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来年4月のペイオフ全面解禁をめぐり、金融庁は、金融システム安定化策として浮上している決済性預金の保護は「当初の方針とは矛盾しない」との主張を展開し始めた。だが、この「両立」論は、決済性預金の代表である当座預金も含めてすべての流動性預金を対象にしたペイオフ実施を「全面解禁」としてきた従来の理解と異なるとの見方が多い。さらに、決済性預金を保護するため、公的資金など社会的なコスト負担が必要になれば、政策の後退に対する批判を一段と助長する可能性もある。
小泉首相はきょう午後4時から行われる記者会見で、ペイオフ政策に変更はない、との考えを改めて表明する見通し。しかし、30日に金融システム安定化策の検討を求めた首相の指示については、なお「政策の後退」とする見方が根強い。
「実質上、ペイオフ全面解禁の延期だ。規律が無くなる」−−。31日開かれた金融審議会総会で、21世紀政策研究所理事長の田中直毅委員は、決済性預金の保護について強く批判した。その場では、議論が展開されることはなかったが、審議会終了後、ある金融庁幹部は、「分かっていない人がいるな」とこぼした。ペイオフ全面解禁と決済性預金の保護は矛盾しないというのが、同庁の主張だからだ。
同庁の説明はこうだ。ペイオフ凍結という預金保険法の特例措置の解除、つまり、ペイオフ全面解禁によって、預金量1000万円までの少額預金者だけがセイフティー・ネットの対象となる。預金者保護について、預金保険法が念頭に置くのは、金融仲介機能において資産運用という目的で資金の出し手となる預金者だ。しかし、金融のもう一つの側面である決済機能における預金者は、あくまで決済サービスの受益者であり、資産運用を目的とはしていない。決済機能を守ることは、少額預金者保護の施策とは別次元−−。こうした論理で、金融庁は「決済性預金の保護とペイオフ全面解除は矛盾していない」(同庁幹部)との主張を展開している。
しかし、ペイオフ全面解禁については、金融界も含め、決済性預金も対象になるという認識が共有されていた。予定どおりの全面解禁なら、決済に使う預金まで含めて払い戻し保証額を1000万円にする枠組みだったからだ。この点を突かれて、金融庁首脳は、「昔から(矛盾はしないという)議論はあった」と主張する。しかし、これまでの政府説明でもこうした点はあまり明確にされていない。他の先進国でも、流動性預金の保護をしたままのペイオフ実施は例が無いという。金融庁筋は、これまで考えられていた全面解禁とは、「決済性の部分については、(内容が)変わったということかもしれない」と軌道修正を認める一方、「新たな観点からの再検討だ」として政策変更との批判を退ける。
ペイオフ解禁に伴って実施する金融システム安定化策については、小泉首相の指示を受けた柳沢金融担当相が31日、金融審議会に対して、集中的な検討を要請した。議論を預けられた金融審の中心メンバーで、高岡短期大学の蝋山昌一委員は、「金融決済機能は公共財。これは何らかのかたちで守らなければならない」と述べた。「金融システムが予想外に弱いということが背景にある」と述べ、現在の金融システム不安が決済性預金保護の背景にあることを指摘している。
同庁によると、決済性預金の保護を行う場合は、「(預金保険)法改正が必要になる」(金融庁筋)見通し。現行の預金保険制度では、預金者保護の裏付けとなる資金を金融機関が預金量に応じて毎期、保険料として納付している。決済性預金を保護する場合は、新たな枠組みでの裏付けが必要になる。
決済性預金の保護で生じる問題のひとつは、その社会的なコストだ。今年度も全額保護が続いている当座預金や普通預金などの預金保険料(0.094%)は全額保護が打ち切られた定期預金などの保険料(0.080%)より高く、預金の全額保護は金融機関に負担を強いる面がある。福田官房長官は7月31日の会見で、「日本の金融システムを守るために必要なら、公的資金を使うことについて国民の理解を得られる」と述べており、公的資金の投入までも視野にいれた措置であるとの考えを示している。