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米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが２日、日本の大手銀行の財務格付けを引き下げ、みずほ銀など大半が１３段階の最低ランクとなった。日本国債の格下げで物議をかもした同社の判断だが、「図体（ずうたい）（資産規模）は世界トップレベルだが、中身（財務基盤）は最低レベル」が外国人投資家ら市場の共通認識。株価低迷で財務基盤は極端に悪化しており、金融危機が再び忍び寄る。「危機回避には公的資金の再注入しかない」との指摘は高まるばかりだ。
ムーディーズが２日に格下げを発表したのは、東京三菱、三井住友、みずほ、みずほコーポレート、ＵＦＪ、ＵＦＪ信託の６銀行。東京三菱が「Ｄ」から「Ｄマイナス」と最低ランクから３番目となったが、残りの５行は「Ｅプラス」から最低ランクの「Ｅ」に引き下げられた。
すでに大和、あさひの２行が最低ランクに引き下げられており、これで大手銀の大半が最下位というていたらくだ。
財務格付けは、銀行の純粋な安全・健全性を測ったもので、債券や預金の払い戻しが基準の通常の格付けとは異なる。
預金や債券は、すべての大手銀が払い戻しに支障はないとされる「Ａ」から「Ｂ」を維持している。これは公的資金などによる「信用サポート」のおかげで、そうした要因を除く純粋な健全性では最下位というわけだ。
ムーディーズでは引き下げ理由について「実質的自己資本が極めて弱く資本の質が低い」と指摘。今後も巨額の不良債権処理が必要になるが、「その規模は公表された不良債権には完全には反映されていない」と分析する。
「強固な収益性に変換していくことは短期的には難しい」とし、「高水準の外部支援が引き続き必要」と結論付ける。
外資系証券会社の金融アナリストが、わかりやく解説する。
「日本の大手銀行の自己資本はただでさえ乏しいうえ、すでに投入された公的資金や税効果会計という特殊要因によって水増しされた張りぼてにすぎない。大手銀は不良債権処理の山は越えたとして、今後は巨額の処理損失が発生することはないと口をそろえるが、まったく信用できない」
「貸出金利の引き上げなどによる収益性の向上を目指しているが、うまく行くわけがない。今後も巨額の処理損が発生し自己資本をさらに食いつぶす。その結果、さらなる公的資金の投入が必要となる。まさにけちょんけちょんの評価だ」
ムーディーズといえば、日本国債の格付けを戦先進７カ国中最下位で、ポーランドやイスラエル、ボツワナなどの発展途上国と同じ「Ａ２」に引き下げたばかり。
この時は、日本の代表者が国会に招致されてつるし上げをくらい、市場でも「明確な根拠が示されていない」などと評判はガタ落ちとなった。
ただ、大手銀の財務内容に対する見方は、最下位の是非は別として、「おおむね市場の見方と一致している」という。
今年３月期決算で大手銀１３行は、不良債権処理で計約７兆７０００億円、株価の評価損処理で計約２兆円もの損失が発生し、東京三菱銀行を除く全行が赤字に転落した。
この結果、資本準備金の取り崩しを迫られるなど、各行の自己資本は大きく目減りした。
ドロ沼状態の不良債権残高も約２７兆円にも上り、体力が消耗し切っている状態である。
そのうえ、自己資本はみせかけに過ぎない。三菱東京フィナンシャルグループを除く大手銀各行には、過去２回に渡って総額１０兆円近い公的資金による資本投入が行われている。
しかも、前払い分の税金が将来戻ってくることを前提とした税効果会計による水増し分が１３行合計で８兆円強にも上っており、中核自己資本の１７兆４０００億円の半分近くを占めているのだ。
自己資本の目減りによる自己資本比率の低下を防ぐため、大手銀では分母に当たる総資産の圧縮、つまり、貸し出し債権の回収を強化する方針を打ち出しており、中小企業を中心に、銀行による“貸し渋り・貸しは剥（は）がし”が激化する懸念も高まっている。
「小泉首相は『３月危機』などなかったじゃないかと言って、公的資金の注入を封印してしまったが、大手銀が自力で不良債権を抜本処理できないのは明白。１０兆円規模の公的資金の注入は不可避だ」（高木勝・明治大学教授）
過剰債務を抱えた問題企業の法的処理を先送りして、私的整理（借金棒引きなどによる救済）をしてきただけである。
果たして、ムーディズの指摘通りとなってしまうのだろうか。
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