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小売りや外食などの消費者関連業界では、長期化するデフレ下での生き残り競争が激しさを増している。「モノの値段は下げ止まった」との見方が出始めているものの、価格と品質に対する消費者の選別は依然として厳しく、売り上げを確保するには付加価値の拡大が欠かせないためだ。円高進行でデフレ圧力が増幅する中、価格戦略の成否が企業業績の動向を一段と左右しそうだ。
8月5日からハンバーガーを過去最低の59円に値下げすると発表した日本マクドナルド<2702>では、2月の値上げ後も既存店売上高の低迷が続いた。今回の再値下げは、価格アップが引き起こした消費者離れを食い止めるのが目的だ。同社では「最近の円高による輸入コストの低下が値下げの背景ではないが、追い風になった」(広報部)と説明、前年を上回る既存店売上高を目指す。
しかし、業界関係者からは「今回は前回ほどうまくいかないのではないか」(レストランチェーン)との指摘も聞かれる。マクドナルドの価格戦略について、ある大手スーパーの販売担当者は、「まったく同じ商品の値段を上げた時点で判断を誤った。それを同じまま再び値下げしても、消費者へのインパクトは乏しいのではないか」と厳しい見方を示す。
<デフレ対応の価格戦略で客単価アップ>
消費者の価格選好が強まる中で、ワタミフードサービス<7522>は今年4月のメニュー改変で、単価を下げずに付加価値を上げる試みを始めた。自社農場を活用し、低コストでの原料調達に取り組み、有機野菜を使ったメニューを増やしたうえで価格は据え置いた。
同社はデフレ下で顧客による「価格と品質の選別が厳しくなっている」(広報部)と分析する。一連の取り組みが奏功し、4─6月の平均客単価は前年同期比0.1%増となった。販売動向を見る限り、「デフレスパイラルは沈静化の方向ではないか」(同)という。
しかし、デフレ対応の価格戦略がすべての企業で成功しているわけではない。ファミリーレストランで高級感を売り物にするロイヤル<8179>の1−6月の客単価は前年比4%減。「デフレはまだ続いていると考えている。相当しんどい状況。もともとロイヤルは高級感のある店で、そんなに安くできない」と苦悩する。同社では、単価を下げるのではなく付加価値を上げることを目指しているが、「今のところ、その取り組みの効果が出ているとは言い難い」という。
家電業界では、オーディオやビデオ、TVなどのAV機器は特に価格低下が激しい。「日本メーカーが、(コストの安い)海外生産比率を上げているのが大きな理由」(松下電器産業<6752>の広報担当者)で、「高い利益を出すために常にコスト削減が必要](東芝)という状況が続いている。グローバル展開で繊維・化学品を提供するクラレ<3405>の和久井社長は、「日本での価格下落は(世界レベルでの)価格の標準化が起こっている。高コストの体質の是正で対応するしかない」と指摘する。
<一部には業績改善の兆し、先行きには慎重な見方も>
スーパー、コンビニをはじめとする小売業界の一部では、単価の下落が続く中、来店客数の増加が買い上げ点数の増加につながり、既存店の売上高にはプラス効果が出始めた。イトーヨーカ堂<8264>では7月の客単価が「数年ぶりに前年比トントンくらいで推移している」といい、コンビニのファミリーマート<8028>は6月の客単価が1.6%増とプラスに転じた。
しかし、「店頭ではデフレが続いている」(イオン<8267>)との見方も根強い。景気の回復感が広がる中でデフレ圧力の緩和を予想する見方もあるが、HSBC証券のピーター・モーガン氏はマクドナルドの再値下げを例に出し、「消費者はまだデフレ志向ということだろうか」と指摘。小売り業界を中心に消費者の価格選好が依然として強い現状では、「政府が仮にデフレの終息を宣言しても、まだ慎重に様子を見る必要がありそうだ」としている。