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●ひっくり返った金融長官人事
金融庁の森長官の退官に伴う長官人事が、ひっくり返った。内定の3日前のまさにどんでん返しである。当初は、財務省から次期長官含みで送り込まれた原口総務企画局長の就任が確実視されていた。本人も永田町には、次期長官の就任を想定してあいさつ回りさえしていたのだから、一番驚いたのは本人かもしれない。以前から、原口局長には敵が多いと言われ、すんなり長官に決まるのかと先行きを懸念する見方は確かにあった。しかし、金融庁内でも原口局長の長官就任を疑う者はほとんどいなかった。それが、以前から健康面で不安を抱える高木監督局長に白羽の矢が立ったのだから、青天の霹靂(へきれき)とはまさしくこの事かもしれない。
大どんでん返しの仕掛け人は、何を隠そう小泉首相とその周辺だ。確かに事務方トップの人事、それも大きな政治課題である金融問題の処理を主導していくトップだ。小泉首相は、官邸に余りしっぽを振らず、財務省(旧大蔵省)の手に金融を取り戻そうという強い意向を秘めた原口総務企画局長に長官の椅子を渡すわけにはいかないという事なのだろう。それよりは、どこか線の細さがあり、御しやすいと見られる高木監督局長を選んだ。財務省出身には変わりはないが、原口局長が長官に就任すれば、さらに財務省の武藤次官体制を強める事になる。
●柳沢金融担当相最後の大仕事?
これに対して、官房長官をはじめ首相周辺が極めて強い難色を示したという。小泉官邸にとって、抵抗勢力の自民党を抑えこむためにも、財務省は力強い味方だ。武藤次官も戦後初めて在任3年目に入った。しかし、これ以上、増長されては政治主導の色が褪せ、官僚主導の謗りを受ける恐れがある。税制改正などでは、こうした面が露呈してしまった。これを官邸は懸念している。一方で、こうした官邸の姿勢に対して柳沢金融担当相は、なぜ「イエス」と答えたのか。それは原口局長との確執を噂する向きもあるが、もう1つの狙いがある。9月の内閣改造で大臣の座を去るとみられる柳沢金融担当相の最後の大仕事が、まさしくこの人事だった。
●財務省色を払拭〜「金融監督庁」黄金期の復活
それは今回の金融庁の局長人事に如実に現れている。藤原隆総務企画局審議官が横滑りで総務企画局長へ、目玉となる新監督局長には五味広文検査局長が、検査局長には佐藤隆文総務企画局審議官がそれぞれ就任する。これを金融監督庁時代に置き換えてみれば、布陣の意味が明らかになる。藤原氏は金融監督庁が官庁としての体裁を整え始めた頃の初めての審議官。五味氏は言わずと知れた検査部長。佐藤氏は総務課長だった。
その時代を振り返れば、長銀、日債銀を国有化し、問題地銀、生保を次々に破綻に追い込み、世界的な金融グループ・クレディースイスグループを国外追放した。旧大蔵省から片道切符で送り込まれた人間たちが、金融行政の建て直しに真摯(し)に奔走した、まさに「金融監督庁」の黄金時代を築いた人間ばかりだ。これに腕利きの参事官経験者などが出戻って来でもしたら、その体制は磐石になるだろう。
(東山 恵)
・「金融再生最前線」〜経営責任なき債務免除と仕組まれた支援劇
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200203/14/20020314103515_16.shtml
・「金融再生最前線」〜二律背反に焦る金融庁、不良債権処理とデフレ危機
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200202/14/20020214103001_37.shtml
・「金融再生最前線」〜ゼネコン再編で復活した大護送船団行政
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200201/31/20020131100503_72.shtml
・「金融再生最前線」〜それは総理の“ダイエーは潰すな”で始まった
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200201/17/20020117101513_29.shtml
・企業淘汰と再編は“鬼の復権”から始まる〜金融庁「特別検査」スタート
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200111/19/20011119135007_94.shtml