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【ワシントン竹川正記】
米議会上下両院は26日までに、通商交渉で大統領に強い裁量権を与え、議会に対する通商協定のファストトラック(一括承認手続き)を認める「貿易促進法案(TPA)」の一本化で合意した。上下両院での可決と、大統領の署名後、来週にはTPA法案が成立する見通し。米大統領がファストトラック権限を手にするのは94年の前クリントン政権下で権限が失効して以来8年ぶり。
ブッシュ政権はこの権限をテコに、世界貿易機関(WTO)の新ラウンド(新多角的貿易交渉)の場などで日本や欧州連合(EU)にコメも含む農業分野などの一層の市場開放を求めていく。ただ、TPA獲得のための議会懐柔策として、鉄鋼セーフガード(緊急輸入制限)を発動したほか、国内農家への補助金を大幅に積み増しする新農業法も成立させるなど、保護主義的な政策も打ち出しており、米政権のユニラテラリズム(自国中心主義)に日本や欧州連合(EU)が強く反発する事態も予想される。
上下両院の一本化では、上院が5月に可決したTPA修正法案で、反ダンピング(不当廉売)やセーフガード発動のルールの厳格化など米国の国内産業保護策を制限する条項が通商協定に含まれる場合に議会が例外的に修正できる特約の扱いが焦点だった。これは、米政府が他国と締結した通商協定について、議会に修正を認めず一括して賛否を問えるというファストトラックの趣旨から外れ、事実上、大統領権限を骨抜きにするもの。上下両院は結局、25日深夜の合意で、国内産業保護策に反する内容を含む通商交渉を展開する際は、事前にブッシュ政権が議会の意見を聞くことを条件に、この特約を削除した。また、民主党が強硬に求めていた貿易自由化に伴う国内の失業者対策の大幅拡充も実現することになった。
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■ファストトラック 米国の憲法では、通商に関する権限は議会にあるため、政府が主導権を握ろうと、74年に当時のフォード政権が米通商法により獲得した「一括承認手続き」のこと。議会は部分的な修正ができず、一括して承認するかどうかを審議する。英語のつづりはFAST・TRACKで「速く道筋をつける」といった意味。94年にクリントン政権が議会との交渉に失敗して、失効した。