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お盆休暇明けとともに、東京株式市場は通常通りの商いをこなし始めた。9月中間期末が近づき、金融法人からの持ち合い解消売りという“季節要因”も浮上して相場の頭を抑える時期となる。またぞろ筆者・相場英雄がいつもの悲観論を唱えだしたと、とらえないでいただきたい。
前期決算はなんとか乗り切ったものの、日本の金融システムは依然脆弱なままだ。金融危機の足音は着実に忍び寄っている。ここにきて、大手メディアから様々な金融安定化スキームが伝えられている。が、賢明な読者ならお気づきと思うが、はっきり言ってどれも抜本解決にはつながらない。
●政策転換は「危機対応そのもの」
先に政府は、来年4月に予定されるペイオフ(預金の払戻保証額を元本1000万円とその利子までとする措置)について、「決済性預金」を新設し、全面解禁の方針を見直すことを決めた。これは見直しではなく、政策転換そのものである。または「危機対応そのもの」(大手銀行幹部)と置き換えることもできる。
加えて、地域金融機関の合併促進で公的資金の弾力的な注入方針も打ち出した。当欄で様々なライターが執筆したリポートを丹念に拾っている読者ならば、この対象が「地域金融機関」で収まるとみている方は少ないはずだ。「大手銀行で公的資金を入れなければもはやもたないところが出ている」(同)ことは明白。政府は事前に地ならしを始めているのだ。
●9月からは“臨戦態勢”
「主要なスタッフには、8月いっぱいで確実に夏休みを消化するよう厳しく指示した」―。こう語るのは、ある大手銀行の役員だ。理由は簡単である。「9月中間決算期末を控え、金融システムのほころびが再び大きくなりそう」なためだ。つまり、大手金融機関の大半が主要スタッフを危機対応のために臨戦態勢に置くというのだ。
外部環境を考えてほしい。平均株価は1万円の大台を割り込んだままであり、大手行のほとんどが前期末よりも株式含み損を拡大させている。米国経済の力強い回復期待が途切れた今、主要日本企業の外需主導の業績回復も望めない。株式含み損がこれ以上増えないという保証はひとつもない。
更に複数の大手行は資本準備金にまで手を付けた状態である。「収入が100万円もある家庭で、虎の子の定期預金にも手をつけて過大な住宅ローンを払い続けている状態」(別の大手行役員)なのだ。すでに一部経営難にあえぐ大手金融法人は、水面下で金融当局幹部との折衝を続けている。この接触が何を意味するかは、読者の判断におまかせする。
●“大本営”報道に気をつけよう
18日、一部報道で政府が「新決済性預金」の一斉導入を要請すると伝えられた。この新型預金を導入した銀行が「危ない」との風評にさらされぬように、というのが報道のミソだ。
ちょっと待ってほしい。これでは大手行に1回目の公的資金を注入した際の構図と何も変わらないではないか。これを伝えた大手メディアはこの切り口から“要請”の持つ意味合いを分析していない。大本営発表に近い意図的な情報提供を受けているから当然でもあるが、今後この種の報道が増加するのは確実だ。次は整理回収機構(RCC)の不良債権の買取価格が「時価」ではなく、「簿価」に限りなく近づく、などの見出しが躍るだろう。
大手マスコミといえどもサラリーマン記者の集まり。大見出しとともに抜かれたネタは、意地でも抜き返さなければならない。筆者の過去の経験から言うと、情報を流す側からみると、こんなにおいしい局面はないのである。「記者が大口を開けてネタに飛びついてくるダボはぜ状態になる」(金融当局OB)からだ。金融危機懸念の高まりとともに、大本営報道にも十分注意を払う必要がある。
(当欄の前身である「FINANCE Watch」当時から、読者の皆さまには大変お世話になりました。小生・相場英雄の正体をご存知の方からお褒めにあずかった機会もありましたが、他のネット上で「手抜き原稿を書いている」と厳しいご批判を受けたことも多々ありました。一貫して株式市場を取り巻く内輪ネタ、当局モノを書いて参りましたが、ながきに渡って当欄で書かせていただけたのは読者の皆さまのご支援があってのことと感謝しております。また別の機会でお会いできることを楽しみにしております・・・筆者敬白)
(相場 英雄)
・「金融再生最前線」〜2つの火種がくすぶる2002年夏<上>
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200208/19/20020819093512_32.shtml
・「金融再生最前線」〜2つの火種がくすぶる2002年夏<下>
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200208/20/20020820093504_69.shtml