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▼円相場/日本経済の実力から、実質実効円レートはやはり割高
BNPパリバ証券会社・経済調査部チ−フ・エコノミストの河野龍太郎さんは、竹中平蔵経済財政担当相が7月11日の記者会見で、円高が日本経済に与えるマイナスの影 響について「一部に誤解というか、過大評価があると認識している」との発言を受けて、こう語る。「マクロ経済にとって最も重要な為替レ ートは特定通貨に対する名目ベースの円レートではなく、貿易で加重平均し、さらに物価 調整を施した『実質実効為替レート』である」。世間の過大評価の根拠として竹中大臣は、(1)円はドル以外の他通貨で見て増価しているわけで はないため、実効レート(貿易で加重平均した名目為替レート)で見ればドル円レートで 見るほど円高が進んでいるわけではないこと、(2)日本はデフレであるため、実質為替レ ート(物価調整を行った為替レート)で見ると名目為替レートほどには円高になっていな いこと、の二つを掲げた。
<デフレ圧力増大につながる円高はわずかでも容認せず> 確かに名目ベースで見た過去3ヶ月の対ドルでの円レートの増価率と比べると、実質実効円レートの増価率は竹中大臣の指摘するように3分の1ぐらいになる。しかし、(1)デフレ が総需要の回復に悪影響を及ぼしていること、(2)デフレを吸収するための伝統的な金融政策が限界に達していること、などを考えると、「デフレ圧力の増大につながる円高はわず かであっても容認すべきではない」として、「円高を放置しても問題はない、という理由は全く見当 たらない」と言う。
<現在の実質実効円レートは、絶好調だった80年代末と同水準> 実際のところ、実質実効円レートは「日本経済の実力から判断すると、かなり割高である」と見る。日本経済の実力というと極めて曖昧だが、例えば円高が進んだ4月以降、日本経済のフ ァンダメンタルズを反映していると考えられる株価は下落が続いている。長期で見ても 、現在の実質実効円レートは、日本経済が絶好調にあった80年代末の水準とほとんど変ら ない。「株価は89年末に比べると4分の1になったが、実質実効円レートはその当時の水準と ほとんど変っていない」のである。
<日米間の非対称性が 日本のデフレの遠因> 現在の円高の原因は米国経済にあり、円高というよりドル安であるから仕方ない、といっ た意見も聞かれる。確かに、米国では景気見通しが悪化するとドル安となり、ドル安が景 気縮小圧力を吸収するが、日本ではそうなっていない。90年代の日本の景気低迷局面では実質実効円レートは円安方向に進まず、むしろ円高が進んだ。「こうした日米間の非対称性が 日本のデフレの遠因になっていることを政策当局者は認識しているのであろうか」と疑問を呈す。デフレ がもたらす害悪が問題だと考えるのであれば、わずかな円高でも容認するような態度を見 せるべきではない、と言う。
<デフレが進む形で、実質円レートの調整が進むことを懸念すべき> 大幅な需給ギャップが続く中で、名目為替レートが円高水準に放置されると、結局はデフ レが進む形で実質為替レートの調整が進む。「名目為替レートが円高になってもデフレが あるから実質円レートの増価が限られる」と捉えるのは妥当ではない。こうした発言は 「円高が進むと、さらにデフレが進むが、(デフレのおかげで)実質円レートの増価が限 られるから問題は小さい」と発言しているように聞こえてしまう、と言う。結局、これではデフレ 容認論と変らない。「名目為替レートが円高で放置されると、最終的にはデフレが進む形 で、実質円レートの調整が進む」ことを懸念すべきだと主張する。