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24日の東京株式市場で、日経平均株価(225種)が終値で1万円を割り込んだ。株価下落は、株式を大量に保有する金融機関の財務体質を弱体化させ、金融不安の再燃を招く恐れがある。また、消費者心理や設備投資意欲の冷え込みによって、回復の兆しを見せていた景気が再び悪化する事態も懸念される。
東京市場の株価下落に歯止めがかからない展開に、金融界では株式含み損の拡大などで銀行財務が一段と悪化し、金融システムの安定が揺らぎかねないとの懸念が強まっている。
大和総研の推計によると、24日の日経平均の終値水準で大手銀行12行の株式含み損は、今年3月期の2倍近い計2兆4598億円に上る。含み損の約6割は自己資本から差し引かなければならないため、株価低迷が続けば、経営の健全性を示す自己資本比率の低下など、大手銀行の財務内容は一段と悪化する。
大手行は自己資本比率の向上を目指して貸し出し債権の縮小を進めているが、株価下落で同比率が押し下げられれば、貸し出しの圧縮が加速し、取引先に対する貸し渋りが深刻化しかねないとの懸念も出ている。
さらに、時価会計が本格導入されたことで、保有株価が取得時より大きく値下がりした場合には、株式評価損を計上する減損処理が義務付けられている。このため9月中間決算期末に、株価が大きく下落していた場合、株式評価損が本業の利益を食いつぶし、不良債権処理の“元手”や、配当の原資が不足する銀行が出る恐れもある。そうなれば、不良債権の抜本処理をテコに日本経済の再生を図るという政府の景気回復シナリオも、大きく修正を迫られることになる。
株価下落の影響は銀行にとどまらず、大量の株式を保有する生命保険各社などの経営にも打撃を与える。今年3月期決算では、主要生保10社のうち住友、安田、三井、朝日の4社が保有株式で含み損を抱えていたが、日経平均が1万円を割った24日の株価水準では、「少なくともあと1社が含み損に転落している」(生保業界筋)という。
株式含み益の縮小や含み損の拡大は、生保の健全性を示すソルベンシーマージン(支払い余力)比率を低下させ、生保の経営を揺さぶる。市場では、銀行と資本を多く持ち合っている生保の経営が不安定になれば、連鎖的に金融システム不安が強まるとの見方もあり、金融界では今後の株価動向に神経をとがらせている。
24日の日経平均の終値9947円72銭は、今年4月1日の終値(1万1028円70銭)比で約9・8%の下落率となる。日本総合研究所の試算では、株価が年間で10%下落すると、その年度の国内総生産(GDP)伸び率に0・1ポイント、翌年度に対しては0・3ポイントの押し下げ圧力となる。同研究所は今年度の経済成長率の見通しを前年度比0・2%増としているが、4月以降の株価下落で、すでに伸び率の半分が吹き飛んだ計算になる。
同研究所の山田久・主任研究員は、「株価下落は、消費者心理に強く影響する」ことも指摘する。株安が深まることによって、消費者が将来に対する不安を強め、消費が手控えられて企業の売り上げが落ち込み、収益が悪化するという悪循環の原因になる。
底なしのようにも見えるニューヨーク市場の株価下落は、米景気の早期回復への期待に疑念を抱かせ、ドル売りを誘っている。2003年3月期に、日本企業は対米輸出の増加による増益で「V字形回復」を見込んでいるが、米経済の好転が遅れ、円高・ドル安で輸出採算が悪化すれば、収益改善の予想は「絵に描いたもち」になってしまう。加えて、国内消費が抑制されれば、とりわけ中小企業には痛手となる。
また、企業業績の好転見通しを受けて年末以降の回復が期待されていた設備投資計画にも暗雲が漂う。第一生命経済研究所の嶌峰義清・主任研究員は、「設備投資が行われなければ、本格的な景気回復は難しい」と警告する。「底入れ宣言」がなされた日本経済だが、株価下落が続けば、再生へのシナリオは修正を余儀なくされそうだ。
(7月24日23:56)