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円相場が「防衛ライン」とされる1ドル=115円台に海外市場で再び突入するなか、日本の通貨当局の孤立ぶりが一段と鮮明になっている。単独介入の効果は限定的で、失敗のリスクも伴う半面、傍観の姿勢を示せば円高に弾みがつくジレンマを抱え、米国の経済と市場に対する不安感が落ち着くのを願うしかないとの悲観論が強まっている。
市場が115円台を一つの節目と見ているのは、国内企業が輸出採算を維持できるギリギリのラインとされるから。また、輸出企業は既に手にしたドルの価値が一段と下がるのを恐れ、115円台になると、早く手持ちのドルを円に替えようと、ドル売る動きが加速する可能性が高い。心理的な壁になっていた昨年9月の米同時多発テロ後の最高値(115円80銭)をあっさり更新したことも、ドル売りに拍車をかける懸念もある。
急激な円高は、輸出主導の景気回復局面にある日本経済に致命的なダメージを与え、輸入物価の下落を通じてデフレ圧力を高める。市場の一部には「政府・日銀は無制限で円売り・ドル買い介入すべきだ」との声も出始めている。他方、「単独で介入しても効果は続かない。(介入によって高くなった)ドルの絶好の売り場を提供するだけ」(外資系証券)との指摘もある。
今回の円高の背景は、米国経済の変調と企業会計不信に端を発した「ドルの独歩安」。日本政府は、米欧当局との協調介入を望むが、今のところ実現の可能性は低い。
みずほ証券の上野泰也チーフ・マーケット・エコノミストは、米国株式市場から逃げた資金が米債券市場に流れ、ドル・株・債券のトリプル安には至っていないことなどから「米国は焦っておらず、欧州も1ユーロ=1ドルの等価回復までは歓迎する姿勢。協調介入の早期実現は困難」と指摘する。効果が薄くても単独介入に踏み切るべきかどうか、日本政府は対応に苦慮しそうだ。 【吉原宏樹】
[毎日新聞7月16日] ( 2002-07-16-21:51 )