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日銀が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)で、景気動向を占う上で重要な指標である大企業・製造業の業況判断指数が1年9カ月ぶりに大幅上昇した。株価回復と輸出増大が最大の要因で、政府が5月に出した「景気底入れ宣言」を裏付けた格好だ。もっとも、株価は政府が人為的につり上げただけで、最近の急落で化けの皮がはがれ落ちてしまった。輸出も米国経済の先行き不安と急激な円高の直撃を受け、風前の灯だ。景気底入れなど一時的な“幻想”に終わってしまう可能性が大なのだ。
短観は日銀が3カ月ごとに全国の民間企業を対象に実施している調査。企業の景況感を示す業況判断指数(DI=景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値)は、実際の景気動向と密接にリンクしており、重要な経済指標となっている。
6月調査では、大企業・製造業のDIがマイナス18となり、前回の3月調査のマイナス38から20ポイントし、改善幅は過去最大を記録した。改善は平成12年9月調査以来1年9カ月ぶりだ。
大企業・非製造業もマイナス16となり、前回のマイナス22から6ポイント改善し、1年9カ月ぶりに上昇。中小企業・製造業は10ポイント、中小企業・非製造業も5ポイント改善し、四業種のDI向けがそろって上昇した。
DIが改善した最大の原因は株価の上昇と輸出の増大だ。
今回の調査期間は5月下旬から6月下旬。東証の平均株価は調査開始直後の23日に終値ベースの年初来高値(1万1979円)を記録。取引時間中にはたびたび1万2000円台を回復している。6月中旬までは1万1000円台で堅調に推移したが、その後、一転して下落基調をたどり、26日には高値から1900円も安い大台割れ目前の1万74円まで急落した。
ただ、「締め切り直前の急落は大半の回答に反映されておらず、期間前半の株価回復が企業経営者のマインドに楽観ムードを与えた」(日銀筋)とみられている。
もう一つの輸出は、年明け以降、米国向けがIT関連機器や部品を中心に順調に増加。輸出の増加で、積み上がっていた在庫が減り、在庫調整の進展に伴い生産が回復するという景気循環が、景況感を好転させた。
もっとも、株価回復は「年度末の株価をつり上げるために実施した空売り規制の強化や公的資金による買い支えの余波」(証券アナリスト)というのは周知の事実。最近の株価急落がそれを証明しており、低迷が続けば、企業マインドは一気に冷え込みかねない。
輸出についても、米国経済の先行き不安で予断を許さない状況だ。そもそも輸出の増加がもたらす恩恵は、IT関連の大企業などごく限られた業種に射し込んできた薄日に過ぎない。
「輸出主導で景気は底入れしたが、裾野の広がりがほとんどみられない。今回の短観でも、大企業・製造業の回復のテンポは遅く、中小企業は依然、厳しい。業種や企業規模で景況感の改善に大きな格差が生じていることが鮮明になった」
大和証券SMBCの白石誠司・チーフマーケットエコノミストはこう指摘し続ける。
「現在の日本経済は、就業人口の4割と大きなウエートを占める流通、建設、不動産の負け組3業種が構造不況に陥っており、景気回復がまったく波及していかない。この結果、回復は極めて短命で脆弱なものになってしまう。何か大きなショックが加われば、すぐに失速してしまうほどに危うい」
さらに、問題なのがその危うさに気付かず、経済政策が後手に回ってしまうことだ。最近の株価低迷は政府の景気対策に対する失望感が大きな要因。市場は懸命にシグナルを送っているが、小泉純一郎首相の耳にはまったく届いていない。
「サミットでも何とかの一つ覚えみたいに『構造改革は順調に進んでいる』と繰り返すばかり。1−3月期のGDP(国内総生産)がプラス成長になったのに続き、短観も改善したことで、ノーテンキな首相が勘違いしてしまうのが一番怖い。税制改正が今後の最大の焦点だが、法人税や所得税減税に踏み切るどころか、財務省の口車に乗せられて、大増税路線をぶち上げかねない」(有力民間エコノミスト)
景気底入れの“幻想”から目覚めたら、景気底割れという“悪夢のような現実”が待ち受けている。こんな事態になりかねないのだ。