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“クイック・フィックス(応急措置)”☆☆☆◆SUMITOMO GOLD NEWS 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 8 月 19 日 20:21:30:

米国関連で注目の1週間が終わった。
まず金融政策の方向を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)が8月13日に開催され、政策金利(「FFレート」と呼ばれる金融機関の間での資金融通の際のレートで誘導目標を示す、および「公定歩合」)は、据え置かれた(FFレート1.75%、公定歩合1.25%)。
一方、当面の政策スタンスは、「中立型」から「景気配慮型」へと変更された。これはFRB(米連邦準備理事会)が、景気の下振れを警戒していることを表し、状況により金利の引き下げ(金融緩和)を実施する用意のあることを示している。
ポイントは、今回の政策スタンスの変更が、グリーンスパンFRB議長が7月16日の議会証言(上院銀行都市住宅委員会)で示した強気の見通しを実質上変更したことを意味する点である。その時は、米国経済は「持続的で健全な成長に戻りつつある」とし、「経済見通しや株価、新たなテロなどへの懸念はあるものの、個人消費は収縮しているようには見えない」としていた。「変更」は、株価下落の米国経済への影響が無視できない範囲に広がり始めている証しと受け止めていいだろう。
ところで今回のFOMCに関しては、事前に大手証券のいくつかが「利下げの方向」との見通しを流すなど、マーケットの一部に利下げへの期待が高まっていた。
考えてみれば、ほんの数ヵ月前の春先には、「早ければ夏、遅くても年内には利上げ」との見通しが支配的だったのである。当時からそうした楽観論に組していなかった筆者は、そうした意見が大勢を占める状況には正直言って戸惑いを感じていた。このあたりは、「号」をあらため詳述することにして、さらなる利下げを迫られる環境にあって、利下げ余地が限られるという状況は、その実施のタイミングを測る上で難しい判断を迫られるということだが、すでに足元でそうした局面に入っていることを表すものといえる(参照:2001年12月28日配信号http://www.sumitomo-gold.com/cgi-bin/request/bn_disp.cgi?n=104&aid=o 背水の陣を敷くFRB)。
ただ、FRBの政策目標は、株価水準を対象にはしていないことは明らかであり、株価が急落するなかで利下げ期待が高まれば高まるほど、逆に利下げは実施しにくくなるのも事実であろう。
さて、もうひとつの先週の注目イベントが、8月14日が締め切り日となっていた「決算報告書の正確性に対する宣誓書」の提出だった。
報道されているように米証券取引委員会(SEC)が、企業の最高経営責任者(CEO)および最高財務責任者(CFO)に決算の正確性につき宣誓を求め、それにより一連の不正会計によるマーケットの疑心暗鬼を払拭しようとしているものである。最初の提出期限となった8月14日を混乱なく通過したことで、まずは一区切りということでNY株式市場は落ち着きを取り戻しつつある。米政府サイドは、今回対象企業を年間売上高が12億jを越す企業(該当企業942社)に限定していたものを、さらに拡大する方針とも伝えられている。いつもながら米国政府の対応の早さには、驚くばかりである(それだけ事態が急を要したとも言えるが)。
果たして、これで一件落着となるのか。
答えは「否」と思う。まだ大きな問題が隠れているのではないだろうか。少なくともそう思わせる要素がある。
まず、今回の対象企業の枠組みでは、“海外のタックスヘブン(租税回避地)に本社を置く米国企業” は除外されている。(「論点の構成」に欠ける要素のある可能性を恐れずに話を進めると)タックスヘイブンというと、取引に関する課税が免除されたり、各種運用上の規制がゆるいことから、ヘッジファンドはじめ90年代の金融取引では脚光を浴びた場所である。多くの不明瞭な取引も指摘されてきた。複雑を極めるものが多くある「デリバティブ」からみの取引でも、その舞台として登場するのがケイマンなどタックスヘイブンである。そこを対象外にしたということは、デリバティブ関連の取引にふたをしてしまったことにはならないのか。日本と異なり金融の中心に銀行がすわらない米国(直接金融)では、リスクは個人にしろ法人にしろ投資家が取る。デリバティブ取引は、そのリスクを誰かに転嫁することで成り立っているわけで、ならばそのリスクを取った(リスクを飛ばされた)投資家の状況は、株価急落のなかでどうなっているのか。この先、デリバティブ関連の問題が浮上して、思わぬ企業が危機の矢面に立つことはないのか。
また今回の誓約書は、“To the best of my knowledge(私が知る限りにおいて)”で始まることから、責任逃れの道が残されたと指摘されている。例えばエンロン問題は、子会社を巡る不明瞭な金融取引が焦点となっているが、誰がそれをすべて把握していたのかが問われている。デリバティブ取引では、一部の専門家が状況を把握しているものの、経営トップが知識不足もあり、リスクを認識しておらず、問題を知ったときは手遅れで破綻に至るという事例も多かった。そうした際には、“把握していなかった”で済んでしまう可能性はないか。
こうした状況を考えると、今回の時限的措置は、株価急落に慌てた米政府当局がとった“緊急避難”とでもいうべきもので、「応急措置」という意味合いの濃い対応と思われるのである。今後の適応範囲の拡大にもよるが、問題は先送りされた感は否めない。今後何か問題が発覚すると金融市場を揺るがす事態となり、「信用リスク」上昇から金が買われるということになりそうだ。(8月19日記)
金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎

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