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巨額の不正経理が発覚した米通信大手ワールドコムが経営危機に直面している。問題が急浮上した直後、米国株式市場を震源地に世界各地の株式・金融市場に動揺が走ったが、今週に入ってからは「淡々とチャプター11（米連邦破産法11条）の申請を待つだけ」（欧州系投資信託）と混乱は沈静化しつつある。昨年経営破たんした米エネルギー大手、エンロンの教訓もあり、市場はひとまず落ち着きを取り戻しているかに見える。だが、デリバティブを駆使し、複雑な金融取引を手がけていたエンロンよりも「ワールドコム問題の方がより単純なだけに始末に悪い」（米系運用会社ファンドマネージャー）との声も強まっている。何が問題となっているのか。

●「イロハのイ」

ワールドコムの6月25日の発表によると、同社は前最高財務責任者（CFO）が主導する形で、2002年第1・四半期までの5四半期に渡り、設備投資の額を操作する形でキャッシュフローを改ざん。総額で約40億ドル分が粉飾されていた。
デリバティブで複雑な金融取引のポジションを張り巡らせていたエンロンと違い、同社の問題は極めてシンプル。長期費用を設備投資とみなして資産に計上する手法で、粉飾決算では“イロハのイ”と言えるからだ。
ところが、である。このシンプルさが大きな懸念材料となっているのだ。特に同社株式・社債を大量保有する海外機関投資家の間で危機感が強い。先に触れたが、今回の粉飾は「きちんとチェックすれば、新人アナリストでも気づいていた初歩的な問題」（先の米系運用会社）。「右肩上がりの株価を背景に粉飾に目をつぶっていたとしか思えない。証券の発行体、アナリスト、ファンドマネジャーが三位一体でグルになっていた」（別の米系運用会社）との疑いが濃厚になっているというのだ。

●ファンドマネージャーにも司法の手？

ワールドコム問題では、監査を担当していたアンダーセンがエンロンに続いて再び指弾されているほか、同社の経営をチェックしてきたアナリストも今後厳しく非難されるのは必至の情勢。加えて「粉飾まがいの行為を承知で株式や社債を購入したファンドマネジャーも厳しく問い詰められるのは時間の問題」（同）という。
実際、この会社では内部監査が始まって担当者は戦々恐々といわれ、「米司法関係当局の調べも進行しているのは確実で、いずれ“ファンドマネージャー逮捕”といった見出しが出てくる」（銀行系証券）。インチキ行為の加害者が企業そのものだけでなく、投資家サイドにも広がるとしたら、そのダメージは図りしれない。
米国の企業会計不信が確実に深まると同時に「国際的な資金の米国離れを助長する可能性が大きい」（同）のだ。
（相場　英雄）
　
・「恐怖再び」〜世界同時株安でIT企業の復活シナリオに赤信号
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200206/28/20020628100021_72.shtml

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