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先週開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では利下げが見送りに。しかし景気見通しは「中立」から「弱め」に変更され、利下げの可能性を示唆。米国民にも影響を与える今後の金利の動向は?
■ 8/13のFOMCでは利下げ見送り
8月13日(火)に開催された定例のFOMC(連邦公開市場委員会)では利下げが見送られました。6月終わりのワールドコム・ショック以来の株式市場の下落がかなりきつかったことから「利下げ待望論」が根強くあったものの、その期待は裏切られた結果となりました。株式市場も失望したようで、この日はNYダウ平均が−2.3%、ナスダック指数が−2.8%とともに下落しました。しかしこれは8月5日(月)以来一週間の上昇が8%程度と順調に上がっていたことの反動だとも言えますので、それほど気にする必要はないでしょう。利下げがなかったことによってこの先再び市場に対する不安が増大し、下落が始まるという雰囲気ではありません。
■ グリーンスパン議長は迷っている?
利下げは見送られましたが「景気見通し」は「中立」から「弱め」に変更されましたので、将来の利下げの可能性を示唆したと市場では受け止められています。FOMCの声明を見てみましょう。まず、景気に対する認識は「今春からGDPの伸びが鈍化してきたが、そこに企業会計の問題をめぐる著しい不確実性が発生したことにより、それが大幅に長期化してきた」としています。金融政策については「現行の緩和的な政策は、力強い生産性向上が基調として依然として存在することもあり、今後経済環境を改善させていくのに十分だといえる」。しかしながら「リスクは主として景気の弱さを生じさせかねない方向に傾いている」。
筆者なりに解釈してみると、「今、金利を下げる必要はないが、将来的には(逆資産効果発生という)リスクがあるので、景気見通しを弱めに変更する」ということだと思います。しかしながら「長期的には生産性向上が続いている」というところから楽観論も見て取れます。グリーンスパン議長は、長期的には基本的に楽観姿勢なのでしょうが、最近の株安が景気に与える影響を無視できず、リスクを警戒する態勢に入ったというところなのではないでしょうか。
■ 長期金利低下が経済を下支え
今回、短期金利は据え置かれましたが、昨年1年間のうちに6.5%から1.75%まで4.75%も引き下げられていることを忘れてはいけません。また、長期金利は利下げ見送りが伝えられた後でも低下し、現在10年国債利回りは4.05%と国債の定期発行が始まった1976年以来最低の利回りに達しています。こうした長期金利の低下が実体経済に与える影響は、短期金利以上に大きいものがあります。
最も大きいのは「住宅ローンの借換え」です。日本では、銀行の広告で金利が下がったのを知り、今借りているローンの金利が高いのでもっと安い金利のローンに切り替えたいと思っても、銀行が渋ったり、借換えの手数料が不当に高かったり、手続きが煩雑であったりと色々な理由からできないことが多いのが実状ですが、米国の場合はほとんど全員しているのではないかと思うほど借換えが一般的です。住宅ローンを借り替えた場合毎月の返済額が減りますので、可処分所得が増えます。例えば、20万ドル(約2,400万円)を30年ローンで借りている場合、金利が8%から6%に下がると月々の返済額は元利均等払いの場合、約18万円から15万円へと3万円少なくなるのです。
このように米国のような貯蓄よりも負債の方が多いような国にとっては、金利低下は明らかに景気にプラスです。また、住宅ローン金利が下がることにより、新たに家を建てる人も増えますので、家具や家電等の住宅関連消費も増えます。つまり、この先利下げがなくても長期金利が下がっていけば、「金利低下の効果」は続くことになるのです。
■ 「実質金利」がどうなるかに大注目!
しかし、読者の皆様の中で住宅ローンを抱えていらっしゃる方にとっては、上記の「2400万円に対して月々15万円の返済」は多すぎると感じられるのではないでしょうか?日本の場合は金利がだいたい3.5%くらいですの10万円強くらいでしょう。どうして、米国の方が返済が多くなるのでしょうか?米国民の方が日本人より所得が多いからでしょうか?違います。米国の方が「将来収入が増える可能性が高い」からです。
日本は今100%自信を持って「デフレ」の状態だといえます。このため、将来的にもデフレが続き収入も伸びないことが金利に織り込まれているのです。それに対して、米国は相当下がってきたとはいえ、まだ「デフレ」状態にまでなることは織り込まれておらず、将来的にも物価とともに所得が伸びていくことが織り込まれています。
ですから、米国民の方が現時点では負担が大きくても、所得が現在想定される以上に伸びれば今後30年間月々の返済が15万円で済むというのは日本人以上にお得なことかもしれないのです。反対に日本人にとっては、仮に住宅の値段がもっと下がるようなことになれば、月々10万円でも高すぎるということになります。したがって、ただ単に金利を見るのではなく「実質金利=名目金利―物価の伸び」を見ることが重要になります。日本の場合は、この「物価の伸び」がマイナスですので、実質金利は表面上見える金利水準よりも高いのです。
米国の実質金利はどうなるのでしょうか?物価の伸びは仮に景気が持ち直してもこれからますます下がっていくと思われます。したがって、名目金利が下がらなければ実質金利は自動的に上がっていきます。物価の下落は国民にとって負担の増加となるのです。日本を襲っているデフレの恐怖が米国にも発生しかねない状況になってきました。長期金利が順調に下がらなければ株式市場は一段安の可能性が高まるでしょう。
提供:株式会社FP総研