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大手銀行による“貸し渋り・貸し剥(は)がし”が一段と激化する懸念が出てきた。巨額の不良債権処理に加え、株価急落で自己資本が目減りし、健全性を示す自己資本比率が急低下しているためだ。低下を防ぐには、自己資本比率の分母である資産を圧縮するしかない。それには、資産の大半を占める貸し出し債権を回収するのがもっとも手っ取り早いという構図である。大手銀行の自己資本は、かつてないほど棄損しており、「なりふりかまわぬ融資の回収が始まる」と懸念されているのだ。
前週末の21日の東京株式市場で、平均株価は1万354円と1万円の大台割れ目前まで急落した。このところの株価低迷に最も青ざめているのが、大手銀行の経営者たちだろう。
「今年3月期末の株価は1万1024円で、この時点で大手銀は丸裸の状態で、もう後がない。つまり、これ以上の株価下落に耐える余力が尽きてしまった」(金融アナリスト)からだ。
今年3月期決算で大手銀13行は、不良債権処理によって計約7兆7000億円、株価の評価損処理で計約2兆円もの損失が発生し、東京三菱銀行を除く全行が赤字に転落。この結果、資本準備金の取り崩しを迫られるなど、各行の自己資本は大きく目減りした。
自己資本比率を計算する際の分子となる中核自己資本(Tier1)は13行合計で17兆4000億円となり、1年前に比べ5兆円も減少している。それでも各行の自己資本比率は、健全性の目安である8%をクリアし、ほとんどが10%台で大きくは低下しなかった。
これは、自己資本比率の分母である資産を強烈に圧縮したためで、その額は過去最高の34兆円に上った。資産の中心は貸し出し債権で、貸し出しの回収や債権の売却などがその主な手段になったとみられる。
今年度についても、各行は資産圧縮を継続させる計画だ。23日付の毎日新聞の報道などによると、大手銀全体の圧縮規模は20兆円に上るとしている。
内訳は、みずほフィナンシャルグループが94兆円から7兆円を減らし87兆円に、UFJグループは51兆円から4兆円、三井住友銀行は63兆円から4兆円などとなっている。
だが、株価下落によって、当初想定していた以上に自己資本が減少すれば、さらに資産圧縮を加速させる必要があり、「昨年度と同規模に膨らむ可能性もある」(大手銀幹部)のだ。
大手銀がなりふりかまわぬ資産圧縮に走らせているもう一つの理由がある。それは「大手銀の自己資本がほとんど張りぼてのみせかけに過ぎず、その危険性を大手銀がようやく自覚し始めた」(金融当局筋)からだ。
三菱東京フィナンシャルグループを除く大手銀各行には2回に渡り総額10兆円近い公的資金による資本投入が行われている。公的資金は将来の返済が義務付けられており、借金と同じだ。
公的資金以上に問題なのが、税効果会計による水増し分である。外資系証券金融アナリストが解説する。
「日本は不良債権処理に関する課税が非常に厳しくて、引当金を積む段階では、損金として認められない。その分、税金がかかる。その後、不良債権を償却した段階で損金として認められ、税金が戻ってくる。この前払い分の税金を『繰延税金資産』として自己資本に参入することが認められている」
この繰延税金資産は3月期末現在、13行合計で8兆円強にも上っており、中核自己資本の17兆4000億円の半分近くを占めているのだ。
前出のアナリストが続ける。
「税金が戻ってくるといっても、実際にお金が入ってくるわけではなく、その分、税金が軽減されるというだけ。赤字決算によって一定の課税所得が上がられなくなると、軽減されるべき税金そのものがなくなる。そうなれば、繰述税金資産も消滅してしまう」
大手銀の自己資本は実は“砂上の楼閣”に過ぎない。それにあせった銀行が、やみくもに数字合わせで資産を圧縮しようとしているわけだ。
大手銀はそろって、ドロ沼状態の不良債権処理は「峠越え」と口を揃えるが、不良債権残高は計27兆円以上にのぼり、経営の健全化の道のりは想像以上に険しい。
そのとばっちりは、“貸し渋り・貸し剥がし”となって貸出先の中小企業に降りかかってくるのである。