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人気の地方債、隠れた矛盾とは?(MSNマネー) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 7 月 01 日 16:41:52:

国債より利回りの高い地方債は安全で魅力的な投資対象に見えますが、その制度には多くの矛盾があり、先行きは不透明です。
平成9年度の市場公募地方債(個人投資家が購入することのできる地方債)の店頭売買高は7兆円程度でしたが、13年度には14兆円となり、5年間で実に2倍に増え、地方債の市場化が進んでいます。また、ミニ公募債の登場で地方債はより身近な存在になってきています。しかし、地方債の発行制度や政府保証のしくみなどの整備は未だ不十分であると言えます。
地方債市場では、どの自治体でも発行利回りが同一であるにも関わらず、流通利回りは異なるという現象が起きています。総務省は自治体間に信用リスクの差がない、という理由ですべての自治体で同じ発行利回りを決定する制度を長い間続けてきました。同一条件で発行利回りが決定されるということは、流通市場で人気のない(流通利回りが高い=債券価格は低い)地方債を発行する自治体にとってみれば、単独で発行するより有利な条件(実勢より低い調達金利=高い債券価格)で発行することができているということになります。そのため募集時に購入した場合、満期まで保有する投資家にとっては何も問題はありませんが、満期前に換金しようとしたときは、上で述べたような、市場で人気のない地方債を発行価格より低い流通価格で売却することになる危険性があるわけです。
では、なぜ地方債の間で流通利回り格差が生じているのでしょうか。
その理由の一つは、流通市場で「取引のしやすさ」=「流動性」の違いから、特に東京都債とその他の地方債の流通利回り格差が広がってきたことにあります。例えば、平成13年中、東京都は市場公募債の毎月発行という、市場での流動性を意識した平準化された発行計画を立てていたのに対し、その他の自治体は、東京都に比べて圧倒的に発行額が少ないことや、もっぱら自らの資金繰りを重視し偏った発行計画を立てていることなどから、年平均2.6回の発行にとどまりました。発行回数や発行額の少ない債券はそれだけ流通市場で取引が成立しにくいため、発行回数の多い債券より流通利回りが高くなる傾向にあり、そのため流通利回り格差が広がったわけです。
もう一つの理由は信用リスクによるものです。一部の地方債の流通利回り格差は流動性格差だけでは説明しきれないほど際だって大きくなっています。これは財政状況の悪い一部の自治体によって発行される地方債が、より高い利回りを要求されているためです。これに対して総務省は「地方債は安全で、自治体間に信用力の差はない」と主張し、投資家の行動は不可解だ、との見解を示しています。しかし、現在の地方債は地方交付税制度や財政再建制度といった「暗黙の」政府保証がなされているにすぎず、政府保証が明文化されていない以上、地方債の債務不履行の可能性は残されています。投資家が発行体の信用力をその財政状況から判断して、債券利回りに信用リスクの対価を求めるのは自然な市場原理と言えるでしょう。
このような発行と流通の矛盾を抱えた中、今年4月、ようやく制度が変更され、東京都とそれ以外の自治体、という二種類の発行条件を決める方式になりました。しかし、比較的人気の高い横浜市債を発行する横浜市は急遽計画を変更し、人気が低い自治体と時期をずらして発行するなど、東京都以外の自治体の間でも発行条件の差別化を図ろうとする動きがでています。地方債の購入を検討されている方は、新制度の運用状況を見極めて、途中で売却する時の事を見据えた計画を立てることが重要です。また、これまで債務不履行をおこした自治体はなく、一般の社債に比べれば地方債は安全であると考えられますが、制度上はあくまで自己責任で投資を行うことになっている、という点には注意が必要です。

シンクタンク研究員 植田昌宏
提供:株式会社FP総研

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