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銃を捨てた日本人  近代世界システムの限界を400年前に見破った日本人 投稿者 てんさい(い) 日時 2002 年 7 月 28 日 01:46:47:

(回答先: 花のお江戸の市場経済システム 投稿者 てんさい(い) 日時 2002 年 7 月 28 日 01:10:06)

近代世界システムの限界を400年前に見破った日本人
http://www.asyura.com/sora/bd19991/msg/15.html

 この記事は、「Japan on the Globe」(国際派日本人
養成講座)のサイトに掲載された記事「平和と環境保全
のモデル」を、了解を得て転載しました。


  ●過酷な近代世界システム

 21世紀の人類を脅かす二大危機は、核兵器と地球環境
危機であろう。こうした問題を考えるとき、250年間も
平和を維持し、環境保全にも成功した社会が、今、注目
を集めている。日本の江戸時代である。

 核兵器も地球環境危機も、科学技術をもって諸大陸と
自然を征服しようとしたヨーロッパ文明の鬼っ子であ
る。そのヨーロッパ文明による「近代世界システム」
が、どれほど過酷なものであったか、明治大学の入江隆
則教授は次のように描写する。

はやい話が、スペイン人が現れる前には、中央アメリカ
の推定人口は7千万人から9千万人はいたとされている
が、私がすでに書いたようにスペイン人の侵入のわずか
一世紀後には、350万人に激減している。またこれも推
定であるが、3千万人から6千万人に及ぶ黒人奴隷がアフ
リカからアメリカ大陸に連れ去られ、その三分の二が航
海途上で死亡して、大西洋に捨てられたといわれてい
る。こんなことは「近代世界システム」が始まる以前
の、どんな時代にも起こってはいない。[1,p243]

 近代世界システムに徹底的に収奪された南北アメリカ
では、先住民による独立国家は存在していない。アフリ
カは先住民の独立国家こそ、かろうじてできたが、いま
だに低開発段階にあるのは、固有の文化を破壊され、労
働力を根こそぎ奪われて、回復不可能なほどの打撃を受
けたからだ、という説がある。

  ●近代世界システムへの日本の反応

 これに対して、日本は近代世界システムに対して、独
特な反応を示した。入江教授は、日本は、戦国時代と明
治以降との2度、近代世界システムと遭遇しており、そ
の2回が以下のように相似形をなしている、と説く。[1,
p246]

 第1次・戦国時代

 1543〜 ポルトガル船が初めて日本に漂着、鉄砲伝来
  (44年間、南蛮文化を受け入れ)
 1587〜 豊臣秀吉のキリシタン禁制
  (46年間、ルソン、シャムなどとの交易活発化、朝
鮮の役)
 1633 鎖国令

 第2次・明治以降

 1853〜 ペリー来航、開国
  (41年間、西洋文明の受け入れ)
 1894〜 日清戦争
  (51年間、国際貿易と戦争で対外活動活発)
 1945 大東亜戦争敗北

 明治以降の近代史は、近代世界システムに対しての、
2度目の挑戦だったのである。

  ●ヨーロッパより進んでいた技術革新

 近代世界システムとの最初の遭遇の時から、日本人は
驚くべき適応能力を示した。1543年に種子島に最初の鉄
砲が伝えられてから一年とたたぬうちに、日本人はその
製造技術を修得し、十年もすると日本中の鉄砲鍛冶が大
量に生産を始めた。

 銃の改良自体も、ヨーロッパ以上のスピードで進み、
螺旋状の主導バネと引き金調整装置を発達させ、銃身の
破壊を防ぐ鉄鋼の製造にも成功している。

 鉄砲を使った戦法も世界一で、1573年、織田信長が武
田の騎馬武者を駆逐した長篠の戦いで見せた、3000人の
鉄砲隊を三分隊に分けて、一斉射撃を繰り返す戦法は、
基本的には第一次大戦まで通用するものだったという。
[2,p52]

 その12年後、フランスのアンリ4世が勝利を収めたク
トラの戦いで、25名の鉄砲隊を各槍隊の間に配置した程
度にすぎなかった事も見ても、鉄砲使用の規模と質にお
いて、当時の日本がいかに進んでいたかが分かる。ポル
トガル、スペインも、日本の軍事力を見て侵略を諦めざ
るをえなかった。

  ●銃を捨てた日本人

 しかし、興味深いのは、軍事先進国となった日本が、
ヨーロッパ勢力を追い出し、朝鮮の役に失敗すると、突
如鎖国し、近代世界システムから「降りて」しまった事
だ。そしてその象徴たる銃を捨て、刀剣の世界に戻って
しまう。

 1607年、徳川幕府は鉄砲鍛冶の統制を開始した。鉄砲
や火薬の産地を集中させ、鉄砲代官を置き、製造は幕府
の許可制としたのである。生産量が抑えられ、世界最先
端の技術も次第に衰退していく。

 1855年にはアメリカの軍艦が、種子島の測量を行っ
た。300年近く前に、ポルトガル人が銃を伝えた、まさ
にその場所である。艦長は次のように報告している。

      まったく驚くほかなかったのは、武
      器についての住民の無知ぶりが、例
      のないものであったことです。それ
      は未開人特有の天真爛漫さと、理想
      郷に住む人々の無邪気ぶりとを示す
      ものでした。[2,p28]

 アメリカ人の見せた銃が、かつてこの島から日本全国
に伝えられ、世界最大最先端の銃の生産国となっていっ
たとは、この艦長も、また種子島の住民自身も、知らな
かったのである。

 銃の統制だけではない。幕府は様々な戦争予防の仕組
みを作り上げ、250年間も戦争のない、人類史上希有な
幸福な時代を実現した。

 その間、近代世界システムに参加した欧米諸国、そし
てその餌食となったアジア・アフリカ地域のたどった、
戦争、飢饉、疫病、革命、収奪といった悲惨な歴史と比
較すれば、近代世界システムの限界を見破った当時の日
本人の叡智が窺われるのである。

  ●高度のリサイクル社会建設へ

 鉄砲を捨てた日本人は鎖国の中で停滞に甘んじてはい
なかった。 閉ざれた国土を最大限に生かした高度のリ
サイクル社会の建設に乗り出したのある。

 江戸時代初期は、大開発時代で新田開発、用水整備な
どにより、わずか数十年の間にコメの生産量を3倍に増
やしている。その結果、自然破壊が問題になると、幕府
は「山川掟(1666)」を出して、大雨による土砂崩れ、河
川の氾濫が起こらないよう、対策を進める。[3,p148]

 さらに糞尿や煮炊きをした後の灰など、都市の廃棄物
を農村の肥料にリサイクルするシステムを作り上げた。
これによって同時代のヨーロッパの都市などとは、比較
にならないほど、衛生的な都市生活が可能となった。

 自然保護 の面では、江戸の近隣に現在の東京23区以上
の面積が、将軍の鷹狩りの場として設定され、そこでは
無用の殺生を禁じられ、野生の鳥や動物の天国となっ
た。

 地方においても、百姓が漁業の権利を併せ持ち、森林
を保全して、山から水を安定的に流し、海岸林としての
「魚付き林」を維持した。 森林資源と漁業資源をトー
タルシステムとして保全するエコロジー思想は、現在よ
りも進んだ面を持っている。

 こうした優れた国土利用により、西洋人から見ても、
驚くべき幸福な社会が実現された。たとえば、幕末に来
日したアメリカの総領事タウンゼント・ハリスは、1858
年に、次のような記録を残している。[2,p147]

「人々はみな清潔で、食料も十分にあり、幸福そうであ
った。これまでにみたどの国にもまさる簡素さと正直さ
の黄金時代をみる思いであった」

  ●世界は江戸化する

 江戸時代の日本は、北の蝦夷地方から、南の琉球列島
まで、どんなに早い飛脚を飛ばしても、14日間を必要と
した。ところがいまやジェット機で飛べば、地球の裏側
まで半日しかかからない。つまり地球全体は、江戸時代
の日本国全体よりも、物理的にも心理的にも、はるかに
狭くなっているのだ。[3,p12]

 近代世界システムは、地球は無限大だという前提のも
とで、フロンティアに植民地を求め、地球資源を収奪し
た。しかし狭くなった地球で、その前提はもはや成り立
たない。狭い地球上で核戦争が起きれば、人類全体が死
滅し、またこれ以上の資源・エネルギーの使用は、地球
環境そのものを破壊する。

 そろそろ人類は、近代世界システムを卒業して、狭い
地球の中で、肩寄せ合いつつ、限られた資源を有効に使
って生きるすべを学ばなければならない。

 そのためにも、近代世界システムから自発的に離脱し
て、平和で自然と共生する社会を作り上げた江戸日本が
良き先例を示している。 我々日本人はその先祖の優れ
た知恵を、世界に提供する使命を持っている。

 


 

参考図書

 1. 「太平洋世界の復活(第10回)鉄砲伝来とペリー来
航」、入江隆則、VOICE1995, 10月
 2. 「鉄砲を捨てた日本人」、ノエル・ペリン、川勝
平太訳、中公文庫、1991
 3. 「日本が作る新文明」、入江隆則、講談社、1992

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