現在地 HOME > 掲示板 ★阿修羅♪ |
|
ブラジル、トルコといったエマージング諸国で、金融市場が不穏な動きとなっている。中でも、アルゼンチンの債務不履行宣言以降、世界中に中南米を敬遠する動きが台頭したことに加え、政治的な不透明感もあって、外貨建てブラジル国債のスプレッドが急拡大してきている。
市場では、外貨の資金繰りに当面問題がないことや、経済のファンダメンタルズが相対的に悪くないことから、“第2のアルゼンチン”に陥る可能性は低い、との見方が多い。ただ、10月のブラジル大統領選挙を控えて、当面神経質な地合いが続くとの見方が多いうえ、資金の出し手である米国での株安が深刻になりつつあることも、エマージング諸国を揺さぶる要因として懸念されている。
ブラジル市場では、大統領選挙と公的債務残高に対する不安感が根強いうえに、フィッチがブラジルのソブリン格付けを「BBマイナス」から「Bプラス」に引き下げ、ムーディーズ・インベスターズ・サービスがソブリン格付け見通しをネガティブとしたことが影響、金融市場で動揺が続いている。
実際、週末21日にサンパウロ外国為替市場で、レアルが対ドルで史上最安値を更新する動きとなったほか、このところ、外貨建てブラジル国債のスプレッドの拡大が鮮明になっている、という。
こうしたなか、円建てブラジル国債(サムライ債)の対JGBスプレッドが直近で急拡大。市場筋によると、3カ月前にはT+601bpだった“ブラジル国債12”の基準気配が、直近では919bpまで跳ね上がっており、実勢では1000bpをはるか上回る水準で推移している、という。
このような急激な動きの背景として、みずほ証券・シニアマーケットアナリストの石原哲夫氏は、「アルゼンチンの債務不履行宣言以降、世界中に中南米を敬遠する“中南米バイアス”が台頭しているうえ、4月以降、10月の大統領選挙に向けて、対外債務の不履行を過去に示唆した左派候補ルラ氏が、世論調査でリードしていることに対する不安が高まったことなどが原因だ」と指摘する。
「サムライ債の残高を比較すると、アルゼンチン共和国が1915億円であるのに対し、ブラジル連邦共和国は4000億円となっている」(みずほ証券の石原氏)というように、発行規模が大きいこともあり、仮に“第2のアルゼンチン”となった場合の影響は計り知れない、という。しかし、足元の市場では、そうした懸念を現実的なものとする見方はほとんどない。
この点について、野村総合研究所・経済研究部カントリーリスク研究室・副主任エコノミストの並木富士男氏は、「今回の市場の混乱は、国内政治要因や国内債のリファイナンスの懸念など国内要因が大きい」としたうえで、「ブラジルは財政改革を進めており、経済発展の道筋が見えているうえ、外貨の資金繰りに当面の問題がある訳でもない。このため、短期的に資金が大きく国外に出て行くような事態に陥らない限り、デフォルトの可能性は低い」と指摘する。
同様に、ある外資系証券のアナリストは、「アルゼンチンという前例があるために、心理的に嫌な面はあるが、アルゼンチンに比べマクロファンダメンタルズは悪くないことや、国際通貨基金(IMF)が支援の方針を打ち出していることもあり、アルゼンチンのようなことにはならないとみている」と予想している。
実際、18日にIMFは、プラジル向け融資プログラム(総額157億ドル)に基づく最新経済審査の内容を承認したばかり。
ただ、10月に大統領選挙を控え、ブラジル金融市場の不安定な地合いはしばらく続くとみる関係者が多い。
野村総研の並木氏は、「10月6日に大統領選挙を控え、依然として政治的な不透明感が強いことから、サムライ債のスプレッドが大きく縮小することも難しいとみている。候補者の支持率に一喜一憂といったところだろうが、目先的には8月20日から始まる候補者のテレビキャンペーンの結果を見極めたいところだ」と指摘する。
また、みずほ証券の石原氏も、「対外債務の不履行を示唆するような発言をしてしまっただけに、左派ルラ候補の姿勢に市場は不信感を抱いている。対外債務をきちんと履行するとの強いスタンスを明確にすべきだが、スプレッドの値動きを見る限り、市場は大統領選挙の行方、およびルラ候補の発言に神経質になっている」と述べ、今後も同候補の発言に注意が必要だとの見方を示している。
さらに、エマージング諸国全般にいえることとしたうえで、前出の並木氏は、「米国資本市場が不安定になっており、マネーの流れに変化が出てきていることが大きい。資金の出し手である米国投資家が、本国の不安定な地合いを背景に、海外資産を処分する動きを強めているが、エマージング諸国はそのあおりを受けている」と述べ、米国株式市場が落ち着きを取り戻すことも、市場安定への必要不可欠な要素と語った。