現在地 HOME > 掲示板 ★阿修羅♪ |
|
カナナスキス・サミット最終日の27日朝。ブッシュ大統領の日程はプーチン大統領との米露首脳会談で始まった。冒頭の共同記者会見でブッシュ大統領は、米露会談ともサミットとも一見無関係なことを話し始めた。
「忠誠の誓いは人権侵害ではない。われわれの権利は神から授けられたものだという事実を確認しているのだ」
26日のサンフランシスコ連邦高裁判決に対するコメントだった。米国の大半の小中学校で毎朝、子供を星条旗の前に立たせ、「神の下」に団結した「自由と正義の国」への「忠誠の誓い」を暗唱させているのは、米憲法の政教分離条項に違反するからやめよ、という判決である。
大統領は判決当日、報道官を通じて「ばかげている」と批判していた。「忠誠の誓い」は「テロとの戦争」を支える愛国心や正義感とも重なるのに、違憲とは何ごとか、という怒りだろう。
サミットとは一見無関係なようで、実は極めて象徴的な一幕だったと思える。米国が主導する世界秩序には、日本もついて行きにくい側面が感じられる。
今回サミットは8カ国の集まりとはいえ、米国の圧倒的な「一極パワー」を印象付けた。米国は経済力、軍事力において世界の覇者だったところに、昨年9月の同時多発テロで被害者としての大義名分を獲得し、他のどの国からも批判されにくい構図ができた。そうなってから初めてのサミットは、案の定、米国の一人勝ちを固定化する役割を担った。
ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)は27日、ホワイトハウス担当記者団向けの総括評価で、参加各国のリーダーたちはみな「テロとの戦争」に協力的であり、交通の安全と大量破壊兵器の破棄に関する「極めて重要な合意」が成立したと成果を誇った。匿名を条件にした別の高官は、米国の政策目標を達成するために「G8を使う」のだと明言した。
中東和平問題も、事実上、米国の一人舞台だった。ブッシュ大統領は新たな中東和平構想に主要国首脳たちの理解を取り付ける場として「G8を使う」作戦をとった。結果として全面的な支援は得られなかった。だが、公然たる批判もない。おそらく米国はそれで良いのだ。大統領は「肯定的」な反応だけに言及し、ライス補佐官は「一般的な理解」が得られたと総括した。
米国は、今や自らが信じる正義のために強引な手法をとることに、さほどの疑問を感じていないように見える。だが歴史が教えるのは、正義とは相対的、重層的なものであり、猛々しい強者の正義には危険が伴うという事実だ。協力すべきところは協力しつつ、危険も見極める必要がある。
【カルガリー中島哲夫】