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(回答先: 北朝鮮 給与も物価も十数倍に 7月から改革 投稿者 倉田佳典 日時 2002 年 7 月 11 日 19:37:55)
情報が断片的で限られているので、北朝鮮の政策意図を汲み取るのは面白い“経済学”的思考実験になるかもしれない。
>同消息筋によると、給与の引き上げは軍人や公務員らを対象に一斉に実施された。
>引き上げ規模は一律ではなく、十四倍から十七倍という。
給与格差を付ける機会に利用したかもしれないが、本質的には物価変動スライドの給与アップである。
>物価などの急上昇で価値の激減が予想される預貯金の扱いなどは明らかではない。
預金に限らず国債も発行しているだろうから、インフレ率に応じた嵩上げが行われなければ、今回の政策は公的債務の切り捨てになる。
>北朝鮮の通貨は外国通貨と交換できる「兌換(だかん)紙幣」と交換ができない「人
>民ウォン紙幣」の二本建て。今回の措置はいずれも「人民ウォン紙幣」での引き上げ
>という。兌換紙幣では一ドル=二・二ウォン前後のレートに変化はない。
中国の通貨二本建ては少し知っているが、「兌換紙幣」と「人民ウォン紙幣」は支払い手段として等価なのだろうか?
外国人には高い負担をしてもらうという目的だろうから等価になっているはずである。それでも、先進国の外国人には物価が安く感じられる。
>ある消息筋は、今回の改革の目的は経済貿易地帯(経済特区)である羅先市と北朝鮮
>の他の地域との通貨価値の是正にあるとしている。羅先市では人民ウォンが外国通貨
>に対して他の地区の十分の一程度の価値しかなかったという。
>このため、羅先市で外貨を人民ウォンに替え、平壌などで物資を購入、羅先市で販売
>すれば莫大(ばくだい)な利益を得られたという。今回の措置でこの格差がなくなっ
>たという。
「羅先市では人民ウォンが外国通貨に対して他の地区の十分の一程度の価値しかなかったという」ことは、羅先市では、経済取引で使われている外貨の比率が高いということであり、「兌換紙幣」の交換レートが高すぎるということである。
端的には、外貨で一般商店から財を買う人が多いから、「人民ウォン」で買う人までが“国際価格”で財を手に入れるしかないということだ。(国籍は別として金持ちが多いということでもある)
「今回の措置でこの格差がなくなったという」ことは信じられない。
給与が十四倍から十七倍に引き上げられているのだから、物価は実質的に変動していないことになる。
物価だけが十数倍になったのなら、北朝鮮全土で財が“国際価格”になったという説明ですっきりする。(北朝鮮国民が一律的により貧乏になる)
しかし、兌換紙幣のレートは変わっていないのだから、ドルの価値が1/10になっていなければ整合性がとれない。
「今回の措置でこの格差がなくなったという」のはあったとしてもごく一時的な現象で、すぐにまた10倍とやらの格差が生じるはずである。
「羅先市で外貨を人民ウォンに替え、平壌などで物資を購入、羅先市で販売すれば莫大(ばくだい)な利益を得られた」ということは、羅先市では、外貨を、公定レートではなく、10倍の1ドル=22ウォン程度で両替できる仕組みが出来上がっているということを示唆する。
今回の政策を採っても、闇両替?のレートが、1ドル=22ウォンから1ドル=220ウォンになるだけである。
羅先市とその他の地域の格差をなくすためには、
1)外国人に外貨の使用をやめさせ「兌換紙幣」の使用に限定し、「兌換紙幣」を受領した国内経済主体は、等価の「人民ウォン紙幣」に交換させる。
(本当は、外国人にも「人民ウォン紙幣」を渡し、再両替のための担保である両替証書の発行と持ち出しの規制で管理したほうがいい)
2)ドルとウォンの交換レートを実勢の22ウォン(今なら220ウォン)程度に変更する
のいずかしかないと思われる。
>朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)当局が七月から実施した給与や物価を十数倍に引
>き上げる経済改革の目的は明らかになっていないが、通貨「人民ウォン」の国内格差
>を是正し、今後、対外貿易を活性化させる場合に備えて通貨の一元化など為替管理の
>問題が関係しているのではないかとみられる。
前述のように、今回の政策では、このような目的を達成することはできない。
>外貨と交換可能な「兌換(だかん)紙幣」と交換できない「人民ウォン紙幣」の二つ
>の通貨がある北朝鮮では一九九九年ごろから国内で兌換紙幣の使用が事実上中止され
>た。
>外国人が利用するホテルや外貨ショップなどの料金はドル表示で外国通貨が使用さ
>れ、対外貿易ではほとんどは外貨決済だ。貿易の活性化に向けて国内に二つの通貨が
>存在するという事態は不都合が多い。
「外国人が利用するホテルや外貨ショップなどの料金はドル表示で外国通貨が使用されている」のは、国内で壁を造って国際取引を行っているということでOK。
「貿易の活性化に向けて国内に二つの通貨が存在するという事態は不都合が多い」という理由はわからない。「兌換紙幣」の本来の目的は、外国人に表示上は国民と同じ価格で財を買ってもらうが、実質は10倍の価格であるという仕掛けのはずである。これは、ある意味で国内で行う輸出と同じである。それを受け取った国内経済主体に、同じ額面表示の人民ウォン紙幣と交換させることで処理できる。
前述のように、「人民ウォン紙幣」1本にしたほうが“抜け駆け”もないのでいいのだが、管理(規制)が面倒なだけで不都合がそれほど多いわけではない。
>さらに、ウォンと外貨の公定と闇のレート格差は極めて大きいといわれる。
>今回の措置は人民ウォンの価値を経済特区である羅先市と同じ水準に引き下げ、将来
>的には通貨を一元化する布石ではないかと思われる。
前述したが、今回の政策では、闇のレート格差を縮めることも、人民ウォンの価値を経済特区である羅先市と同じ水準に引き下げることもできない。
>ただ、四月末からのマスゲームと芸術公演の「アリラン」祭典で兌換紙幣が復活し
>た。これがいつまで続くかや、預貯金などの扱いなど不明な点も多く、こうした劇
>的な措置が経済全体にどういう反応を引き起こしているかはまだはっきりしない。
金総書記が、預金を含む公的債務を切り捨てる目的で行ったのなら妥当性はあるが、記事に書かれているような目的で今回の政策を実施したのなら誤りである。
どっちなんでしょうね。