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「ITビジネスの寵児(ちょうじ)」孫正義氏(44)率いるソフトバンク帝国の迷走ぶりが際立つ。平成14年3月期連結決算は創業以来初の最終赤字に転落し、往時は20兆円にも達した同社株の時価総額は、ネットバブル崩壊に伴い、2年余りで40分の1に急降下した。最近は「保有株式の売却で食いつなぐ状態」(外資アナリスト)とされ、あおぞら銀行株の売却問題で激しい突き上げを食っている。孫帝国が迷走の末に行き着く先は…。
ソフトバンクは、成長が見込まれるネット関連企業などに投資し、投資先の株式公開や業績拡大によって、自らの企業価値を高める経営戦略で急成長してきた。
だが、ネットバブル崩壊で保有株が値崩れし、戦略に狂いが生じる。
ブロードバンド(高速大容量通信)事業に活路を見いだそうとしたが、NTT局舎への設備設置など先行投資がかさみ、14年3月期連結決算では888億円もの最終赤字を初計上した。
その間、ソフトバンクの株価も急降下。ピーク時の12年2月、19万8000円もの高値を付けたが、最近は1600円前後で推移する。
「途中、1株を3株にする株式分割があったことを考慮しても、約40分の1にまで下げた」(金融担当アナリスト)
株価に発行済み株式数をかけ合わせた時価総額も、ピーク時はトヨタ自動車を上回る20兆円に達したが、今は5000億円強に目減りしている。
抱える有利子負債は3月末現在、3656億円。1年前より480億円ほど減っているものの、「経営体力は衰えてきている」(外資系証券アナリスト)というのが市場の見立てだ。
借金の中でも、特に重くのしかかってくるのが社債である。
「19年までの6年間で毎年100億強−500億円弱、計約2000億円もの社債償還を控え、資金調達には、新規の社債発行で借り換えるのが手っ取り早い。でも、ソフトバンクの社債の格付けが『投資不適格』にランクされ、発行は非常に困難。残る手段は資産(保有株式)の切り売りしかない」(信用調査機関幹部)
解説を裏付けるように、ソフトバンクは保有株式の売却を加速。昨年12月と2月に米イー・トレード・グループ株(売却額計391億円)、1月と4月に米ヤフー株(計614億円)、3月に米ユーティースターコム株(258億円)など、ハイピッチで売却を進めている。
この流れの中で出てきたのが、金融当局がマユをひそめるあおぞら銀行(旧日本債券信用銀行)株の売却問題である。
ソフトバンクは12年9月、一時国有化された旧日債銀を東京海上火災とオリックスの3社連合で買い取った。筆頭株主は約49%出資するソフトバンクで、東京海上とオリックスが約15%ずつとなっている。
「長期保有」が買い取り条件だったが、資産売却を加速させるソフトバンクが3月になって売却に色気を見せ始め、国会議員や財界を巻き込んでの大騒動に発展する。
自民党の金融通が怒りを込めて言う。
「孫氏はあおぞら銀株を約490億円で取得した。金融のプロに試算してもらうと、株価低迷の今でも、売却すれば最低でも900億円、最高で1300億円になるそうだ。旧日債銀には4兆円強の公的資金、つまり税金が投入されている。会社(ソフトバンク)経営が厳しいからと、『濡れ手で粟(あわ)』をさせるわけにはいかない」
幼児も含め、国民1人あたり3万6000円を負担した計算になる。
孫社長は売却について、「4月に銀行法が改正されたため」と国会などで理由を説明する。
改正銀行法では、銀行に20%以上出資する主要株主は16年3月末までに、金融庁に改めて申請する。
主要株主に対し、本体の経営に不安が広がり、銀行の健全性に問題が生じる恐れがある場合、金融庁は本体に検査に入れるというものだ。
「ソフトバンクは当然、これに引っ掛かる。そうなると、ソフトバンク自体の経営が金融庁の監視下に置かれる。経営状態に問題がなければ気にする必要はないが、株売却はやはり、『経営状態を見られたくない』ということだろう」(前出の金融担当アナリスト)
ソフトバンク保有のあおぞら銀株を巡り、米系投資ファンドのサーベラスが買い取りに意欲的とされる。サーベラスはすでに約11%を出資しており、ソフトバンクから買い取れば筆頭株主に躍り出る可能性が高い。
「永田町の一部には、外資にだけは経営の主導権を渡せないという雰囲気が強い。旧日債銀が『政治家の財布』といわれた歴史と無関係ではない。あおぞら銀になった今も、過去の一部を引きずっていると見るのが自然」(野党政策担当者)
金融当局の反対もあって、あおぞら銀株の売却は、一筋縄ではいきそうもない雲行きだ。
ソフトバンクの資産は3月末現在、約1兆1000億円。うち5200億円が株式となっている。これを売り払えば、社債を含めた有利子負債の返済は不可能ではない。
だが、資産を食いつぶす一方、中核のブロードバンド事業で利益が出せずジリ貧に陥ると、ソフトバンクの存亡にかかわる深刻な事態に陥る。