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【減税問題】
●法人減税は個人消費の刺激とならず
小泉純一郎首相が経済財政諮問会議で、2003年度予算編成に関連し、歳出削減を財源とする1兆円超の減税の方針を表明したことで、経済運営の軸足を「財政再建」から「経済活性化」に政策転換したと評価する声が上がっている。しかし本当にそうなのだろうか。「1兆円減税」は牛尾治朗ウシオ電機会長ら諮問会議の民間議員が提案した法人税減税の提案に応じたもので、それ以外の先行減税の具体的検討はこれから。贈与税や不動産取得税の減税などが想定されるものの、実施されてもこの部分の減税幅は少ないとみられる。
これに対し、財務省はあくまで「増減税一体処理」を主張、さらに税収落ち込みを避けるため、地方税である法人事業税への外形標準課税導入で法人の実効税率引き下げようとしており、今後、首相と諮問会議、財務省、与党との間で調整難航が予想される。何より、1兆円程度の法人税減税で経済が活性化するとは考えにくい。一方では、健康保険法の改正により、来年4月からサラリーマンの個人負担が現行の20%から30%に上がるなど約3兆円の個人負担増となるにもかかわらず、個人の所得税減税は予定されていない。こため1兆円減税にもかかわらず、個人消費意欲がさらに減退する懸念すらあるなど景気対策としても中途半端で、野党側からは「(小泉首相は)いよいよ税制でもダッチロールを始めた」(菅直人民主党幹事長)などの批判が強まっている。
一方、1万円の大台を割り込んだ最近の日経平均株価下落について政府筋は「株価は下がれば上がる。日本の株はそう簡単には落ちない」と、ことさら楽観を装っているが、果たしてそうした認識でいいのだろうか。もちろん株価に一喜一憂する必要はないにしろ、首相ら政府首脳がいずれも経済や景気に比較的無関心なのがどうしても気になる。
【政局の焦点】
●議員辞職の可能性が高まった田中前外相
田中真紀子前外相の公設秘書給与流用疑惑に関する衆院政治倫理審査会は、予想通り疑惑解明に至らなかっただけではなく、逆に新たな疑惑が浮上するなど、同議員にとっては政治生命の危機とも言える重大な局面に差し掛ってきた。このままいけば、従来から「重大な関心」を示している検察当局が動き出すのは確実とみられ、逮捕を逃れるため、加藤紘一元自民党幹事長や辻元清美前社民党政審会長と同様、議員辞職に追い込まれる可能性が高まったと言っていい。
そもそも政倫審は疑惑を持たれた議員が自らの疑惑を晴らすため、同審査会開催を求めるにもかかわらず、田中氏は弁護士や公認会計士を参考人として同席させるなど、当初から自分で疑惑を解明するという意欲に欠けていた。「何事も議員本人の指示以外に動くことはあり得ない」と、元公設秘書が公言する田中事務所にあって、複雑な会計処理が行われている秘書給与のからくりを知っているのは田中議員本人以外には考えられない。それを「自分は直接タッチしていないから分からない」では弁明にもなっておらず、各党委員の納得を得ることは到底無理だった。
また民主党の永田寿康議員が示した新資料による公設秘書給与の私設秘書への山分けが事実なら、辻元氏の「ワークシェアリング」と全く同じで、詐欺罪の可能性が極めて濃厚となる。もちろん不明朗な会計処理が政治資金規正法違反に該当する恐れは十分考えられる。田中議員がこのまま誰もが納得できる弁明ができなければ、秋の臨時国会で証人喚問されるか、その前後に民主党などからの告発を受けて、検察庁が捜査に着手することが最もあり得るシナリオだ。これを回避するには最早議員辞職しか道は残されていないと言えよう。
それにしても、このところ民放各局は手のひらを返したように“真紀子たたき”に熱心だが、散々あれだけ持ち上げておいて、今さら同議員の「性格」の問題などをあげつらうのはいかがなものか。「武士の情」で1社くらい最後まで「真紀子擁護」で突っぱねてもいいのではないか。もちろん皮肉を込めて言うのだが。
●候補者乱立で、田中前知事再選の流れ変わらず
9月1日投開票の長野県知事選は当初、田中康夫前知事の信任投票かとみられていたが、その後続々と出馬表明が相次ぎ、5人もの候補が乱立するという、一転して混線模様となった。ただ、いずれの候補も「無党派」を標榜しているため、事前の調整で出馬断念に応じる可能性は少ない。このため「反田中票」の分散は必至で、相対的に有利となる田中氏の再選の流れは変わらないだろう。
その中で産経新聞前論説副委員長の花岡信昭氏(56)の出馬表明に対し、東京で発行しているある新聞が「数日前まで新聞で“正論”を張っていたメディア人の立候補は問題なしか」との疑問を投げ掛けた。結論を言えば、何も問題はないどころか、言論人が政治の現場に乗り出すことは望ましいとさえ言える。東京の本社ビルの中で半ば「机上の空論」を弄んでいるより、現場に出て行って、政治を実践した方がどれほど世の役にたつか。それを「社内的に何か問題があったのだろうか。社の大幹部とのあつれきで出世が望めなくなったとか」「落選したらどうやって暮らすのか。退職金も多いはずはないし」などと書くのは、選挙妨害以前の低レベルな「下衆(げす)の勘ぐり」というものだろう。悔しければ、この新聞社も候補者を出せばいい。
●「9月末実施」が事実上確定した内閣改造
内閣改造については何度も取り上げているが、自民党の山崎拓幹事長が7月28日、テレビ各局の討論番組などで「9月末の改造」を言明したが、小泉首相との事前打ち合わせの上での発言とみられ、これにより秋の臨時国会召集直前の内閣改造と自民党役員人事が事実上確定した。ただ同時に山崎氏は起用される閣僚について「派閥推薦は受けない」と、昨年の組閣と同様「1本釣り」の手法を首相が今回もを踏襲しようとしていることを明らかにした。首相は先に、現在の閣僚に対し、“宿題”を課すなど、構造改革への取り組み姿勢を閣僚の「条件」とする方針を示しており、“抵抗勢力”からの起用は排除するものとみられる。これに対し、最大の抵抗勢力である橋本派の青木幹雄参院幹事長が「政権発足からもう1年4カ月も経つのだから、そろそろ小泉さんも頭を冷やして考えてもらわないと」とけん制するなど、早くも改造をめぐる前哨戦が始まっている。
自民党内には「改造が今回も小幅に終わったら、どの派閥もがたがたになる。派閥に残っているのは、人事の調整機能くらいしかないのだから。もっとも小派閥の親分(山崎氏)を幹事長に据えた時点で大きな政治改革だった」(山崎派幹部)との見方もあり、今度の改造が首相の方針通りだった場合、派閥は半ば機能を喪失するとみられる。その点からして、抵抗勢力の反転攻勢が今後勢いを増すのは確実だろう。それにしても山崎氏は「小泉の下で幹事長が勤まるのは俺しかいない」と、自らの非力を棚に上げ、続投を繰り返し“宣言”しているが、本当に大丈夫か。ひょっとしたら首相は、10月の統一補選での敗北を見越して、“引責辞任用”に山崎氏を温存しているのではないかという気さえしているのだが。
(政治アナリスト 北 光一)