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米通信大手ワールドコムの不正経理発覚に端を発した企業会計不信は、米国だけでなく同国の会計制度にならった欧州諸国の主要企業へも波及している。これ自体非常に深刻な問題であることは間違いないが、実は、並行して進んでいるもうひとつの「不信」への関心は薄い。アルゼンチンが震源地となっている南米全体の経済不安だ。経済危機の発生で暴徒化したアルゼンチン大衆の映像は記憶に新しいところだが、これに似た事態が急速に広がりを見せていることはあまり知られていない。
●アナリストの警鐘にメディア踊らず
金融市場ではエコノミストやストラテジスト、信用リスクをウオッチするクレジットアナリストが、アルゼンチンから広がりを見せている南米の経済不安に活発に警告を発している。ただ、こうした切迫した様子が一般メディアに取り上げられる機会は極端に少ない。7月初旬、日経新聞が分析記事を掲載した程度だ。
メディアの関心がなぜ薄いか―。理由は明白である。ワールドコム型の経理不正の方がよりスキャンダラスであり、横方向への広がりが確実視されるためだ。更に、米国では企業トップが相次いで議会に召還されるなど、メディア業界でいうところの“画になる題材”がごろごろしていることも南米危機への関心をそらしている側面がある。
●“南米のスイス”も陥落
6月下旬、金融市場関係者を驚愕させるニュースが飛び込んだ。経済危機に直面する国々が圧倒的に多い南米諸国の中で、唯一経済運営が安定、“南米のスイス”とも称されてきたウルグアイがアルゼンチン・ペソの下落に連れる形で変動相場制への移行を強いられたのだ。
加えて波紋が南米の大国ブラジルにも波及。同国通貨のレアルも今春の1ドル=2.2レアルから3レアルをうかがう水準に急落。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス(MDY)が6月20日に同月2度目となる格付け見通しの引き下げに動き、事態は深刻化の一途をたどった。国際通貨基金(IMF)は同国へのサポートを表明したが、「対外債務の履行に急速に不安感が台頭した」(大手シンクタンク)のは間違いない。
●他のエマージング諸国に資金流れず
通常、特定地域が経済危機に見舞われた状況では、国際的な資金は他地域に移動する。この場合なら、中南米新興国を離れた資金がアジアや東欧など他エマージング諸国に移るのが定石だ。
ただ今回は、このパターンも当てはまっていない。アジアではフィリピンを筆頭に社債と国債との利回り格差を示すクレジット・スプレッドが急拡大する兆しをみせているほか、欧州地域に目を向けても、首相の健康不安から経済不安が再燃しているトルコも揺れているため、海外投資家の多くがエマージング向けのポートフォリオについて、キャッシュポジションの積み上げでしのいでいる状態だ。一連の不安心理は、エマージング諸国向け債権の多い欧米金融機関への懸念につながり、「会計不信と相まって世界的なクレジット・クランチ(信用収縮)を呼び起こしそうな気配がある」(銀行系証券ストラテジスト)というのだ。
画にならないといって主要メディアが取り上げていないエマージング危機―。新聞・雑誌でいわゆるベタ記事となっている外電、通信社電などで、相当神経質にフォローする必要があるのではないか。
(相場 英雄)
・日本への資金流入期待は幻想に〜止まらない円急騰と米株急落
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200207/11/20020711143520_66.shtml