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「当該金融機関の経営破綻が、いわゆる“地域経済に重大な影響を与える”という状況とは、いったいどのようなケースを指すのか。逆に、“地域経済に重大な影響を与えない”とは、どのような状況を言うのか。これまで金融庁は、この件に関する定義づけを明確にしてこなかったと言っていいだろう。少なくとも金融機関サイドには明らかにしてこなかったことは間違いない。ある意味で、その部分の定義づけ、線引きについては、金融庁の裁量に事実上委ねられてきたのが実情だ」
金融庁幹部がこう言ってみせる。
冒頭から非常に難解なコメントの紹介でスタートさせてしまったことで、読者はいささか面くらっているのではないだろうか。
しかし、前述の金融庁幹部の言わんとしていることは、今後の地域金融機関−地銀、第２地銀、信金、信組−の動向を占う意味で極めて重要だ。いま少しお付き合いをいただきたい。
それでは、なぜ、金融機関の経営破綻が−この場合“地域金融機関”−地域経済に重大な影響を与えるか否かということが、それほど重要な問題になるのだろうか。
「仮に、“地域経済に重大な影響を与える”となった場合には、その金融機関を救済するために公的資金を投入する上で大義名分が得られるからなのです」（金融庁幹部）
現在、金融業界では、２００３年４月に“ペイオフ完全解禁”を実施するかどうかで、大モメにモメていると言っていいだろう。
「“ペイオフ完全解禁”に関して反対する勢力の急先鋒となっているのは、第２地銀業界と信金業界です。この両業界は、自民党の有力政治家に積極的に働きかけることで、金融庁に対して揺さぶりをかけているのが実情なのです」（大手都銀幹部）
とはいえ、こうした一部金融業界の動きは、ある意味で単純な“条件闘争”に過ぎない、とする見方もある。
「それというのも、両業界とも“ペイオフ完全解禁”と引きかえに、経営基盤が脆弱（ぜいじやく）な金融機関に対して公的資金投入による資本増強策の実施を、水面下で求めてきているからです」（金融庁幹部）
つまり簡単に言ってしまえば、第２地銀業界と信金業界は、“ペイオフ完全解禁”に踏み切ってもいいから金（公的資金）をよこせ、と金融庁に要求しているという図式だ。
しかし現在、金融機関に対する資本増強を目的とした公的資金投入は、一部の例外を除いて正預金保険金の定義を満たすケースに限定されている。
そしてその“定義”とは、公的資金投入を実施しなければ、国または地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生じる状況に陥る、ということになる。
ここで言う「地域の信用秩序」という表現は、“地域経済に重大な影響を与える場合”に置き換えることが可能だろう。
「金融庁の内々の定義として、合併も自力増資もできない金融機関は、地域経済にとって重要ではない金融機関、というものがあるのです。この定義は、９９年５月に経営破綻に追い込まれた旧幸福銀行が、破綻直前に公的資金注入の申請を行ってきた際に、金融再生委員会が下した判断−いうまでもなく“却下”−に基づいて設定されたものです。このあたりの経緯については、金融再生委員会の議事録にも登場してきます。それだけに、この“定義”を無視する形で公的資金投入を行うことは不可能なはずです」（金融庁幹部）
こうした経緯を検証してみることで、ようやく地域金融機関への公的資金投入の条件が、具体的な形で見えてきた、と言えるだろう。どうやら、地域金融機関の合併が相次ぎそうだ。

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