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最近、銀行が外貨預金や投資信託のキャンペーンを活発に展開し、薦めているのを目にします。どうして今、銀行はこうした商品の販売に力を入れているのでしょうか?
「子どものサッカー留学のために、資産づくりを」・・・最近、TVでよく見かける三井住友銀行のCMです。このCMが薦めているのは資産づくりセット。これは、外貨預金の利用もしくは投資信託の購入を行うと、定期預金の金利が1%になるというもの。同じような定期預金と運用商品のセット販売は、みずほ銀行や横浜銀行等も行っています。もちろん、外貨預金や投資信託単体でも、多くの銀行で活発なキャンペーンが展開されています。
少し前まで、銀行のキャンペーンと言えば、新社会人向けの新規口座開設キャンペーンや、ボーナスシーズンの定期預金獲得キャンペーンがほとんどでした。なぜ今、運用商品のキャンペーンが活発に行われているのでしょうか。
銀行のリテール(個人向け)業務の収益源は、主として3つに分類されます。1つは、資金運用収益。これは普通預金や定期預金を個人顧客から獲得し、集めた資金を市場で運用して収益を得ることです。もう1つは金利収入。住宅ローンやカードローンなど、個人顧客に貸付を行い、金利を得るものです。最後が手数料収入。これは、最初に述べた外貨預金や投資信託を扱うことによって、個人顧客から手数料を受け取るものです。
以前は、資金運用は大きな収益源でした。この資金運用収益は、単純に言ってしまえば、市場運用金利から個人顧客への提供金利(普通預金や定期預金の金利のことです)を差し引いたものになります。
ところが、10年以上続いた異常な低金利の下、高い利回りで市場運用を行うことが非常に難しくなりました。預金金利が限りなく0%に近い数字になっても、引き算の母数である市場運用金利がそれ以上に低いため、資金運用はいまや収益源と呼べなくなりつつあります。
そこで、銀行が注目したのが金利収入、特に住宅ローンでした。住宅ローンは個人顧客対象の商品としては金額が非常に大きい上、安定した金利収入が長期間見込めるため、銀行にとってはたいへん「おいしい」商品です。
しかし、ほぼ同じ時期にほとんどの銀行が同じことを考えたため、数年前から住宅ローンは多くの銀行がしのぎを削る、激戦区になってしまいました。市場の低金利が常態化していること、住宅着工件数が年々低下し、そもそもの市場が縮小傾向にあるのも追い討ちをかけ、住宅ローンの金利は下がりに下がっています。少し前になりますが、ついに東京三菱銀行が「3年間実質金利負担0」という商品を発売して、住宅ローンもここまできたか、という思いを持ちました。
当然のことながら、今まで潤沢な金利収入をもたらしてくれた住宅ローンも、収益率が下がっています。競争も激化し、顧客を確保するのも難しくなっています。
このような状況下、現在注目が集まっているのが、第3の収益源である手数料収入です。この収益源には前の2つにはない、大きな特徴があります。それは、「顧客がリスクを負う」ということです。外貨預金や投資信託は運用商品であり、元本が保証されているものではありません。一方、銀行は顧客が外貨預金を利用したり、投資信託を購入したりすると、自動的に手数料が入ってきます。顧客が得をしようと損をしようと、収入には直接影響しません。つまり、銀行自身はリスクを負わず、確実に収入を得ることができるのです。
こういった条件が揃い、今、銀行は運用商品を強力に薦めています。確かに100万円を1年間預けても、数百円しか利子のつかない現在、うまくすれば高い収益を上げられる運用商品には大きな魅力があります。慣れ親しんだ定期預金とのセットだと、気軽にはじめてみようかな・・・そんな気分にもなるでしょう。
ですが、運用商品のリターンには、常にリスクがあるのを忘れてはいけません。軽い気持ちではじめてみたら、思わぬ元本割れで後悔・・・そんな可能性だってあります。
確かに、多くの銀行がキャンペーンを繰り広げているため、今は運用を始めやすい時期ではあります。自分の頭でじっくり考えて、銀行をうまく使いましょう。決して、銀行にいいように使われないように。
里見 唯
提供:株式会社FP総研