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日本経済が循環的な景気回復をたどる一方で、ドル安/円高をきっかけに、和らぎかけていたデフレ圧力が再び強まり、金融政策の時間軸が延長されるとの見方が強まっている。こうした見方や運用難を背景に、円債市場では長期金利が一段と低下。マクドナルドの低価格戦略が半年ぶりに息を吹き返すなど、物価をめぐる環境は微妙な局面を迎えている。
金融市場では、今春に芽生えたデフレ後退への淡い期待が吹き飛びつつある。当時は、景気に敏感な商品市況が上昇し、輸入物価にも円安の影響が表れていた。だが、このところのドル安/円高という冷水のなかで、マクドナルド・ハンバーガーの再値下げ決定など、物価の下押し要因が意識され始めている。
J.P.モルガン証券・調査部長の菅野雅明氏は、「物価をめぐる潮流がここに来て変わりつつある。現状すぐにデフレ圧力が強まるのではないが、デフレ期待が頭をもたげている。緊縮財政路線のなかで、債券相場は目先崩れる感じはなく、国債へ資金がシフトしている」と語る。
そのうえで菅野氏は、「春先には、デフレというトレンドはひょっとして変わるのでは、との見方が浮上したが、結局は変わることはなかった。マクドナルドが半額セールをやめた頃は、循環的に景気が良くなるところで、需給ギャップの縮小からデフレ圧力が後退すると考えられていた。しかし、中国を含めアジアでのデフレが強い中で、このところ円高が進み、需給ギャップの縮小によるデフレ圧力の減少が見事に吹き飛んだ」と述べる。
日興ソロモン・スミス・バーニー証券・債券本部チーフストラテジストの佐野一彦氏も、「マクドナルドの再値下げが、イメージ的にデフレ継続観測を強めていることも否定しえない。景気が回復してもデフレが続き、その間、金融引き締めは難しいため長期金利は低位安定するという見方が浸透してきた」と言葉を重ねる。
11日の円債市場では、10年240回債の利回りが1.2%台後半で一段と低下し、先物9月限は中心限月の年初来高値を更新した。
ハンバーガーに限らず発泡酒の値下げなど、物価下落圧力を再び強め、時間軸の延長を連想させるような要因は少なくない。「発泡酒の売り上げが鈍いが、歴史的な落ち込みとなっている所定内給与など、悪化する所得環境が影響している」(菅野氏)との指摘もある。
日銀内でも、低価格戦略が復活してきたことで、再び安売り競争へ発展するかを注目する声が聞かれ始めている。
みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、「量的緩和スキームの解除は、全国消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率にぺッグされており、必ずしも景気動向とパラレルには動かない。供給面からの物価下落圧力が増すようであれば、日銀が量的緩和スキームを解除するきっかけは手に入らない」として、超緩和政策の長期化に言及する。
循環的な景気の問題と、構造的なデフレの問題が同時に進行するなかで、グローバル化の影響に伴うデフレ圧力を指摘する向きもある。BNPパリバ証券・チーフストラテジストの島本幸治氏は、「ただでさえ安い供給力が増えて、世界的な物価下落圧力が強まっている。米国に集中した資金が本格的に逆流し始めると、ドル安のリスクが一段と出てくるが、その場合デフレはより深刻化するのではないか、という懸念が強い」と述べている。