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昨年1年間の全国の自殺者は3万1042人で一昨年より2・9%(915人)減少したものの、「経済苦・生活苦」が理由とみられるケースは6845人と過去最悪だったことが、警察庁のまとめでわかった。全体の40・3%が40―50歳代。景気低迷と、それを背景にした構造改革に追いつめられる中高年サラリーマンの苦しみが数字に反映している。
年間自殺者数は、警察庁が統計を取り始めた1978年から97年までは2万―2万5000人前後を推移。しかし、98年以降は4年連続して3万1000人以上を記録している。
昨年の自殺者を動機別にみると、最多の「健康問題」(1万5131人)が一昨年比2・6%、3番目の「家庭問題」(2668人)も同3・7%、それぞれ減少したのに対し、2番目の「経済苦・生活苦」は一昨年(6838人)をわずかながら上回り、97年(3556人)の倍近くになった。
同庁が、「経済苦・生活苦」の自殺者のうち遺書を残した2872人を分析したところ、40―50歳代が63・7%(1829人)に上り、特に50歳代は41・7%(1198人)と突出して多かった。
職業別に「経済苦・生活苦」を見ると、自営業が一昨年比5%減の4149人、無職者が同2%減の1万4443人などと減少した反面、被雇用者は7307人と微増(6人増)。このうち民間企業の社員や銀行員などサラリーマンは、自殺者全体の8・9%に当たる2779人を占めた。
(7月24日19:16)
7月26日付・編集手帳
芥川竜之介が自ら命を絶ったのは、一九二七年(昭和二年)の七月二十四日である。枕もとには遺書とともに、「或(ある)旧友へ送る手記」と題する一文が残されていた◆その遺稿に、「自殺幇助(ほうじょ)罪」について所感を述べたくだりがある。「このくらゐ滑稽(こっけい)な罪名はない。若(も)しこの法律を適用すれば、どの位犯罪人の数を殖やすことであらう。…社会や法律はそれ等(ら)自身自殺幇助罪を構成してゐる」◆芥川の命日でもあった一昨日、警察庁が昨年の「自殺統計」を発表した。「経済苦・生活苦」から自殺した人は六千八百四十五人を数え、過去最多を記録したという。その六割は、リストラの波が足もとを洗う四十―五十歳代である◆自殺者数と景気の流れは、見えない糸で結ばれている。戦後の高度成長期もバブル期も、自殺者数は急減した。重症となって久しい現在のデフレ経済は、芥川流にいえば幇助罪の容疑者でもあろうか◆「物価が下がって、どこが悪い」というデフレ歓迎論を時折耳にする。大企業や官公庁に勤め、職と収入の安定した人にのみ通じる“強者の論理”も、この悲劇の数を見れば、そう気楽には口にできまい◆「ぼんやりした不安」――芥川は自殺の動機をそう記した。いまなお出口の見えないデフレがあおる暮らしへの不安は、「ぼんやり」の域を超えつつある。
(7月25日22:19)
7月26日付・読売社説(2)
[自殺三万人]「不況がもたらした社会の病理」
経済の不振、厳しい雇用環境が、人々の心にも深い影を落としているのだろうか。
昨年一年間の自殺者数が三万千四十二人に達したことが警察庁のまとめでわかった。これで四年連続の三万人突破である。
目立つのは、借金、事業不振、失業、生活苦など、経済的な問題を理由に自殺した人が七千人近くに達し、過去最悪となったことだ。四、五十代の男性が圧倒的に多いことも特徴だ。
東京圏のJRの鉄道では、年間二百件前後もの飛び込み自殺が起きている。全国の救命救急センターに運ばれる患者の5%から10%は、自殺未遂によるものだという報告もある。異常な事態だと言わざるを得ない。
自殺者数と失業者数、倒産による負債総額の推移を示すグラフは、極めて似かよっている。不況の時ほど自殺者が多いということだ。
厳しいデフレ経済のもとで、事業に行き詰まったり、職を失ったり、過酷な職場環境にあえいだりする中で、思い詰めて自殺に至る姿が想像される。
何よりもまず、政府も経済界も、この深刻な経済状況を一刻も早く改善するよう全力を挙げるべきだ。
仕事や生活上の強いストレスが原因でうつ病を患い、適切な治療を受けないまま死に走ってしまうケースも多い、と医療関係者は指摘している。
うつ病というと、特別なものと受け止められがちだ。しかし、「心の風邪」とも呼ばれているように、だれもがかかる可能性を持っている。
企業の産業医や地域の医療機関などを中心に、心の病に気づき、支援する制度を充実させなければならない。精神的危機に陥った人が、抵抗なく、気軽に相談できる仕組みを整備する必要がある。
自殺では、予兆があったにもかかわらず、家族や同僚など周囲の人が気づかないことも多いと言われる。
こうしたことが家族を苦しめるケースも少なくない。親を自殺で失った遺児の調査では、三人に一人が、なぜ親の自殺を止められなかったのか、などと悩んだ経験があるという。「どんなに苦しい生活でも一緒に暮らしていきたかった」という遺児たちの悲痛な言葉もある。
働き盛りの世代の自殺防止策については、行政の場でも、ほとんど論議されてこなかった。ようやく厚生労働省が有識者の懇談会を発足させ、秋にも提言をまとめる予定で審議中だ。
自殺に追い込まれた人や残された家族の心の痛みに、深く思いをはせた対策が求められている。
(7月26日08:54)