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進まない論議〜電力自由化の狙いは東電解体か?[PAXNet] 2002/07/05 10:44:00 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 7 月 05 日 11:39:15:

5年後の小売り全面自由化に向け、諮問機関で議論が続けられる電力の自由化問題。経済産業相の諮問機関として昨年11月に設置された「総合資源エネルギー調査会・電気事業分科会」だが、議論が一向に進んでいない。経産省の計画では7月終わりにも中間答申をまとめる予定だったが、ついにこれを断念、今秋以降に持ち越されることが決定的になった。4日に開かれた第10回の分科会でも、あまりに遅々と進まない議論に業を煮やした一部委員からは「しっかりとしたスケジュールを示せ」と事務局である経産省を批判する声も挙がったほど。だが、この進まない議論の裏側には経産省のある狙いが垣間見える。その野望とは。

●経産省の本当の考えは?〜電力解体計画

「経産省の最終的な狙いは電力解体。現在議論されている発電部門と送電部門を切り離すことで、産業界の中でも極めて強力な電力会社を、NTT<9432>のように解体したいのではないか。特にターゲットは東京電力<9501>だろう」。ある業界関係者はこう分析する。
昨年11月の分科会での検討開始以降、経産省による電力解体の野望は随所に顔を出す。経産省の描くシナリオはこうだ。「自由化」という錦の御旗のもと、業界に新規参入者を積極的に受け入れ、競争原理を生み出す。公平、公正な競争を促すため、基礎インフラといえる送電部門を電力会社から切り離し、経産省主導の第三者機関に運営を委ねる。結果として、既存の電力各社は発電・送電・配電という主要な3事業のうち、川中部門である送電部門を失い、電力解体がなし崩し的に進む―というもの。今年3月からは2000キロワット以上の大口顧客向けの電力小売りが自由化されており、解体に向けた“流れ”はすでに生まれつつある。

●“官僚手法”で進む分科会の議論

ではなぜ分科会の議論が進まないのか。ここで経産省は官僚らしい手法を駆使することになる。経産省では来年の通常国会に電気事業法改正案を提出する計画だ。法案が可決されるのは来春と見られており、逆算すると今年中には大まかな改正案づくりを終えていなくてはならない計算となる。本来なら分科会での議論を急ぐべきだが、「経産省にとって分科会は単なる段取りに過ぎない。遅々と進まない議論を放置しておき、時期を見て経産省主導のワーキンググループを改めて設置、一気に解体シナリオを描き出すのでは」(業界関係者)。すでに原子力発電や発電・送電分離などデリケートな問題に関しては、分科会傘下のワーキンググループの設置が取り沙汰されている。経産省はしたたかだ。

●足並み乱れる〜一枚岩でない電力業界

解体を迫られている電力業界だが、足並みの乱れも出始めている。4月の分科会では電気事業連合会会長で東京電力社長の南直哉社長が、小売部門の全面自由化を表明、突然の決定に業界内は騒然となった。東電を除く関西電力<9503>や中部電力<9502>など他の電力各社も現在では「自由化やむなし」というスタンスのもと共同で発電・送電部門の分離に対抗していこうとしていた矢先、中部電力の太田宏次会長が、暗に南電事連会長を非難、協調路線が売り物だった業界に変化が芽生え始めている。
太田会長はある講演会のなかで、「(全面自由化は)もっと慎重に行うべきだ」と発言。中部電力がこの発言を冊子にまとめたことで、より波紋を広げる結果になっている。「鉄の結束」を誇ってきた電力各社は現在、一枚岩とは言い難い。電力業界の足並みの乱れを横目で見ながらほくそえむ経産省。中間答申の延期は「マイナスではなく、経産省にとってはまさに予定通りのこと」(別の業界関係者)。電力解体というシナリオもまんざら絵に描いた餅とはいえない状況になっている。
(森山 繁樹)
 
・電力ビッグバン!〜駆け引きに渦巻く相互参入の思惑
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200205/16/20020516154508_32.shtml
・加速する日石三菱の“脱三菱”〜エネ自由化時代の巨大母艦へ<上>
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200205/27/20020527144005_73.shtml

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