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もともと激しい論争の末、確固とした自信もなく合意された仲間同士の約束事である。
それでも、歴史的な、共同実験を成功させるためには、不可欠の取り決めだ。
欧州連合(EU)の十二か国が参加する単一通貨「ユーロ」の順調な成長を支えるために決められた財政安定化・成長協定のことである。各国政府が、国家予算の財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以内に抑え、違反国には制裁金を科すという内容だ。
この共通ルールはユーロの国際的信認を高めるための基準だが、ポルトガルがその違反第一号として指名される事態となった。EU内では貧しい国の一つであり、驚くべきことでもない。しかし、決して座視できない危険信号である。
EU委員会が調査に乗り出し、是正措置を求める手続きを開始したのも、ルールはないがしろにできない、との強い決意からだ。その立場にだれも異論を唱えることはできないだろう。
とはいえ、事は、手順通り運べば済むほど簡単ではない。参加国には明白な経済格差があり、台所事情も違う。
それらを無視して巨額の罰金を科すことは妥当か。対象国の社会混乱を招き、仲間同士のけんかを誘発することにならないか。結束にひびが入れば、対外的信用を失うことにもなる。対応にはそんな悩ましさが付きまとう。
ただ、ポルトガル経済は、規模が小さく、波紋が大きく広がることはない。EUが頭を痛めているのは、もっと深刻な事態が予想されているからだ。
ドイツの今年度の財政赤字が基準を超える可能性が高まっているほか、フランスやイタリアも財政の柔軟運営を主張し始めている。この三か国のGDP総額はユーロ圏の七割を占める。
とりわけ、EUの盟主であり、ユーロのけん引役でもある独仏両国の動向から目を離せない。ドイツは予想以上の税収減が濃厚になっている。加えて、来月に総選挙を控え財布のひもを締める政策を打ち出しにくい状況にある。
それでなくとも、ユーロ圏の今年の経済成長は、事前予測を下回り、1%前後と見込まれている。こうした流れは、どの国も、「明日はわが身か」の心配を抱えていることを示している。
欧州の復権を目指し、世界の基軸通貨ドルに挑戦して登場したユーロは、低迷状態を脱し、いま念願の対ドル等価に近い水準にある。参加国が独自の金融政策をとれない以上、この基調を再び逆転させないためには、やはり財政規律を守ることが必要だ。
(8月18日22:33)