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分析「日本の政治を読む」〜深刻化する小泉首相の“経済無関心”[PAXNet] 2002/07/08 09:30:00 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 7 月 08 日 10:39:18:

●山崎幹事長続投なら首相に必ずツケ

延長国会最大の焦点となっていた郵政関連法案の成立が確実になったことで、衆院解散・総選挙という「不測の事態」は当面回避された。これにより、9月末の自民党役員の任期切れに合わせ内閣改造があるかどうかに焦点が移る。中でもYKKの一員で、首相が唯一心を許して話ができるという山崎拓幹事長の交代があるかどうかに注目が集まっている。中国訪問中の森喜朗前首相は自民党各派の意見を代弁する形で、山崎氏の更迭を強く示唆。これに対し、小泉首相は「あれは森さんの考えだ。間違えないでくれ」を繰り返し、あくまで山崎氏の続投にこだわる方針に示した。
山崎氏については、再三触れているように、同氏自身の女性スキャンダルに加え、今国会でみせた「国会運営能力の欠如」は派閥を超え、もはや党内のコンセンサスになっている。通常であれば、10月の衆参両院補選を前に更迭止む無しとなるところだが、首相が加藤紘一氏に続いて盟友を失うことを極度に恐れていることに加え、後任に“抵抗勢力”の古賀誠前幹事長らの名前が上がっていることに強く反発。ここで譲れば、内閣改造の主導権も奪われるとあって、山崎氏更迭に強く抵抗している。
周辺によると首相は、改造も全面的ではなく、依然数人の閣僚入れ替えにとどめたい意向と言われる。しかし、森前内閣以来の閣僚をどうするかという問題に加え、財務相、経済財政担当相、金融担当相ら経済閣僚の入れ替えを求める声も上がっており、今後、綱引きが激化しよう。それにしても首相は、改革派でも何でもないあの程度の能力の人物を、情に溺れ「親友」というだけで続投させるようなら、必ずやそのツケを払わされるであろう。

●「虚仮(こけ)威し内閣」の疑念深まる

首相の「一枚看板」である改革志向にもこのところ疑問符が相次いでいる。首相が「解散も辞さず」とあれだけこだわった郵政関連法案にしても、首相は「成立」という「名」のために「実」を捨て去ったといわれても仕方がない内容となった。まず第1に、首相はもともと「郵政3事業民営化」を標榜していたが、今回、肝心の郵便貯金と簡易保険には全く手をつけずじまい。郵貯と簡保の計370兆円にも及ぶ膨大な資金が財政投融資資金として特殊法人に流れ込み、また金融システム全体をおかしくしていたのではなかったか。
第2に、郵政公社法案にしても郵政族の圧力で「郵便局はあまねく全国に配置する」「(民間の法人税に当たる)国庫納付金の負担軽減」を法案に盛り込み、民間の新規参入を一層困難にするなどの“改悪”が目立った。また国会答弁で「ダイレクトメール(DM)は基本的に信書」と答弁することになったが、これもヤマト運輸など新規参入を検討してきた企業への裏切り行為でしかない。かえって現在一部黙認されているDM便が規制される可能性すらある。そもそも一度に何万通も同じ文章が印刷されたものがなぜ「信書」なのか。単に「儲け」を守るだけの方便に過ぎない。
こういうことを考えると、何も今、「自民党が小泉内閣を潰すか、小泉内閣が自民党を潰すか」などと、肩をいからせて取り組むべき問題だったのかとの根源的な疑問が残る。これが小泉首相の手法と言えばそれまでだが、この内閣発足当初に指摘した「虚仮威し内閣」との疑念はさらに深まった感じだ。

●メモを採らない首相に財界人の怒り

こうした小泉首相の政治姿勢に対して、自民党の青木幹雄参院幹事長が以前から「郵政は今、国民が誰も困っていない。国家の根本問題ではない。それよりも景気対策をきちんとやらないと」と指摘しているように、郵政族以外の同党内の大部分も首相の方針に懐疑的だ。山崎派幹部も「郵政は総理のライフワーク。経済政策にはほとんど関心がない」と言明するように、小泉首相が経済、景気対策にはまるで関心がないのはどうやら事実のようだ。経済財政諮問会議でも「首相はほとんどメモすら採らない。本当に関心があるのか」と、ある財界人は怒りを隠さない。
政権者が自分の公約の実現にまい進、努力するのは当然だとしても、だからと言って、経済・財政問題に全く興味がないなどということがあっていいはずがない。折しも東京株式市場は、相次ぐ大企業の不正会計事件を引き金に急落したニューヨーク市場に引きずられる形で、一時期1万円の大台割れもうかがう線まで下落した。こういう指導者の判断が死活的に重要な時に、いわば「趣味」ともいうべき郵政問題にだけかまけていて本当にいいのか。中長期的スパンでは構造改革が必要なことは言を待たないが、と言って、「今そこにある危機」にどう対処するのか、首相は機敏に対応しなければならない。こんなことを改めて指摘しなけらばならないとは、何とも物悲しい。

●知事選、県議選でも構図変わらず

もう1人、掛け声だけで、結局のところよく分からないのが、県議会から不信任決議を突き付けられた田中康夫長野県知事。暴露雑誌にわいせつな文章を連載しているとか、酒を飲みながら女性タレントをひざに乗せてインタビューに応じた―などの感情的に反発を買う問題を除いてみても、同知事には政策理念と行動の不一致が目立っているようだ。
そもそも不信任案の直接のきっかけとなった「脱ダム宣言」なるものが、よく理解できない。不用な公共事業をまず止めようというのはいい。現に、鳥取県などでもそうした措置がとられている。しかし、それならそれで、代替措置を示さなければダムができる予定の下流の住民は不安だろう。同知事は環境問題だけを強調するが、そもそもダム建設は治水対策のため造られるものだ。数百億円もかけ、コンクリート物を造る必要がないというのは一見もっともな意見にみえるが、これはあくまで代替措置が妥当な案であった場合に限られる。
選挙が果たして県議会だけなのか知事選も行われるか現時点では不明だが、どちらにしても田中知事が“再選”されることはほぼ間違いなく、また県議のほとんども再び出てこよう。そうなれば、知事がたとえ県民の「信任を受けた」と主張しても、知事VS県議会の対立構造には変化はなく、最悪の場合、再び知事不信任決議が繰り返される懸念すらある。これに伴う県の政治、行政の空白・停滞で迷惑するのは長野県民であることは言う間でもない。
田中知事が考えを変え、宮城、三重、鳥取などのように真の意味での「改革派知事」を目指すのか、それとも田中氏を打ち負かす新たな知事が出現するのか、あるいは田中氏が「知事業」に飽きて投げ出すのか、いずれにしてもそれまでは不毛な争いが続く。
(政治アナリスト 北 光一)

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