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空売り規制違反などで行政処分を受ける外資系金融機関は後を絶たない。その理由のひとつとして「外資」と「ローカル」の対立が市場に存在するからではないだろうか?
株の空売り規制違反などにより、行政処分を受ける外資系金融機関が後を絶たない。空売り規制自体、“3月危機”を回避する為の政府の強引な株価対策だったと批判されることも多いが、ルールはルール、守らなければならないし、それに違反すれば何らかの処分を受けるのもいたしかたないだろう。しかしそうは言っても、処分を受けるほとんどが外資系の業者だというのはやはり解せない。『処分を受けることが、日本で営業する外資系業者として認められた証拠』などというイヤミまで飛び出すほどだ。当の外資系業者は空売り規制自体に対してよりも、むしろ“外資悪者”,“外資排斥”などといった風潮が作られることに対して懸念や反発を強めているようだ。
実はこうした外資系金融機関(東京支店)と監督官庁との溝は、3年前のある事件に端を発する。クレディ・スイス・ファイナンシャル・プロダクツ(CSFP)銀行東京支店の銀行免許取消処分、つまりは“おとりつぶし”だ。CSFPは特にデリバティブ系に強い、世界トップレベルの銀行の1つだ。この処分の元になったのは、そのデリバティブを駆使した不良資産の“飛ばし”商品を日本の銀行・証券などに販売していたことや、証拠隠滅などで監督官庁の検査を妨害したというものであった。当時同様の商品が他の外資系金融機関でも取り扱われていたと言われているが、CSFPだけが“見せしめ”となった。この処分が非常に厳しく、ともすれば感情的なものではなかったのかと今でも言われるのには、このような背景がある。まずその“不適切な”商品を購入していた側も多くは金融機関であり、つまりはプロ同士の売買であった点である。あまり知識のない顧客に、デリバティブを組み込んだ複雑な商品を売りつけているのとは訳が違う。購入側もその商品がどういうものかということを十分に認識した上で(つまり決算操作に利用できることを知っていて)購入していたはずだが、購入側(会社自身や監査法人など)に処分はなかった。
その商品は当時の日本の会計制度の不備を巧みについており、またその購入側に当時破綻した日本の金融機関の名前がずらりと並んでいたことも、当局をより感情的にさせたのかもしれない。証拠隠滅などの検査妨害も、正直言って少なくとも当時の日本の金融業界では珍しくなかった。その違いは日本の金融機関には監督官庁との太いパイプがあり、“検査慣れ”もしているので、その対応がより巧みであっただけである。例えば“抜打ち”検査の日が前もってわかっていたとすれば、それまでに資料を廃棄するのも簡単なことだし、また資料を女子トイレやロッカーに隠すなどの“幼稚”な方法ではすぐにバレることを既に知っていたのである。その日本の金融機関は、政・官・財あるいは総会屋や暴力団関係者など特定顧客への損失補填や利益供与など、市場の信用を失墜させるような事件を何度となく起こしてきた。それでも“お客様第一!”と言って今でも生き長らえているのを見ると、CSFPの“おとりつぶし”は厳しすぎたのではないか...と思うところもある。
こうした“外資”と“ローカル”の対立は、別段珍しいことでもない。世界中にあることであるし、バブル時代の日本は逆に当時の欧米諸国にとっては恐るべき“外資”であった。塩川財務相の“日本が博打場になっている”という発言も、心情的には理解できる。誰でも自分の国には愛着があるし、その意味である程度の“ホームタウン・ディシジョン”も仕方がないのではないかとも思う。しかしそれもあまり行き過ぎてしまうと格好いいものではない。残念ながら現段階では、投資に関する日本のレベルはあまり高くない。脅威に感じるからといって排斥しようとするのではなく、上手に取り入れてそのノウハウを吸収してやろうというぐらいの気概で臨んだ方がよいのではないかと思うが...。
外資系金融コンサルタント 円城寺真哉
提供:株式会社FP総研