月ぶりの減少となり、景気の先行きについても不透明感が強まってきた。日本の株価も不安定な動きを示しており、ドル円レートもほぼ3週間ぶりに120円台まで円安が進んだ。衆議院の補欠選挙も近づいており、政治的にも景気の足取りをしっかりとさせたいところ。こうした焦りが小泉首相の軌道修正となり、政局混乱につながったと言える。本来ならば小泉首相がリーダーシップを発揮し、混乱を終息させるべきだろうが、その役目を小泉首相に期待するのは難しい。結局、田中氏のケースと同じで、表面的に議論や論争はしたものの、最終的な変化は何も得られず、混乱だけが残るだろう。
残念なことだが、先行きの政局や政策論議は袋小路に入り込む可能性が高い。これを察知したのか株式市場は、新しい政策が発表されるたびに株価が上下する「政策催促相場」の様相を強めている。しかしこんな状態が続くようだと、いずれマーケットは「政策」ではなく、「政権交代」を催促しだす。いまのところ可能性が低いとはいえ、「小泉政権交代」というリスクシナリオが真実味を帯びる場面も出てくるかもしれない。
マーケットエコノミスト 秋新作
提供：株式会社ＦＰ総研
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。