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米軍における装備品のライフサイクルコスト抑制のための民間能力活用状況
コメンテータ:戦略技術研究部 主任研究員 江嵜宏至
民間能力活用というと、我が国では現在、事業コストの削減、質の高いサービス提供を目指し、国・地方公共団体を挙げてPFI事業導入の検討が進められている。防衛庁でも、『取得改革』と銘打った、装備品等のライフサイクルコスト抑制を含む効率的な調達補給態勢整備に向けたここ数年来の防衛庁独自の取り組みに歩調を合わせる形で、自衛隊施設等へのPFI導入の検討がスタートした。PFIというと英国が本家であり、防衛分野においても多数のPFI導入事例を見ることができるが、本稿では、自衛隊と関連の深い米軍における装備品のライフサイクルにかかる民間能力活用状況を整理してみた。
米軍では、民間業者(請負業者)による装備品等に対する後方支援活動をCS(Contract Support:契約による支援)と呼んでいる。CSには、ライフサイクルの段階に応じて、次のような種類がある。
POS(Pre-Operational Support:運用前支援):装備品の研究開発段階におけるCS。システム開発にあたり、発注側の立場で技術支援を行うSETA(System Engineering and Technical Assistance)もこの分類に入るかもしれない。
ICS(Interim-Contract Support:暫定的な契約による支援):装備品が配備されてから、運用・後方支援態勢が整備されるまでの間のCS。
CLS(Contract Logistics Support:契約による後方支援):装備品の運用段階におけるCS。装備品の整備や、交換部品の在庫統制、訓練支援装置(トレーナー)の運用・整備等の支援が行われる。
CSの具体的事例を紹介する。
T-45訓練システムに対するCLS:請負業者=ボーイング社、発注者=海軍。T-45 Goshawk訓練機及び関連地上訓練システムに対する運用・整備・補給。6億5000万ドルの5年契約(1999年)。
T-1A Jayhawk訓練機に対するCLS:請負業者=レイセオン社、発注者=空軍。T-1Aに対する整備及び請負業者が自ら管理・運用する倉庫からの部品供給。3250万ドルの単年契約(1999年)。
ICBM訓練装置に対するCLS:請負業者=ボーイング社、発注者=空軍。ICBMの運用・整備要員向け訓練装置に対する運用・整備。
米軍では、CS契約にインセンティブ条項を設ける場合がある。インセンティブ条項とは、契約であらかじめ設定されたサービスの要求水準を超えるパフォーマンスを請負業者が達成した場合にインセンティブを与えることにより、請負業者のサービス向上意欲を刺激することを狙ったしくみである。
米軍の事例では、その契約金額の大きさには驚かされるが、民間能力の活用を体系的に進めていく上で、防衛庁・自衛隊のみならず、参考とすべき点がありそうである。