現在地 HOME > 掲示板 ★阿修羅♪ |
|
いつもはお盆に休みを取るエコノミストが今年に限って休み返上で作業に夢中。内閣府がスケジュールを守らなかったからだと聞くが一体何が起こったのか。
先週(8月12〜16日)はお盆休みウィーク。夏休みをとった読者も多いことだろう。8月15日前後のマーケットは例年、取引量が減るので、マーケット関係者も休みが取りやすい。とくにエコノミストは、8月半ばに重要な経済指標が発表されないこともあって、(数日ではあるが)休みを取る場合が多い。しかし今年に限っては、休みを取る余裕がないエコノミストが多かった。GDPの推計方法が改定されたためである。
内閣府は8月13日にGDP速報値の新しい推計方法(新推計方法)を公表し、新方法による02年4-6月のGDP速報値を8月30日に発表するとした。これまでのGDP速報値は、商品・サービスに関するデータのうち買う(需要)側だけを用いて推計していたが、新方法では売る(供給)側のデータも推計対象になる。これにより新しいGDP速報値は、これまでに比べ数値のブレが小さくなり、後に発表されるGDP確報値(速報値の修正版)との乖離も少なくなる。
本来ならば、新推計方法は7月下旬に公表され、新GDP速報値は8月上旬に発表されるはずだった。このスケジュールならばエコノミストは、8月中旬には成長率見通しの改定作業を終了させ、例年どおりお盆休みウィークに休みを取ることができた。しかし新推計方法は、GDP速報値を推計する内閣府が必死になっても終わらないほど作業量が膨大。結局、内閣府は予定通りに作業を終えることができず、新推計方法、速報値ともに公表が遅れに遅れてしまった。
統計発表もとである内閣府が予定通りに進められないほど作業が煩雑なのだから、GDP速報値を予測するエコノミストも作業に時間がかかる。特に今回は新方法を初めて使うだけに、これまで用いなかった供給側のデータを収集する必要があるなど、慣れていない分だけ苦労が多い。結果として夏休みは返上することとなる。
ただエコノミストがどれだけ苦労しようと、投資家である読者には関係のない話。むしろ注意すべきは、(1)新推計方法による02年4-6月期のGDP速報値の結果、(2)結果によるマーケットの反応、の2点だろう。
まず1点目の4-6月期のGDPは、前期比ほぼ横ばいという結果で落ち着くだろう。個人消費は、1-3月期に前期比+1.6%と大きく増加したが、これは1-3月期のもととなる旧推計方法が需要側データだけを利用しているため。新方法では+0.5%程度に下方修正される可能性が高く、4-6月期も前期比+0〜0.3%程度の微増で終わると予想する。設備投資は前期比若干のマイナス。公共投資も1-3月期にプラスに転じた反動から5%前後のマイナスになる見込み。外需は、生産の回復を背景に輸入が増加するが、輸出が堅調を維持しているためGDPを0.3〜0.5%程度押し上げるだろう。
2点目のマーケットの反応はどうだろうか。マーケットが大きく動くとすれば、設備投資がマーケットコンセンサスよりも下振れした場合。関連指標はすでに設備投資が今年の秋口頃から回復に転じることを示している。しかし4-6月期の設備投資が予想以上に大きく下振れした場合、マーケットはネガティブな反応を示すだろう。また夏のボーナスが低調に終わっただけに、個人消費も油断ができない。所得の減少だけでなくマインドの低下が個人消費を下押しするリスクも頭に入れておいてもいいだろう。
とはいえ、マーケットは今回のGDP発表をさほど材料視していない。なぜなら今回の速報値の公表時期は、スケジュールの遅れから従来と変わりがないほか、9月上旬頃にはまたGDPが改定される見通しだからだ。結局、エコノミストの苦労だけが残ることになる。たが、これはいつもと同じこと。気にすることはないだろう。
マーケットエコノミスト 秋新作
提供:株式会社FP総研